《1997.03》

2月16日




 第10回奥日光クロスカントリースキー大会、です。以前はこの大会の日を避けて遊びに行っていたのだけど、昨シーズン参加してみたらバッチや完走章を貰えるのはどうでもよいとして、缶ビール・カップラーメン・豚汁が貰えてアストリアホテルの入浴無料というのが大いに気に入ってしまいました。これだけでも参加料を上回るからねぇ。
 ただ、ぼくは「スキーハイキング」の部にエントリーして、これが一斉スタートなのでコース上に参加者がひしめいてしまい、10kmのうち前半は前の人のスキーを踏まないように気遣いながら滑るわけです。これではストレスが溜まってしまいます(友人の大畑はそれが嫌で競技の部にエントリーしているらしい)。そこで今年は秘策を練りました。
 制限時間が3時間30分となっているので、スタートしたらすぐにその場で横になって2時間昼寝をする。あるいは光徳沼でバードウォッチングをしてもいいかも知れない・・・しかるのちに残り1時間30分で、人が少なくなったコースを悠々と滑ってくるというものなんだけど、これをやるとゴール後の缶ビールと温泉にありつくのが遅れてしまうというのが難点ですね。

 さて、いよいよ当日です。

 雨の音で目が覚める。あらかじめ天気予報で覚悟していたとは言え、嫌なパターンです。5時を回ったところで現地に電話を入れてみると「大会は実施します。今の天気は雪ですが落ち着いて降っています」とのこと。落ち着いて降る雪というのはどういうものだかよく判らないけど、とにかく出発。
 例によって県境を越えて栃木県に入ると雨が雪に変わった。前回以来タイヤのグリップが急速に弱まっているようなので、大事をとって足尾市街を見下ろすバイパスでチェーン着装。
 清滝の交差点にさしかかったところで日光市街方面から大畑夫妻のクルマが走ってきて目の前を横切って行く。信号が青に変わるのを待って追いかけたけど、とうとう三本松の駐車場まで追いつけなかった(このあと麻衣ちゃんはさらにカッ飛んで、ハイキング10kmの女性参加者のトップでゴールしちまったそうな)。駐車場でナオさんのクルマを見つけたが当人はいない。駐車位置から判断して、今日はずいぶん早く着いて、すでに会場に行ったようだ。みんな張り切っているなぁ。
 こちらの到着も遅れ気味だったし、雪が降っているのでお湯を沸かす余裕もなく、途中のコンビニで買ってきたおにぎりを車内で食べ、こちらもシャトルバスでに乗って光徳へ向かう。

 アストリアホテルで受付を済ませ、麻衣ちゃんを見つけて競技の部に出場する亭主のスタートを見送って、ハイキングの部のスタート地点である光徳牧場へ。そこでナオさんとその友人を見つける。彼とは昨年の大会以来だ。出発前に知った顔を見ると気持ちが和らぐ・・・って、競技じゃないんだから緊張することもないのだけど、ゼッケンをつけて大勢の人の中でスタートの合図を待っていると、こちらにその気が無くても緊張感が伝わってくる。

 で、スタート。例の時間差スタート作戦は、雪が降っている中で昼寝するわけにも行かないと中止、大勢の人に混じって歩くことにする。でも、昨年よりはスムースに進めるような気がするなぁ。
 林の中でコースアウトして写真を撮ったりもしていたのだけど、前後の間隔があいて自分のペースで滑れるようになってきたら、だんだん熱くなってきちゃった。カラダもそうだけど、キモチが。
 いつの間にか雪もやみ、前半5kmを滑ってアストリアホテルの前に戻ってきたらコース誘導の係員が「65番」と言ってくれたので、あれ、意外と前の方にいるではないの・・・コース脇の雪をすくって火照った顔にこすりつけ(そのあと一気にメガネが曇った)坂道を登って行きました。

 さすがに雪の量は充分。でも、ちょっと雪質とスキーのコンディションの相性が合わなかったみたい。時々スキーの裏にくっついたりして、本来なら軽くポールを突くだけで滑ってゆく筈の緩い登りも今回は足を使う羽目に。しかし、きつめの登りではズリ落ちる心配なくスタスタ登って行けたのは何よりです。

 楢林の中の坂道を登り終え、そこで追いついた人に思わず「やっとここまで来ましたねぇ」「どうぞお先に。ゆっくり下りますから」「こちらも途中で転びますから間をあけて下ってきてくださいね」
 という会話をしたほどには豪快には下れず、ちょっと残念。でも、ここがアイスバーンになったときの怖さを思えばこの方が安心。

 疲れ、というより空腹で手足の動きがバラバラになってきて、光徳沼からゴールまでの最後の緩い登りは歩こうかと思ったけど、なんとか(自分の意識では)スキーを滑らせながらゴール。先にゴールしていた麻衣ちゃんと一緒に給食所に行き、お楽しみのビール、カップ麺、豚汁・・・汁物ばかりで腹がタッポン。
 そのうち大畑(なんと、ヨメさんをほったらかして風呂まで済ませていた)、それからナオさんたちもやってきて、すっかり好天になった空の下で談笑がはずむのでした。周りを見れば疲れた人も軽々と滑ってきた人も、顔だけは皆ニコニコ笑ってさわやかな気分にひたっているようでした。
 こういう大会って、スキーそのものを楽しむには人が多すぎて面白くない面があるけど、終了後の雰囲気が好きですね。みんな、いい汗をかいたという共通の思いを持っている。

 三本松の駐車場に戻ってきて時計を見ると、まだ2時を回ったばかり。駐車場脇の雪の園地ではテーブルで食事をしたり、雪の中で小さな子を遊ばれているファミリーが。今日は大会参加者がほとんどだったせいか、静かで穏やかな雰囲気が漂っています。もうひと滑りしていっても・・・悪くはないのだけれど、この穏やかな雰囲気の中で、なんだかこちらも静かに引き下がりたくなってきました。それに、満腹になったあと温泉にゆっくりつかっていたので、気持ちほどには身体がその気になっていなかった。

 ・・・きっと、また来るだろうなぁ。