《2000.12》
暴走奇行・・・あ、いや、房総紀行だ(1)

 6時半に出発したい・・・と思っていたけど、やっぱり7時を回ってしまった。我が家はいつもそうだから仕方ないか。でも「10分ぐらい行ったところで忘れ物に気づいて引き返す」というもうひとつの「いつものパターン」は回避できたようだ。もっとも、父ちゃんはしばらくの間「玄関の鍵、かけたっけなぁ?」と考えていたのだが。
 でも、この季節、7時に出発するのは嫌なのだ。というのも国道に出るまで太陽が真正面になってしまうからであって、まぶしくて前が見えない信号が見えない、明暗の差が激しくて脇を歩く歩行者が見えないと、先行車のお尻だけが頼りなのに、暮れの30日の早朝、他に走る車も無し。
 それでも無事に国道に出て道も広くなり太陽の角度も変わって見える。アクセルをさらにぐっと踏み込んで「さぁ行くぞ!」・・・玄関の鍵? 門も閉めてきたことだし、かけてなくても気づかれないだろう。

さ、寒ぅ〜
 熊谷バイパス経由で国道17号を浦和に向かって進む。と、鴻巣あたりで車内に「トイレ行きたい!」の声が。ちょうど警察署の前にさしかかったところなので、ここに寄るかと尋ねたのだがお気に召さないらしい。父ちゃんは結構警察のトイレにお世話になっているんだけどなぁ。フレスガッセで昼食食べて軽井沢警察に寄るのは小諸へ行くときのお決まりコースだった時期もあるし・・・お巡りさんだって「トイレ貸さないと立ちションするぞ」って言えば嫌とは言わないと思うしね。
 しかし最近ではコンビニが増えたので、確かに以前のように駅や役場や警察に行かなくても済むようになったのだが、こんなときに限ってコンビニが見つからない。さて困ったなぁと前方を探しながら走っているとゴルデンアーチアーチが見えてきた。
「朝マックする?」
 もともと子供たちとの約束でこの日は途中のマクドで朝食という予定やったさかい、丁度ええ、あそこに寄ったろということになってしもた(マクドという言葉が出るとなぜか関西弁になってしまう)。
 開店直後らしく店員総出で店の内外を掃除しているところに入り、こんな時間の客は我が家くらいのものかなぁと思っていたら、待ちかねていたかのように他の客がぞろぞろ入ってきて、結構賑やかになってしまった。そやけど、ホンマは浦和あたりのマクドに寄るつもりやってんけどなぁ。家を出るのが遅かったので仕方ないか。
 予定より遅れ気味とはいえ、○時○分にどこそこを通過なんて細かい予定を立てているわけではない。ただ、混み始める時間帯を避けて走りたいだけだから、この先スムースに走れればそれでいいんだけどね。

 再び走り出し、上尾を過ぎて新大宮バイパスに入る。10年くらい前まではよくここを走って浦和まで往復したものだけど、久しぶりに来てみたら沿道の雰囲気が変わっている。与野を過ぎたら頭上に首都高速ができているので、ますます様子が変わって以前の景色が思い出せない。
 もちろん、この首都高速に乗って都内に入るという選択肢もあるのだけど、埼玉大宮線は別料金が必要で、国道の流れもいいことから、もう少し前進。戸田南ランプから都内均一700円になるので・・・あれ? 首都高5号線って高島平からじゃなかったの? いつからだろう? 2年程前、都内から帰ってくるときに高島平で降りたけど、あの時はもう・・・(あの時はR254を走って帰宅したのだった)。
 さすがに都内を通り抜けるのに信号の多い街中を走るのは嫌なので、首都高を走る。それに滅多に都内に来ないのから、こういう一本道でもないと迷ってしまう。池袋あたりまで来て、とうやく見覚えのある建物だ出てきた「お、東急ハンズだ」「やぁ、向こうに見えるのは東京ドームだ」・・・赤ゲット丸出しなのである(^^ゞ
 しかし、この先都心部で道路は合流と分岐を繰り返し、ふだん高速道路ではゆったりと500m以上もかけて車線変更をしている父ちゃんにとっては忙しくてかなわない。渋滞しているなら手を挙げて「どーもどーも」と割り込めるが、なまじスイスイ流れているからクルマの切れ目を見つけるのが大変なのである。それでも環状線を一周余分に回ることなくレインボーブリッジを渡ることができ、無事に湾岸線に合流することができた。やれやれ。

 ここまでくると周囲の景色も開けて、落ち着いた気分で走ることができる。そうなると気持ちにもゆとりが出てきて「そういえば今日は暮れの30日、飛行機や新幹線は帰省客でいっぱいになるんだろうなぁ」とやがて見えてくる羽田空港の混み具合を心配する。そうそう、以前この道を走ったとき、尾翼だけだったけどターミナル脇でポケモンジェットを見たことがあったっけ・・・などと思い出していたら、目の前の立体交差、てっきり一般道が走っているのだと思っていたらジャンボジェットが頭の上を横切っていった。誘導路だったんだ。
 というわけで前に1、2度走ったことがあるから思うのだけど、これから千葉に行くって気分ではないね。ベイブリッジ経由で横浜に行く気分。一日早くおじいちゃんの家に行ってしまいそう。
 でまぁ、この先でアクアラインに入るのだけど、コース計画中に地図を見ていてハッキリしない点があった。というのは首都高湾岸線はこのあたりに料金所があって神奈川線の別料金を徴収されるわけなんだけど、どうもアクアラインの入り口がその先にありそうに見える。ある人に訊いたら、
「そうだよ、料金を払ってからアクアラインに入るんだ」
 ええっ! それはないでしょ。だって、神奈川線はほとんど走らないのに・・・
 と思っていたら、かろうじて料金所の手前で分岐が現れた。よく考えたら、ここの料金所は羽田空港を挟んで離れた場所に上下線のが別々にあり、東京方面からきたクルマも横浜方面からきたクルマも、それぞれ料金所の手前で空港に行けるようになっていたのだけど、アクアラインも同じように重複区間の中にあったのですね。多分そうだろうと思って家を出てきてはいたけど、実際に確認して一安心。ちょっときつめのループを回ってアクアライン、東京湾横断道路のトンネルにゴー、まるで地下駐車場に入るかのように急な坂道を下って行く。
 約10kmのトンネルというと、我が家では関越トンネルというのが馴染みがあるのだけど、それに比べると断面積が広く、交通量もぐっと少ないので圧迫感がなく快適に走れる。断面積が広いのは将来的に車線を増やす分を見越してあるらしいけど、この交通量では必要になるのはいつのことやら。スイスイ走っているとやがて前方が白く光ってきた、出口だ。
 そのまま木更津に向かって走り抜けるクルマはほとんどなく、もちろん我が家も前のクルマにくっついて『海ほたるPA』へ。立体駐車場にクルマを停めたら、ドライブ途中の休憩というよりも、どこかのショッピングセンターに来た気分になってしまう。いや、実際、中にはレストラン、みやげ物屋、ゲームセンターまでもがあって、それに年末ということで、配られているチラシを見るとなにやらいろんなイベントが企画されているらしい。それになんと、「海ほたるネット」というインターネットのウェブサイトまであるらしい。
あ、飛行機! (撮影:颯)
 とりあえず一番上層階のデッキまで行って東京方面を。おお、横浜の「みなとみらい21」があんなに近くに見える・・・と思ったのは勘違いで、海底トンネルの途中ある換気装置『風の塔』が『ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル』に見えてしまったのだった。しかし、夜になると東京から横浜にかけての夜景が綺麗に見えそうな場所だね。だけどこの朝、少し曇った冬の空の下で強い風に吹かれていると寒い寒い。記念写真を撮って移動。
 東京方面に向かうと、どことなく大型船の後部デッキにいるような気分になったけど、横の方から海を見たり木更津方面に向かって立つと、どこかの護岸や防波堤にいるような気分になってしまう。いずれにしても完全にはその気になりきれない、中途半端なような、やはり「海の中に忽然と現れた場所」としか言いようにないところなのかな。
 アクアラインの紹介や防災シミュレーションなどの展示室で、子供たちが滑り台を見つける。実際のトンネルはこのように下半分が避難路になっているそうな。

 今日はまだ30日だからあれだけど、きっと大晦日は夕方の日没見物に始まって、年越しだ初日の出だと大勢やってくるんだろうな。それに合わせたイベントもあるようだし・・・あ、そうか、ここはもう道路上のサービスエリア(実際の呼称はパーキングエリアだけど、ガソリンスタンドが無いこと以外はサービスエリア並みかそれ以上の設備だ)ではなく、『海ほたる』自体が観光スポットなんだ。それにここでUターンして戻れるようになっているから、寄り道ではなく目的地として来る人もいるかも知れない。アクアラインの通行料は値下げして3,000円、それでも高いという声もあるようだけど、観光地などによくある『なんとかミュージアム』に家族で入ることを思えばむしろ安いくらいじゃないか。
 そうかそうか、『海ほたる』は何も房総方面に行くときでなくても、湾岸エリアの遊び場の一つと考えてしまえばいいのか。

 思わぬ発見をしたのだけど、今回の我が家の目的は房総観光。漠然としたタイムスケジュールではあるけれど、お昼は鴨川あたりでというのが当初の予定だ(でも、出発時点ですでに遅れているんだよな)。父ちゃんは屋台で売っていた貝の串焼きに未練を残しつつ、いざ出発!