《1999.09》
今年も小室等さん

以前ロシアに行ったとき
青は希望を表す色だときいた
 信州小諸の民謡に小室節というのがあるのですが(小諸馬子唄の元になった追分唄の源流だそうです)、我が家にとって「小諸の小室節」と言えば小室等さんの歌ということになります。小諸ユースホステルに小室等さんをお招きしてのコンサートは、もう3回目になってしまいました。子どもたちはまだおとなしくコンサートを聴いていられそうもないし、つい2週間前にも行ったばかりなので留守番。父ちゃんだけがでかけます。

 軽井沢の混雑の影響で、遅れて到着した小室さんと上田マネージャーはテキパキとリハーサル。小室さんが「ハ〜ッ、ハ〜ッ」と発声練習のように声を出しながら音響のチェック。我々も一緒にスピーカーを動かしたり照明の向きをいじったりして、手作りのコンサートって感じですね。で、例によって1、2曲、たぶん今ひとつ巧く歌えないとか指が動かないとか苦手意識のある曲だと思いますが、それを再チェックしてリハーサル終了。去年はこの後サインをもらったり少し雑談したりしたのですが(『ユイ・コムロ』をリクエストしたっけなぁ)、今年は本番まで時間がない。「そうだ、まだ今日歌う曲を決めていなかった」という小室さんに声を掛けるのは遠慮して、聴き手同士の雑談です。
 父ちゃん以外にも毎年来ている人はゴロゴロいて、ここで再会できるのがまた楽しみにもなってきています。そんな某氏が古いレコードを持って来て「このジャケットにサインしてもらうんだ」と言っていると、通りかかった上田さんが「うわぁ、よくこんなレコードを持っているなぁ!」と呆れるやら感心するやら。
 なんだか、小室さんを中心に皆でわいわい言っているだけで幸せな気分になってくるのでありますね。極端な話、小室さんは歌わなくてもいいのではなかろうか。

 とはいっても、やっぱり小室さんの歌は聴きたい。ユースホステルの食堂でのコンサートだから、その大きさに合わせるというのもヘンですが、「いま生きているということ」「老人と海」というような大作はあまり出てきません。そのかわり真珠のようにキラリと光る小品が出てくるのが嬉しいですね。今年は『無題』を歌ってくれました。父ちゃん、小室さんの歌で好きなものを1曲だけ挙げろと言われたら、これを選ぶことにしているくらい好きなので、これは嬉しかった。あと、好きな曲ベスト10に入れている『夏が終る』も。これはこの季節の小諸で聴いている状況ともマッチして絶品でありました。聴いていてゾクゾクしたなぁ。
似たような顔が並んでしまった
 この『夏が終る』は谷川俊太郎さんの詩だけど、最近の小室さんは武満徹さんの作ったソングもよく歌っています。で、この日は近所にある武満さんの別荘に未亡人と娘さんがいらっしゃったことから、このコンサートも聴きに来てくださいました。武満さんの死後、それまで譜面を秘蔵していた黛敏郎さんが発表した『MI・YO・TA』(リハーサルで練習していたけど、小室さんにとってもまだ身についていない曲のようだ)を聴くことが出来たけど、この歌を聴くには最高のシチュエーションだったようです。

 で、例によってコンサート後の打ち上げは楽しかった。歌っているときの小室さんって、ときどきキザでクールな役者のような表情になるのだけど、ステージを降りて一緒にお酒を飲んでいると「面白いおじさん」そのものですなぁ。実は父ちゃんの携帯電話には、小室さんの新曲『まゆげの唄』を着メロとして入力してあるのだけど、それを鳴らすとバカウケしました。この歌、コンサートでも歌ったのですが、まだ知らない人が多かったためか、小室さんが期待したようには会場が盛り上がらなかったのが残念でした。

 今年は、この『まゆげの唄』と、小室さんが音楽を担当した映画『ナージャの村』のサントラ盤がそれぞれ8月に発売されたので、そのジャケットにサインしてもらいました。