今日の光徳は・・・吹雪でありました |
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泊まりで出かけると思うとつい気が緩むのか、出発が遅れてしまう。朝9時には出ようと思っていたのだが、ずるずると遅くなってしまう。自分の遊びだというのに着替えその他を女房殿に用意してもらい、一応は自分の目で中身を確認して家を出たのは9時半を回って・・・あれ? アンダーシャツが入っていなかったような。途中で気がついて家に電話。開店前のスーパーの駐車場で待っていたら「見つかった」との返事が届いて(ああ、携帯電話は便利だ)取りに戻る。
そんなわけで結局出発は10時。おまけに「こっちは遠回りだけど道が空いているから早く行ける」はずの裏道が、時間帯が悪かったのかそこまで行く手前の国道で渋滞。わざわざ ペンション を予約して前の日に出発していながら、現地の滞在時間がどんどん短くなってくるのである。
「そうだ、退屈だからナオさんを呼んじゃえ」
大間々町から電話して寝ぼけ声のナオさんを直撃。
「明日どうするの?」
「行くよ。でもかぜが・・・」
「え? 風邪ひいたの?」
「違うよ、風が強いだろ」
「うん、ちょっとね。オレ、今日から泊まりで行くことにして、今は途中なんだけど出てこないか? 同じ部屋でいいって言えばペンションも泊まれると思うから」
半ば強引にそそのかしてしまう。こちらは間もなく携帯電話の電波が届かない地域に入るので、もうナオさんは言い返すことができないのである。
渡良瀬川に沿った山間部に入ると雪がちらついてきた。空を見上げれば薄日が差しているくらいだから大した事はないだろうと思ったが、これまでこういう天気の日に日光に行って、ロクな目に遭ったことがないというのもまた事実だった。
果たして日足トンネルを抜けると雪は「ちらつき」から「ばらまき」になり、いろは坂の路面は真っ白になっていた。
「さ、さむぅ〜」
明日行われる奥日光XC大会は、今日から受付が始まる。今日のうちに済ましておけば、当日パンフレットなどの資料や抽選で当たる(かも知れない)北海道旅行の招待券のような貴重品を持ってウロウロしなくてもいいのだ。
そう思って光徳に向かうことにしたが、天気はますます大変なことになってきた。戦場ヶ原までクルマを進めると・・・ま、前が見えない! 猛烈な地吹雪。そのくせ空にはぼんやりと太陽が見えるのだから、まったく、なんちゅう天気じゃ。
受付をする間だけでもホテルの前に停められればいいやと思って行ったのだが、意外にも光徳の県営駐車場には数台分の余地が残っており、クルマを置いて隣りのアストリアホテルへ。受付を済まし、貰った参加資料の封筒の中にある券を持ってガラポンで福引き・・・残念、貴重品は当たらなかった。
ロビーの公衆電話でナオさんに電話すると、宿を確保して、もう間もなく家を出るとのこと。ここまで3時間くらいかかるかなぁ。到着を待つ間、どうやって時間をつぶそうか・・・やっぱりスキーだろうなぁ・・・。
まずは腹ごしらえ。クルマに戻ってシングルバーナーで湯を沸かし、カップ麺を食べる。途切れ途切れに吹く強い風と、それに舞い上げられる雪の中で落ち着いて食事する雰囲気ではないが、ホテルのダイニングはフトコロが落ち着かないからね。食べ終わる頃には、手袋を外して箸を持っていた右手がすっかりかじかんでいた。
なかなか気分が乗ってこないが、このあとやることといえばスキーしかない。ま、身体を動かしていれば温かくなるだろうと靴を履き替え、スパッツをつけ・・・る前にジーパンが雪まみれだ。
なんだかんだ言いながらも、スキーを履いて歩き出せばまんざらでもない気分になってくるのだから現金なものだ。しかし、あまり長い距離を一度に進むのは厄介なことになりそうなので、こまめにクルマに戻れるように3kmコースを回ることにする。ここは一部が競技コースと重複しているのだが、競技コースは明日の大会に備えて3時以降は閉鎖される。滑るなら今のうちだ。
久しぶりにこの森の奥にやってきた。ここ数年は三本松をベースにすることが多かったし、たまに光徳まで来ても家族と一緒なので駐車場近くで過ごすことが・・・まてよ、去年一度ここを滑ったような気もするな。天候が違うので同じ場所とは思えないが。
森の中はそれほど強い風は吹き込まず、何人かのスキーヤーと出会ったし、明日の試走をしているレーシングウェアの選手もいた。静かに、あるいは颯爽と滑っている彼らに比べると、どうもこちらはドタドタしているように感じる。折角整備されたコースなのに、スキーは気分良く滑ってくれない。
競技コースを離れ、誰もいない小径を滑ってクルマに戻ってくる。さて、次はどこを回ってこようか。
とはいうものの、ここに来ると風と寒さで積極的建設的な考えがしぼみがちになってくる。気分が沈みそうになってくるのにつられて、上ではなく下に行くことにする。森の中に入らず、光徳牧場に。この天気の中、大勢の人が滑っていたのでちょっと驚いたが、大会参加者を対象にした初心者教室をやっているのだろうと気がついた。もちろん、そうではない人もかなりいるようだが。
初心者教室らしいグループを見ると、わりと高齢者が多い。XCスキーは高齢者まで楽しめるので、それだけでは驚かないのだけど、彼らが着けているゼッケンが、明日の10kmや15kmに参加することを示しているものだったので、これにはちょっとビックリ。最近はシルバー登山者が増えているそうだが、その勢いを駆ってXC進出なのかなぁ。
ああ、すっかり足が冷えてきた。足だけではないぞ、吐く息が去年から生やしている髭で凍り付いている。顎をしごくと氷の粒が手のひらに残った。
ホテルのロビーに行ってみたら、人が少なくなって受付も片づけられている。このあと夕方から中禅寺湖畔で開会式と前夜祭があるので、スタッフも参加者も移動を始めたというわけだろう。
気分がだんだんうすらわびしくなってくるし、腿の辺りがしんしんと冷えてくるのを感じたので、こちらもスキーを片づけて中禅寺湖畔に行ってみることにした。
相変わらず地吹雪が吹き荒れる中を会場の前まで来てはみたものの、開会式が始まるまでまだかなりの時間がある。そして開会式・前夜祭が終われば7時半を過ぎるだろう。
「夜の凍てついたいろは坂を下ってゆくのは億劫だなぁ。ペンションに着いても食事だ風呂だと慌ただしいし」
開会式の会場に行けば甘酒サービスがあるし、前夜祭の抽選会では新しいスキー板がもらえる(かも知れない)が、そういう魅力よりも、早く宿に入ってくつろぐ方がより魅力的に思えてきた。
「ナオさん、今どこ〜!」
「今市のインター過ぎたトコ。あと・・・」
「いや、今中禅寺湖畔にいるんだけど、風が強くて寒いしねぇ、夜道を下るのも億劫だから、もう降りようかと思ってさぁ」
「・・・そっかぁ。じゃぁ、こっちもペンションに直行するよ」
済まないなぁ、前日に引っ張り出しておきながら滑らずじまいとは。いろは坂を降りて日光市街に入り、東照宮の前から裏道を抜けてペンションに向かう坂道を登り始めると、駅前に続く道からこの坂道に入ってきたエスクードがバックミラーに写った。
「ナイスタイミング!」
まるで朝から一緒に行動していたかのように、ナオさんとぼくはペンションに入っていった。
あした天気にな、あ、れ!
ここは泊まる前日に予約をしたのだが
ちょうど前の日にキャンセルが出て
一部屋空いたところだったとか
運が良かったのか悪かったのか・・・