《2002.02》
 日光は観光地でもあった・・・ 

 日光にあるペンション『トロールの森』は、毎年奥日光XCスキー大会の前夜に泊まっているのですが、今年は大会へのエントリー自体が我が家の中でゴタゴタもめておりまして、電話するのが遅かったせいで、すでに大会前夜は満室・・・と、ここで母ちゃんの決断というか「泊りがけで遊びに行きた〜い」という熱望で、大会の2週間前の3連休を使って出かけることにしました。と言っても、お出かけ自体は2月10日(日曜)出発の1泊2日だけどね。
 そして、大会参加という目的のない今回は、ちょっと観光でもしてみようかということになったのです。独身時代から含めると、父ちゃんはもう20年以上も日光に通っているけど、目的は(那須に行く前の時間つぶしで寄った1回を除いて)すべてXCスキー。まだ駐車場が無料だった頃に数回華厳の滝を見たことがあったけど、いろは坂より下、日光市街地は「あぁ、あそこも日光だったんだ」(そもそも我が家は、足尾経由で奥日光に行くので日光市街地は通らないのです)と、あの東照宮さえ行ったことがないのです。

 観光旅行だということで、珍しく気合いが入った父ちゃんは、財布の中に貰い物の図書券があったので本屋に行って『子どもとでかける栃木遊び場ガイド』という本を買ってきたのですが、日光・鬼怒川エリアで載っているのは、「ペンショントロールの森」「日光猿軍団」「日光だいや川公園オートキャンプ場」「中禅寺湖遊覧船」「鬼怒川ライン下り」だけ・・・なんか2月の旅行にはふさわしくなさそうなのが多いなぁ。
 冬という季節を考えたら、屋内型で、できれば入場無料で、触って遊べるイベント(展示)が多いのが子どもが遊べると思うのですね。博物館なんかでも、ただ陳列してあるだけではなく、ボタンを押すとランプがつくジオラマなんかは夢中になるしね。
 なぁんてことを考えながら、そのほかのガイドブックも参考に、いくつかのスポットを候補にしていよいよ出発です、、、って、どうせ日光は近いからという油断と、毎度おなじみの手際の悪さで、家を出るのがちょいと予定から遅れてしまいました。

 ● でんこちゃんに会いに行く ●

高いところから落ちた玉ほど遠くに飛ぶ
エントロピー云々より、ただ楽しいだけ
 今回の旅行はXCスキーと観光が目的なのですが、どこをどういう順に回ろうかとは考えていませんでした。でもまぁ、この時間から奥日光に行って、スキーをレンタルしたりしているうちにすぐ昼食の時間になってしまうだろうなぁ、なんて考えて、それなら初日に観光しようか、とクルマを走らせながら本日の予定を決め、とりあえず『TEPCO鬼怒川ランド』に行くことにしようとカーナビの目的地を定めたのでした。
 足尾から日足トンネルを抜け、清滝の交差点を右折して日光市街へ。大谷川を渡って日光カントリークラブの前を左に入ると鬼怒川への近道・・・これまで那須に行くときの時間つぶしとして、わりと鬼怒川のテーマパークには立ち寄っていますね。『東武ワールドスクエア』『日光江戸村』『ウエスタン村』・・・子どもづれだと、こういうところで半日以上遊べるのは嬉しいです。『○○美術館』みたいなところだと30分もしないうちに飽きちゃって、何軒もハシゴしなくっちゃならないですからね。
 今回はそういうテーマパークも避け、温泉街のはずれにある東京電力のPR館、『TEPCO鬼怒川ランド』に行ってみました。駐車場には我が家同様にスキー(ただし我が家以外はアルペン用)を積んだクルマが何台も停まっています。中に入るとやっぱり子どもづれが多くって、考えることはみな一緒なのでしょうね。「1日スキーで1日観光、子どもが喜びそうなトコ」ってことで。

 施設の内容は、東京電力のPR館ということで発電や送電の仕組みなどを模型やゲームなどで展示してあって、小さい子どもでは理屈が解らないだろうけど、ハンドルを回して何かが動いたり光ったりするのはそれなりに面白いわけで、結構夢中になってしまいます(大人もね)。それと、鬼怒川の自然を模型と映像で紹介するコーナーもあって、気がついたらそこそこ時間を費やしていました。
 おっと、『でんこちゃん』と言っても東京電力の営業地域外の人には判らないかもしれないですね。簡単に言えばマスコットキャラクターの女の子なのですが、イラストで請求書の片隅に登場するだけではなく、着ぐるみの実写でテレビコマーシャルに「ジャンッ!」と現れて電気の無駄遣いをしている人をたしなめたりするのはちょっと不気味かつユーモラスなのですね。
 颯たちに「TEPCO鬼怒川ランドヘ行こう」と言ってもよく判らないだろうから「でんこちゃんに会いに行こう」とやって来たのでしたが、幸か不幸かでんこちゃんがディズニーランドのように館内を歩き回っているということはありませんでした。それでもマグカップや携帯ストラップといったグッズが売られていましたね。
 帰りに受付の女性が声をかけてきて、子どもたちにお土産にと小さなバッグをくれましが、これにはでんこちゃんの絵は入っていませんでした。あと、記念スタンプを押したカードを持って再訪するとまた何か記念品が貰えるそうですが、再訪までには一週間以上の期間を空けないとだめだそうです・・・そりゃそうだろうなぁ、でないと鬼怒川温泉に泊まってまた明日帰る前に、なんて人ばっかりになりそうだもんね。
 いつもなら鬼怒川に立ち寄った後は那須に向かうのですが、今回は引き返すことになります・・・そうそう、那須って言えば、那須の隣の塩原町にもTEPCOのPR館があって、父ちゃんは社員旅行で一度行ったけど、ここは敷地内にあるからくり時計も素晴らしいものなのですが、我が家が那須に行く時って「年末休業」にかかってしまい、見に行けないのですね。残念。

 ● ゆばそばとはいかなるものか? ●

 それまで時間を忘れて夢中になって遊んでいたくせに、ふと我に返ると腹が減ったと我慢が効かなくなるのが子どもです。田んぼの中の裏道ではお店なんか無いので、国道を走って今市方面へ向かいます。そう、今日は観光だもんね。
見るんじゃなかった。食欲なくしそう
 持参の観光ガイド『るるぶドライブ・日光那須群馬』は1997年秋発行のもので、ちょっと古いこいつを後生大事に持っているのは父ちゃんと颯が載っているからなのですが、まだまだガイドブックとしても有効でしょう(その年の夏、越後湯沢の『街道の湯』に入浴していたら「雑誌の取材ですが、写真撮らせてください」と写していったもので、父ちゃんの顔は3mmくらいの大きさ・・・これがそうだと言わない限り、他人は気がつかない)。
 で、それによると『まつたか』という、ゆばの製造元が工場兼食事処をこの先で営業中らしい。ゆばそばというのもあるとのことなので、どんなものだか試してみるか。
 大きな看板を見つけたのだけど建物自体は小さなところで、入ってみたら喫茶コーナーを併せ持ったお菓子屋といった小ぢんまりとした店でした。注文して出てきた蕎麦は、とりたてて美味と言うほどでもなかったけど、まるっきりの期待はずれでもなく、まぁこんなものなのかなぁ。工場のほうは「作業風景が見学できる」と本に書いてあったけど、見学コースらしい通路や窓が判らず、外の窓から覗き込んだら日曜で休みなのか人はいなかった。ゆばらしいものが流しの上に干してあるかのように掛けられていたけど、なんだか学校の調理実習室で布巾を干しているみたいですね。

 ● 日光に向かう正しいルート ●

 『TEPCO鬼怒川ランド』にいるときにブルッと悪寒がして、どうやら父ちゃん風邪を引きかけているようです。今晩泊まって明日もあるというのに困ったなぁ。厄介なことにならないようにと、あまり好きではないのですが店を探して薬を買うことにします。

 というような状況や、それに宿にチェックインするにはまだ早いということもあって裏道は使わず国道を今市市街に向かい、さらには日光へ・・・そうか、杉並木ってものがあったんだ!
 一般的には、東京方面から来る人って、この杉並木を通って日光に行き、東照宮を見て歴史的建造物に感動してさらには奥日光の自然に足を踏み入れるというパターンなんでしょうね。それに引き換え、我が家ってのは群馬県大間々町から渡良瀬渓谷沿いに山の中を走ってきて、そのままいろは坂を駆け上ってしまうものだから、日光に対するイメージってモノがかなり違っているんでしょうね。しかも冬にしか来ない。
 行政的には同じ日光市でも、今日はずいぶんと違ったところに来ているような気がします。

 とはいうものの、正確な現在地はまだ今市市内。杉並木公園というものを見つけたのでクルマを停めてみます。ここはその名の通り杉並木に沿った細長い公園なのですが、杉並木の中の遊歩道を歩くのかと思ったら、どちらかと言うと、少し下がったところにある東武鉄道の線路に沿っていろんな水車を見ながら歩くという感じですね。まぁそれはそれで見ごたえのあるものなのでしょうが、いかんせん冬場のことで水が止められている。しかも太陽の角度が低い季節なので、どことなくうらぶれて見えるのが惜しいですね。新緑に季節に日の光を受けた水がキラキラ光る風景ならはもっと印象は違うんでしょうけどね。晩秋から冬の季節、とくに夕方近くなってくると屋外で楽しい風景ってのはなかなか出会えないですよね。

 日光市街に入り、ペンションも近づいたところで、ちょっと曲がり角を無視してその先にある『日光木彫りの里・工芸センター』というところに寄ってみます。入ってみたら他の入場者はおらず、ううむ、やっぱりうらぶれてるなぁ。
 2階に上がるといきなり目を引くのが祭りの山車で、手の込んだ彫刻が見事です。そのほか日光彫の製作過程が判るような展示や豆かんなといった工具の数々が並べられていて、クラフト趣味の人なら時間を忘れて見入ってしまいそうですが、我が家の子どもたちにそれを期待するのは無理なようでした。
 体験教室も夕方なので本日は締め切り。まぁいつかそのうちここを目的に来たいものです、と思っているのは父ちゃんだけかなぁ。

 さて、ぼやぼやしていると子どもたちが「ジュースが飲みたい」だの「あっちに見える公園で遊びたい」などと騒ぎ出すので、ペンションに向かって長い坂道を登ることにします。あらかじめインターネットからダウンロードしてカーナビにセットしておいた『トロールの森』の位置は実際よりもかなり手前で、「まもなく目的地周辺です」と案内を終えた後も延々と坂道を登って行かなければなりませんでした。

 ● トロールの森 ●

 一年ぶりに訪れたトロールの森は、また少し雰囲気が変わっていました。小さい子供を連れたお客さんが多いのは相変わらずで、「赤ちゃんチビッコ大歓迎! 」というコンセプトは浸透しているようです。そういや冒頭に書いた『子どもとでかける栃木遊び場ガイド』という本でも紹介されていたもんね。しかし、この本はデパートのおもちゃ売り場のような「ふらっと立ち寄れる」スポットから、このようなペンションまで、ずいぶん幅広く取り上げているもんだ。しかし、どうしてここが載ってるの?

 夕食後、宿泊客たちが部屋に入り、一通りの片付けも終わりかけた頃、父ちゃんは宿泊客ではなくオーナーの旧友として(つまり、そのぉ、このとき飲んだワインは翌朝の勘定書きには載らなかったってことだ)雑談をしたのだけど、お客さんを呼ぶ工夫というのももなかなか大変らしい。掛けられる費用に限りがある中で最近ではインターネットを活用しているそうです。実は今回の旅行に出る前、父ちゃんもいろいろ観光スポットの情報を探したのだけど、リンクを辿っているとトロールの森のサイトに行き着くということが何度もあったのですね。これもどうやらオーナーの知恵による工夫だとか。
 ここで宣伝。日光方面にお出かけの際は、ぜひとも『トロールの森』をご利用ください。4月、6月、クリスマス前の12月は特に予約が取りやすくなっているとのことです。予約やチェックインの際に「『とどまつハウス』で知った」と言うと、「ああ、そうですか」と返事が返ってきます(^^ゞ

 一夜が明けると晴天。でも夜のうちに少し雪が降ったらしく、外はうっすらと雪化粧です。泊まり合わせて仲良くなった子ども同士が楽しそうに雪に触っているのは見ていてほほえましい情景です。
 ゆったりとした気分で朝食。これまでに泊まったときはいつもXCスキー大会の受付時間(というよりは駐車場の混み具合)を気にして、定刻より1時間早く作ってもらった朝食を食べ終えたらすぐにチェックアウトしていたからなぁ。

 ● さて、今日こそはスキー ●

 いつものように三本松茶屋で颯のスキーをレンタルして光徳までやってきたら、この時間でも駐車場にはスペースが残っていました。ここ数年、光徳の駐車場がいっぱいで三本松に引き返すってことがなくなってきたような気がするなぁ。
 今回、結衣と母ちゃんはスノーシューを履いてみました。最近はスノーハイキング用にとスノーシューが人気ですが、新しい物好きの父ちゃんは7年位前に買って持っていました。で、今年になって子ども用のを探したのですが、さすがに高崎や伊勢崎の『WILD-1』には置いていなかった。もともと扱い量が少ないんでしょうね、販売元のベルカディア(モンベル)のネット通販でも品切れでしたからね。そういうわけで今日はトロールの森のオーナーが「これを使ってみれば?」と貸してくれたのを履かせてみます。

 2週間後のXCスキー大会には、父ちゃんと颯が「ハイキング5kmの部」にエントリーしているので、自信をつけるために一度同じコースを完歩しておこうと光徳沼のほとりで結衣たちと別れ、林の中に向かって出発です。颯も昨シーズンから「本物の」スキーを使うようになって少しずつ滑る感覚を身に着けてきたようです。
 光徳入り口のバス停を過ぎ、国道に沿って開けた湿原を通る頃、父ちゃんはうっかり手ぶらで来てしまったことに気がつきました。飲み物も食べ物も無い。せめて財布でも持っていれば、この先の三本松で店に飛び込むこともできるのだけど、小銭さえ持っていなかったのです。
 すでに正午を回っていることもあり、颯がみるみるパワーダウン。雪を口に含ませたり声をかけたりして励ましたけど、逆川に流れ込む支流の手前、遊歩道と自動車道が一番近づくあたりでついに「スキーを脱いで歩く」
 5kmコース完歩はならなかったけど、これは父ちゃんが悪かった。駐車場まで戻ってくると、母ちゃんたちも戻っていて、どうやらアストリアホテルもロビーで休憩していたらしい。

 クルマのシートをレストランモードにして食事。母ちゃんはこれができるのでステップワゴンにして良かったねと満足げです。
 食事を終えたら、なんだか「もう一滑り」とはいかない気分です。XCスキー大会のエントリーでももめたのですが、スキーに関して言えば、今は親子4人で一緒に楽しめる時期ではないですね。だって子どもたちはまだうまく滑れないし、といって家で留守番もできない。親の都合で子どもを連れてきて文句を言ってもいけないのですが、かといって子どもに迎合しすぎるのも厭だしなぁ。
 でもまぁ、観光だから、いろんなことを少しずつやろう。スキーはこれで切り上げることにして湯元温泉まで足を伸ばしてみることにします。でも目的は入浴ではなく、ビジターセンター。正月にも荒川村のビジターセンターに行ったし、昨日のTEPCO鬼怒川ランドも似たようなもので、これは父ちゃんの趣味かもしれないけど、そういうところが好きですねぇ。入場無料というのも嬉しいし(^^ゞ
湯元からの戻り道
道路脇の林にシカがいた
 湯元のビジターセンターは奥日光の自然科学に関して充実した活動をしているようで、自然観察会などの企画もあるようです。そういう行事に参加するのも面白いかなぁ。ただ、ここは電気仕掛けで動いたり光ったりする展示が少ないせいか、子どもたちが退屈し始めるのも早かった。まぁ今回は1泊2日で遊んだから、ほどほどで引き上げますか。スノーシューを返すために一度『トロールの森』まで行かなくてはならないから、その往復分の時間も見なくてはならないし・・・だから、『やしおの湯』には寄らないよと念を押しておかないと、子どもたちはXCスキーと温泉はセットだと思い込んでいるからなぁ。いや、子どもだけじゃない、父ちゃんもだ。ヘタすると父ちゃんなんか、XCスキーを温泉に入る前の儀式だと思っているのかもしれないからね。

 そうそう、父ちゃんの風邪はどうなったんだ? いちおう薬を飲んで寝たものの、やっぱり微熱状態でボーっとしてたんですよね、スキーを履くまでは。でも、雪の上で遊んでいるうちにすっかり忘れてしまいました。

 なんかひとつのことを達成したという充実感は無かったけど、これが我が家スタイルなんでしょうね。毎度おなじみの行き当たりばったり、じたばたドタバタの1泊2日の日光旅行でした。