《1999.09》
大理石城は中庭が良かった

 9月の第2週の週末に信州の小諸ユースホステルに行きました。ここで知り合った昔からの仲間たちと、『お泊まり会』と称して集まることになっているのです。各自で予約して集まることになっていたので、誰が来るのか楽しみです・・・というのは親の都合で、子供たちにとっては、ただただ遊べればいいのですね。
 だから、親は早く小諸に着いて缶ビールでも呑みながら昔話をしていればいいのですが、子供たちは途中で遊んでゆかなければ納得しないのですね。そういえば、去年の『お泊まり会』は雨の降る軽井沢で時間をつぶす場所を探したっけ。

 せっかくだから少し早めに家を出て、小諸には夕方着けばいいやと居直ったけど、さて、どこで遊ぼう?
 横川にある『鉄道文化村』、というのがまず頭に浮かびました。あそこなら通り道だしね。ところが、ちょっと様子を調べてみたらマニアックな感じがして、幼稚園児が無邪気にミニ列車に乗ったりジオラマを見たりして一日を過ごすというイメージではないのです。むしろそういうことなら、前にPR誌の片隅で見つけた須坂の『トレインギャラリー』も面白そうだったけど、そこまで足を伸ばすのはなぁ・・・高速道路という手もあるけど、今回は有料道路は使いたくないのである。

 ということを考えながら国道17号を走って行きます。このまま高崎から18号に入って・・・そうなると毎度毎度のワンパターン、ヘタすると寄り道せずに小諸往復してしまうかも知れない。
「よし、沼田に行くぞ!」
 ちょうど本庄から伊勢崎に向かう道との交差点に差し掛かったので、思い切って右折。伊勢崎を抜けて大胡、渋川と、これはもう信州ではなく、関越道開通以前に新潟に向かう時の裏ルート。
 突然の方向転換も、でたらめな思い付きではないのです。沼田と信州上田は戦国時代の真田の居城、ここをつなぐのは歴史的なルートなのですね。それに最近ではこのルートを発展させて、宇都宮から日光、沼田を通って軽井沢・小諸を結ぶドライブウェーを「日本ロマンチック街道」と称しており、それに合わせてだかどうかは知らないけど、途中の高山村にヨーロッパの古城を移築した『大理石村・ロックハート城』というテーマパークがあるというので、たまには変わったところにも寄ってみようと思ったわけですね。

西洋風で決めているのに
日本の鎌とは・・・
 伊勢崎を通り抜けるのに思ったより時間がかかったけど、その後は順調に走って高山村へ。めざす『大理石村』は、石材屋の裏にありました・・・って感じなんですよね。カーブの先に「えっ、ここなの!?」と唐突に現れたのが道路に面したドライブイン風の建物で、たしかに裏手の丘の中腹に古城が見えるのでそうなんだろうね。で、ドライブイン風建築物の隣りにある石材工場みたいなところの前が駐車場で、なんかこれって、石屋が観光客相手に展示場を作りましたって雰囲気なんですよね。いったいどんなところなんだろうとワクワクしていた気持ちがしぼんで行くのを感じます。導入部がいきなり舞台裏っていう感じなんですな。
 入場料を払って中に入ると「ストーンアカデミー」とかいう建物があって、石の標本みたいなのが並べてある。学術的には貴重なのかもしれないけど、物見遊山で来た人が見るものじゃないよなぁ、なんて思いながら向かって左手の「恋と冒険の森」に歩いていったら、ますます気分が萎えてしまったのでした。だって、前の日に降った雨のせいで水溜まりが残る窪地にバンジージャンプ系のアトラクションがいくつかあって、もちろん誰も乗ってはおらず、社員旅行らしいグループが煙草を吹かしながら時間を持て余している様子は、うらぶれた観光地に来てしまったなぁという雰囲気なのですね。

 ところで、あの丘の中腹に見えている古城は、こうやって離れたところから見るだけしかできないのか? 「ストーンアカデミー」まで引き返したら、入ってきた時は気がつかなかったけど、ちゃんと「ハートバザール」と呼ぶ土産物屋の前を通って城まで行く坂道があるではありませんか・・・坂道を登る前にソフトクリームと地ビールの補給が必要だったけど。
焼きたてのパンと
自家製ビールが旨い
 城門を通り、中庭に出ると、これまでの「わざわざ来るほどのことはなかったなぁ」という気持ちが消えました。心が和んでくるのです。王様の道化、あるいは大道芸人を意識したのか、ボードビリアンの青年が見物人を巻き込んでショーをやっています。でもそこが黒山の人だかりかというとそうでもなく、適当に人が集まって、またそういったショーとは関係なく辺りを歩いている人もそこそこいて、つまり、風景が調和していたのです。 さきほどまでの「来るんじゃなかった」という気持ちとは反対に、もっとノンビリしてゆきたいなという気さえしてきて、パン工房で焼いたパンを買ってきて中庭のテーブルで。
 もちろん城の中にも入れて、幾つかの部屋が展示室になっているほか、レストランや土産物屋、パーティ会場もあって結婚披露宴もできるそうです(中庭に教会もある)。那須や箱根に行くと○○美術館というコレクションの展示館がいっぱいあるけど、まぁそのレベルかなぁ、だったら、同程度の入場料も仕方ないだろうなと言う印象です。  でも、この中庭をぶらぶら歩く楽しみは、なかなか良い気分でした。むしろこちらの方に価値があるようにさえ感じたのですが、もしまたここにビールを飲みながらパンをかじることだけを目的に来るとして、入場料が必要になるのはちょっと抵抗がありますね。

 それはそうと、この界隈の若い人にとって、ここで結婚式を挙げるのは比較的多いのでしょうか? だとしたら、披露宴に招かれて何度も来ている人もいることでしょうね。そういう人はどんな感想を持っているのかな。
 それから、ここで結婚式を挙げたカップルの名前を刻んだプレートが、城門脇の塔の中に飾られていました。で、たとえば結婚記念日なんかで再訪した場合、自分たちの思い出の品を見るために入場料が必要になるのでしょうが、それをヘンだと思うのはケチなのでしょうか?

 ともあれ、『大理石村・ロックハート城』は、わざわざそこを目当てで行くほどのところではないけど、ドライブの途中で立ち寄って、2〜3時間休憩して行くには良い場所だなというのが我が家の感想でした。(今回、レポートを書くにあたって調べたら、ちゃんとホームページがあったんですね)