《1999.11》
秋は紅葉狩り。いえ、スタンプ狩り

 幼稚園PTAのバレーボール大会が終わったある日、母ちゃんが『川の博物館』へ行きたいと言いだしました。今、特別展で「三途の川」をやっていて、それを見てみたいというのです。「三途の川」といったら小室等さんの「三途川ロック」くらいしか思い浮かばない父ちゃんですが、反対する理由はないし、父ちゃんも行ってみたい。
「じゃぁ、今度の日曜日に行こう」

 その週末は土曜日も休日だったけど、あえて日曜を選んだのには理由があるのです。日曜日、というより11月14日は埼玉県の『県民の日』なのですね。明治時代に県制がしかれたのがこの日だったとかなんとかで、理由はともかく、この日は県営の施設が無料開放されるのですね。つまり、この日行けばタダになる。
 当日の朝、さっそく開館間もない時刻に『川の博物館』へ。入口で無料入館証のステッカーを配っていたのですが、その手前の机で「アドベンチャーシアター」の整理券を配布しているではありませんか。館内にあるこの映画コーナーはさらに別料金になっているので、これまでは無料にならないだろうと思っていたのですね。これは貰わなければ損だとばかりに素早く家族の人数分貰って入場。入館料310円とアドベンチャーシアター420円、大人一人分だけで730円も浮いてしまった。
 でも、結衣が「映画、いや」と言い出したのが気がかり。彼女はこの春初めて映画館というものを体験して(父ちゃんは20年振りだった)『ドラえもん』を見たのですが、大画面と音響に圧倒され、怖がって泣き出してしまったのですね。だから、映画と聞いて恐怖が甦って身構えてしまったのでしょう。ううむ、これは問題だ。なにせ、ここのアドベンチャーシアターというのは画面と音響だけではないのだから・・・。

ぼくたち『かわはく』と言えば
ここが楽しみだったのに<撮影:夏休み>
 ともあれ、指定された上映時間まではまだ時間があるので、結衣の懐柔策です。お目当ての特別展は母ちゃんにゆっくり見てもらうことにして、父ちゃんは子どもたちを連れて常設コーナーを見て行きます。
 実はこの『川の博物館』、すでに何度も遊びに来ているけど、館内に入ったのはこの日が初めてなんですね。いつもは前庭にある噴水広場や、荒川の模型といった、無料で遊べるゾーンか、『荒川わくわくランド』(ここも本日は無料になっていたけど1時間ごとに入れ替え制で、昼過ぎの分まで整理券が無くなっていた)で子どもとはしゃぐだけだったのです。そんなわけで、初めて入った展示室でしたが、なかなか興味深く、また楽しく見て回れるところでした。
 特別展を見た後、一人で展示室を見て回っていた母ちゃんと合流。この特別展は、かなり評判が高いものだったのですが、母ちゃんにとっては今ひとつ期待はずれだったようです。

 さて、そろそろ時間です。「わたし、映画見ない」と嫌がっていた結衣は、口では相変わらずグズグズ言っているものの、内心諦めたのか入場を待つ列に並んで立っています。 ドアが開いて中に入り、いよいよ始まりです。場面は荒川源流域の渓流で子供が笹舟を作るところから始まります。前に大人が大勢立っているので、子どもたちを抱き上げたのですが、よく見えたのかな。
 で、普段は420円も取る映画で最後まで立ち見ということはなく、このあと観客はこの笹舟に乗って荒川を下って行こうという趣向なのですね。ゲートが開き、タラップを渡って客席へ・・・そう、客席は船の甲板のような場所にあって、映像に合わせてデッキが揺れる仕掛けになっているのです。なんというか、ディズニーランドのスターツアーズみたいなものです。

 来たのは初めてだけど、こういうのがあることを知っていたので、父ちゃんは焦っていたのですね。結衣が泣きわめいたらどうしよう、と。
 しかしまあ結果オーライという感じで、何事もなく笹舟は東京湾までたどり着くことができました。やれやれ。
 終わってみての感想ですが、これはなかなか面白いです。二瀬ダムで取水口に吸い込まれたり、堰を落ちて行くところは前のめりになって臨場感満点。また、長瀞と言えばカヌーのメッカでもあるのですが、笹舟の視点はまさにカヌーと同じ。岩の間をスラロームして、しっかりロールまでして、母ちゃんはますますカヌーをやりたいという気分になったようです。

 さて、映画を見終わったら移動です。前の週にもちょっと行ってみた『秩父高原牧場』に足をのばしてお弁当にしましょう・・・と、颯がおさまらない。『わくわくランド』で遊びたいって? でも、今配っている整理券は2時半入場のもの。とても今日は無理だよと、泣き出した颯をなだめながら駐車場でおにぎりを一つ食べさせてクルマをスタートさせると、10分も行かないうちにもうケロリとしている。まったく子どもというヤツは・・・。
 対向車が来たらすれ違えそうもない道を登って牧場へ。秩父高原牧場自体は非公開というか開放していないのだけど、見学体験施設として『彩の国ふれあい牧場』というのがあるのです。もともとここは入場無料なのだけど、やはり県民の日のイベントとして展望デッキの上で地元の和太鼓の演奏をやっていました。
 それを聞きながら館外のテーブルまで歩いて行って、さぁ、お弁当。強くはないものの風が冷たいのでお茶でも温めようか・・・
「あ、忘れた!」
 母ちゃんの声に父ちゃんはへなへなとなってしまいました。お弁当と一緒にキャンプ用のコンロやケトルも持参してここまで運んできたのに、用意しておいたペットボトルのお茶を家に忘れてきたというのです。近くに水道はあるけど、お湯だけ沸かしてもなぁ・・・結局、数百メートル離れたところにある売店まで自動販売機のお茶を買いに行く羽目に。こんな出費を避けるために家から持参しようと思ったのにね。

結衣は動物に餌をあげるのが大好きだ
 この牧場では、週末や祝日に「牛乳を使った体験実習」というのを行っていて、この日はバター作りでした。面白そうなので申し込もうかと思ったら、できあがった物は持ち帰れませんという但し書きがあったのでやめることにしました。だって、自分で作ったバターをパンに塗って食べてみたいではありませんか。それが「持ち帰り不可」じゃ楽しさが半減しますよね。でも、どうして「持ち帰り不可」なんでしょうか? まさか職員が使うからってわけじゃないでしょうね。

 代わりに、というのもなんですが、先ほど父ちゃんがお茶を買いに行った売店の近くで、これはこの日だけのイベントとして「チーズドリンクの試飲会」というのがあったので、そちらに行ってみることにしました。飲むヨーグルトというかラッシーとみたいな味で、チーズドリンクと言われても一般的な乳酸飲料とあまり違いが無いような感じがしたのですが、お代わりしてもう一杯飲んでみたら、口の中にレアチーズケーキの食後感みたいな味わいが広がってきました。なるほど、これがそうなのかなぁ。
 このドリンクは近くの民間の牧場が商品化を目指して開発中のものらしく、まだ商品名も販売価格も決まっていないそうです。というわけで何も印刷されていない真っ白な1リットル紙パックに入ったものを100円でどうぞというので買ってきました。信州の高原リゾートで売り出せば500円でも売れそうな気がします。いや、800円でも大丈夫かな。

お馴染みの干し草パックを使って
落書きコーナーが設けられていた
 前の週、バレーボールの試合開始前、会場に母ちゃんを降ろして父ちゃんと子供たちだけで時間つぶしにに慌ただしくやって来たときはまだまだだった紅葉も、この日は少し始まっていて、お手軽ではありますが秋の高原の空気を味わうことができました。

 さて、県民の日のイベントとして『スタンプラリー』というのがありました。この日県下で150ヶ所くらいの施設が無料開放や一般開放されているのですが、それぞれにスタンプが置いてあって、台紙に2個以上押して応募すれば賞品が当たるというのです。ま、だからこそ『川の博物館』と『ふれあい牧場』を掛け持ちしたわけでもあるのですが、台紙に用意されたスタンプ枠は6個あり、どうせならもうちょっと押してみようかという気になって帰り道に『花植木センター』『アクアパラダイス・パティオ』(これは市の施設だけど、協賛して小学生に無料開放だった)にも寄ってきました。『農林公園』や『深谷青年の家』にも行けば6個集まるのだけど、まぁそこまで張り切ることもないでしょう。結衣が「スタンプラリー」を聞き違えて「スタンプ狩り」と言っていたけど、案外正しいことを言っていますね。

 ともあれ、我が家の近くにも結構楽しめる場所があるのが判って、特に『花植木センター』などは、散歩するのに絶好の場所だなと知ったのでした(ただ、ふだんの休日は開いていないかも)。これでスタンプ狩りの賞品が当たれば言うことなしなんですけどね。