かぎもとやといえば中軽井沢駅前の本店が好きで、行くなら本店と決めていた。注文するとキャベツの漬け物がドンと置かれて、ぼくは漬け物は食べないんだけど、蕎麦が出てくるのを待ちながらガラス越しに職人がシャカリキになって蕎麦を打つ姿を見るのが大好きなんですね。ここはいつも混んでいるから大変だけど(八十二銀行の駐車場にはお世話になってます)、それだけに蕎麦を打つ回数も多く、職人の姿を見る機会も多いというものだ。

 バイパス沿いの塩沢店は、なんだか通りすがりのドライブインぽくて長いこと入る気にならなかった。いつだったか小諸からの帰り道、中軽井沢の市街地に入ってゆく気にならなくてそのとき初めて入ったのだけど、思った通りの混みようで二階の大広間の人の多さにくたびれてしまった。考えてみれば不思議なもので、本店も客が多いがこちらは「賑わっている」と許容してしまうのに、塩沢店は「混んでいてウンザリ」と思うのだから人の気持ちは勝手なものだ。

 ところが、今回訪ねたら様子ががらっと変わっていた。人が少なく「市井の蕎麦屋」風なたたずまいだったのだ。二階に上がる階段もふさいであって、以前来たときのような客の入れ替えでごった返すような雰囲気は全然なかった。
 そうなるとまたまた勝手なもので、しみじみと蕎麦の味を愉しんでしまった。帰りにはカレンダーまでもらって「この店いいね」だからなぁ。

 かぎもとやの名前は、先祖が名主か何かで代官から鍵を預かっていたことに由来するとかと本で読んだような記憶があるのだけど、それが何の本だったか思い出せない・・・気になって中山道関係や蕎麦関係の本を何冊かめくってみたけど見つからない。ただ、以前作っていた個人誌『こないだ』の連載コラムに「創業明治5年、その前は御本陣の庫の鍵を預かっていた」と題して仲間とかぎもとやに入った話があるのを見つけた(1990.7.14)。でも、やっぱりネタ本は不明だ。




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