《1997.05》



わあ、ごめんごめん
またしても更新が遅れてしまいました
今回はとどまつハウス本体に
ビッグイベントがあったもので

我が家にとって、今世紀最大の衝動買い
とも言えそうな買い物です


 
蒲田行進曲
つかこうへい→芝居一座→大八車→夜逃げ!?
はたして引っ越して良かったのか
コモロでコムロがコンサート
いざ、キネマの天地へ


蒲田行進曲


 3月のある日、子供たちと公園で遊ぼうとしたときのことです。アパートの入り口で、まず颯に靴を履かせ、続けて結衣にも履かせていました。公園で遊べるのがよほど楽しみだったのでしょう、颯は待ちきれずに階段の方に走って行き、そのうちドンドンという音が響いてきました(とどまつハウスはアパートの2階なのです。軽量コンクリートの外階段は、ドタ足だと響くんです)。それを聞きながら、最初は階段を駆け降りているのだと思っていたのですが、あれっ? 颯はまだそんなことができるような体格ではない!
 あわてて階段のところに行ってみると・・・颯は下の地面のアスファルトの上にうつぶせになってノビていました。降りて行って抱き起こすと、そこで初めて激しく泣き始め、とりあえず意識はあるなと安心したのですが、頭に手をやると特大のたんこぶができていました。
 しかし、落ちついて観察したところ、左目の下の頬骨の上あたりをぶつけた痕以外は外傷は無し。瞳をのぞきこんでも異状は無いようなので脳しんとうも無さそうです。
 とにかく部屋に戻って寝かせます。いつも風邪をひいたときにはどんなに高熱でも嫌がって使わないアイスノンも、今回は気持ち良さそうにあてがって、泣き声も少しずつ収まってきました。
「医者、どうする?」
「今日は日曜日だしなぁ。日赤に連れて行っても外傷があるわけでもないから、しばらく様子を見ましょうっていわれるのがオチだろうなぁ」
 というような会話を何度か繰り返し、吐き気など、容態が変わるようなことがあれば脳外科病院にかけ込むことにして、その前にお昼にしようやと近所の回転寿司に行きました・・・颯もいつも通りの食欲で、食べた後も特に変化無し。
 結局翌日も、本当はかかりつけの小児科にでも行こうかと言っていたのだけど、医者に行かず、今度はちゃんと公園遊びをしたそうです。ただ、目の下のぶつけたところが腫れ上がって遠目にもケガしたことが判る顔になり、公園仲間のお母さんたちが「どうしたの!?」と心配したそうですが、本人は「階段でごろんごろんしちゃった」と、すっかり平気だったそうです。

 というわけで結局医者にも行かずに2カ月過ぎてしまいました。目の下はその後一週間くらいカスリ傷のように腫れており、いまでも少しアザのように残っていますが、いつか消えて無くなるでしょう。

 こうやって笑い話として話せる幸せを感じていますが、それにしても子供の身体というのは柔軟というか・・・自然体で転げ落ちたのが良かったのでしょうね。大人だったらこうはいかないだろうなぁ。
 しかし、颯が階段から転げ落ちたのを見て、頭にこの標題が浮かんだオヤジというのは・・・ノンキな父さんですね。

 『蒲田行進曲』というのは、つかこうへい氏の戯曲で、のちに小説化され・・・あれ、最初から小説しかなかったかな? ま、とにかく映画化もされ、劇中劇の新撰組の寺田屋のシーンで階段を転げ落ちるというのがクライマックスなのですね。


つかこうへい→芝居一座→大八車→夜逃げ!?


 颯が階段から落ちたので、こりゃいかんと思ったわけではないが、引っ越すことにした。今度は2階建ての1戸建て。外階段は無いが内階段があって、さっそく結衣が転げ落ちた。まぁ、目撃していた颯の話では踊り場から下の数段だけで、直線階段を2階から下まで落ちた自分の方がすごいんだという口ぶりだったが。
 年度末の関係で仕事も忙しいので、ゴールデンウィークあたりにゆっくり引っ越したかったが、颯が幼稚園に通い始めたばかりで通園バスが変わるのは落ち着かないだろうということで、それでもさすがに入園式の前は無理だったが、入園式直後の日曜日がXデーと決まった。

 考えてみたら、結婚して以来、引っ越しするのは初めてだ。大物家具や家電品は購入先から直接ここに運ばせたし、6年の間にこまごましたものも相当増えているはずだ(特にキャンプ用品が)。これらを一気に運び出そうとするとどういうことになるのか、ちょっと想像しがたいものがある。 父ちゃんのつたない想像では、Xデーの数日前から部屋の中に段ボール箱があふれかえり、その隙間で寝起きするはずだったのだが、ちっとも箱の姿が見えない・・・と思ったらXデー当日になると後から後から出てきた。どうやら母ちゃんは4次元ポケットの中に隠していたらしい。4次元ポケットがあるのなら、ついでに「どこでもドア」も出してくれれば引っ越しが楽だったのにそうはいかず、引っ越し屋のトラックに載せて新居へ。
 さすがに金を出して専門家に頼んだだけのことはあって、廊下や階段にはマットを敷き、廊下の角にはクッション材を当てて丁寧に運び込んでくれる。自分でやったのではこうはいかない、きっとそこいら中を傷だらけにしたことだろう。
 そして、2階に洋服ダンスを運ぼうと思ったら専門家はキッパリと言った。
「無理です」
 廊下が曲がりくねっているので通れないとのこと。さらに窓も開き戸と填め殺しになっているので、そこからも駄目だそうな。
 仕方ないから隣の部屋、ここはバルコニーがあったので吊り上げて運び入れたが、もちろんこの部屋から出すことはできない。運び込むのだって下のカーポートに屋根が無かったから可能だったわけで、今後屋根をつけたら大きなクレーンでも持ってこなければ窓から出すこともできなくなる。いつかこの洋服ダンスが不要になる日がきたらチェーンソーを買ってきて室内で切り刻んでやろうと思う。

 とまぁ見応えのあるシーンもあって、この引っ越し風景を皆さんにもご覧にいれたかったのだが、あいにくカメラが引っ越し荷物の中に紛れ込んで写真が撮れなかった。トンマのきわみだ。
 トンマといえば、着替えの件だ。引っ越しの翌日は出勤なので、いちおう必要なスーツやシャツ靴下類を一つのバッグに入れておいた。おかげで月曜日はスムースに出勤できたが火曜日になってあわてた。まだそこまで荷物の整理が進んでいなかったのだ。そのほか、すぐに必要なものは一つの箱に入れておいたのに、その箱ごとどこに置いたか判らなくなったりと、典型的なトンマの引っ越しをしてしまったのだ。

 しかしまぁ、それでもだんだん納まるべきところに納まってきて、新居での生活が滑り出しました。今年は金銭的にはもちろん(とほほ)気分的にもあまりキャンプに行こうと思わないので(ホントかな?)、家いじり庭いじりに余暇を費やそうかと思っています。


はたして引っ越して良かったのか


 引っ越した先は同じ市内なのだけど、他人に場所を説明するのにちょっと骨が折れるところです。相手も市内に住んでいるとか、土地勘があれば近所の学校や店の名前を言えば通じるのだけど、遠くから来る人に対して、たとえば高速道路のインターチェンジからの道順を説明しようとすると、これがかなり面倒くさい・・・というより難しいです。前のアパートなら道順も簡単で、目印になりやすい交差点のそばだったので、思えば便利なところに住んでいたものだなと思ってしまいますね。
 それに町内に著名な政治家の事務所があったので、酔っぱらって帰ってきて駅前からタクシーに乗るにしても「○○事務所」と一言言えば、あとは眠ってしまっても大丈夫だったし。
 今度の家は袋小路の奥なので車庫入れがたいへんです。初め、頭から小路に入って行き突き当たりからバックで車庫入れしようとしたら何度も切り返しをする羽目になってしまい、このときはつくづく「コーナーポールを付けていて良かった」と思ったものです。それまで「高い金を出して無駄なオプションを付けた」と後悔していたけど。
 そのあと近所の住人がやっているように、表の通りからバックで路地に入って来るようにしたらだいぶ楽に入れられるようになったけど、前のアパートほどスイスイ入れられるわけではない・・・そういや、アパートには道路の向こうに20台近く停められる来客用駐車場もあったよな・・・ん、いや、あれは公園の駐車場か。
 出勤するのにも10分ほど早く出なければならないし、買い物も少し遠くなって店の数も少なくなったし・・・などなど、書いていると、どうしてわざわざ引っ越したのかと思えてきますね。
 ちょうど引っ越しの時期が花水木の最盛期にぶつかって、今まで住んでいた町の大通りは白とピンクが交互に植えられた並木が息を飲む美しさです。ま、これはこの時期だけで、それも週末に買い物などで出かけるところだから、そのときに見ればよいけれどねと負け惜しみ。
 で、極めつけがこれ。前のアパートから歩いて2、3分のところに旨い蕎麦屋があったのですよ。旨くて盛りがよくって値段が手ごろなので、我が家はいつもここから出前を取っていました。もちろん出前迅速。この蕎麦屋と別れてしまうのは残念です。
 ところが、引っ越した後、最後の掃除とまだ残していた荷物を取りにアパートに行って、最後にもう一度あそこの蕎麦を食べようとしたのです。今度は出前ではなくお店に行って。そしたら・・・出前でも旨かったけど、店で食べたら更に更に旨いのです(あたりまえだけど)。
 で、決めました。これからもこの店にはクルマに乗ってときどき食べに来よう、と。(どうでもいいけど、このところ、毎回蕎麦屋の話を書いているな)

 余談ですが、新しい家からインターネットにダイヤルアップ接続したら、今までと同じモデムを使って同じプロバイダの同じアクセスポイントに繋いでいるのに、これまで24000bpsしか出なかったスピードが31200bps、調子が良いときは33600bpsで繋がるようになりました(古いアパートなので、電話線が錆びていたのかな)。これは引っ越して良かったこと、になるのでしょうね。
 ちなみに、モデムはサン電子のMS288AFです・・・え? この型番は28800bpsが最高速度だろうって? メーカーのアップグレードサービスで33600bps対応に改造してあるんですよ。改造しても効果が無かったのでガッカリしていたのですが、これで費用のモトがとれるかな。


コモロでコムロがコンサート


 ある晩、電話がかかってきて受話器をあげると「フルヤです」という親しみのこもった女性の声が耳に飛び込んできた。はて、フルヤって誰だっけ? 颯の幼稚園の同級生の親かな? と一瞬考えていると「小諸YHの・・・」と追い討ちがかかって、なんだウバさんか。向こうから電話がくることなんて滅多にないし、古屋なんてよそ行きの名前は年賀状を出すときにしか書かないから判らなかった(しかし、声を聞いて幼稚園児の母親と間違えたと知ったら、ウバさん喜ぶかな)。
 で、用件というのはほかでもない、昨年末に「今度やりたいねぇ」と言っていた小室等サンのコンサートが実現するというのだ!
「9月7日、日曜日しかスケジュールが空いてなかったの、ゴメンネ」
 いやもう平日の昼間でさえなければそれで充分。帰宅が夜中になろうとも駆けつけますぞ。それに事前に手伝えることがあったらお手伝いしますし、もしコンサートが赤字になってしまったらカンパだっていたします・・・これは小遣いの範囲で、だけど。

 とまぁ、小室サンのコンサート(というよりライブですな。あの小諸YHのホールでなら、手を伸ばせば届くようなところで聴けるんだもの)が実現することになって、上気しているのです。
 最近は音楽界でコムロと言えばテツヤというのが相場だそうだけど、テツヤならタケダで充分。コムロと言えばヒトシしか思い浮かばないのが70年代フォークに捕らわれたまま生きている父ちゃんの常識なのである。
 奇しくも9月7日といえば、以前は毎年そのころに小諸YHの開所記念パーティーをやっていた時期だ。みんなで集まって一晩中騒いで・・・ベッドが足りなくなって、駐車場の車内で寝るのも当然のように思っていた(宿泊費を払っておいて、何故? なんて考えなかったものなぁ)。
 今はもちろんあの時のような熱気はない。でも、心の中に形を変えて熱き思いは残っているはずだ。それがしみじみ燃えるのか、激しく燃えるのか・・・いずれにしても9月7日が楽しみだ。

 はい、そこでお手伝いの宣伝です。コンサートの詳細が判り次第、このサイトでお知らせいたしますので、興味のある方はときどきチェックしてくださいね。それから、小諸ユース・ホステルの電話番号は 0267−23−5732 です。


いざ、キネマの天地へ(この項、6月4日に追加)


 最近は神様もネットサーフィンをしているらしい。

 上の方で颯が階段から落ちて『蒲田行進曲』を連想したなどと脳天気なことを書いたところ、それが目に止まったらしく「なぁお前、階段落ちゆうんはそんな甘いもんやおまへんで。ほなら見て来ぉい」と声がかかって池田屋の階段を見に行くことになってしまった。もちろん見に行くのは映画のセットの方である。神様が関西弁だからといっても京都まで行けるわけではなかった。なるほど甘いもんやおまへんなぁ。
 そうか、同じ階段落ちを連想するなら『風と共に去りぬ』というのもあったと気づいたが後のまつり。あれならセットを見るにしてもハリウッドだったのに。
 ともあれ神様から送られてきた新幹線の切符を使って上京する。払い戻して鈍行に乗ろうかとも思ったが、バチがあたると恐いので神様の思し召しに従うことにする。だいいち、新幹線で上京するなど、自分の金じゃ一生かかってもやらないだろう。そう思うと少々情けない。
 東京駅から乗った東海道線の省線電車は蒲田には停まらないので、川崎で国電に乗り換えて・・・そのまま横浜を過ぎ・・・あらあら、どんどん行き過ぎているようだが構わないのである。とりあえず今日は桜木町まで行って、ランドマークタワーの57階に宿をとり、70階で宴会をするというのが神様のくれた赤ん坊、じゃない蒲田行進曲のスケジュール。神様も粋なはからいをしてくれる。酒はうまいし姐ちゃんはきれいだ。ワッ、ワー!

 でもって翌朝、ホテルに横付けされた貸し切りバスの「一人がけリクライニングおよび回転機能付き」という豪華な座席にふんぞりかえって缶ビールをぐびぐび呑みながら揺られていると、窓の外に目指す建物が見えてきた。
 こここそがキネマの天地、この建物の中に、あの階段はあるのだ・・・でも、階段を見てどうすれば良いのだろう?
「なぁお前、まだわからんか・・・ほなら落ちてみぃ」というのだけはごめんだ。

  (以下、次回に続く)