《2000.11》
復活、BEAUX-ARTSの牛柄グラス

 流行は繰り返すっていうけど、最近街で見かける人のファッションが30年位前に父ちゃんが中学生の頃に流行ったものなので、懐かしくってたまりません。腹が出てなかったら自分もまた着たいなぁ、なんて。

 ところで、アニマル柄もまた流行を繰り返すというか、根強い人気というか・・・

1996年暮れに撮影
この頃すでに灰色に
 10数年前にホルスタイン柄が流行ったことがあって、あの時は父ちゃんも東急ハンズで生地を買ってきてクッションケースを作ってもらったことがありました。中に入れたのはキャンプで使う寝袋です。『BE−PAL』というアウトドア雑誌でもホルスタイン柄をあしらった小物の紹介をやっていて、その中に出ていたグラスが気に入った父ちゃん(もちろん当時独身)は、わざわざ雑誌に出ていた住所を頼りに下北沢まで買いに行ったのですね。たしか夏の暑い日で、店内の片隅にあったドリンクカウンターで黒人の店員に声をかけ、クアーズ(アサヒがライセンス生産する前の輸入物)の缶ビールを飲んだことを覚えています。

買い物をしたときに貰った
店の地図が描いてあるカード
 そんな思い出のグラス、ミルクを入れて初めてデザインが完成するというユーモアが気に入って使っているうちに1個が割れてしまい、もう1個も色が薄くなってきたようです・・・あ、買ったのは2個だったってわけですね。
 そんなわけでここ数年は、このグラスのことも忘れかけていたのです。
 ところが、ある日、JR熊谷駅の駅ビルを歩いていると、見覚えのある店名が。父ちゃんは熊谷に勤めているけどマイカー通勤で、駅を使うことなど滅多にないのです。仕事で駅周辺に用があって時々コンコースを通り抜けるのですが、たまたまトイレに行きたくなり、駅ビルに入って男性用トイレのある階に上がって見つけたのが、かつて、まだ東京の市内局番が3桁だった頃に行った下北沢のあの店の名前だったのです。
「へぇ、こんなところに支店出してたんだ」
 でも、店内にはあの牛柄グラスはありませんでした。このグラス、店の名が入ったオリジナルなんですね。グラス自体は有名なフランス製の既製品なんだけど、プリントがオリジナル。
 日を改めて、家からグラスを持ってその店を訪ねてみました。現物を見せながら店員に同じ物はもう作ってないのかと尋ねたら、その若い女性は、こういうものがあったことも知らない、でもウワサには聞いたことがあるという風情で「ないんですよ」と言いながら父ちゃんのグラスを珍しそうに見ていました。

左が以前のもの
店名のロゴが抜き文字になっている
 ところが、数ヵ月後、特に用があったわけでもないけど、なんとなくその店の前を通り、なんとなく中に足を踏み入れたところ、あったのです!
 グラスや柄のデザインは変更されていましたが、牛柄のグラスがあったのです。思わず2個買ってしまいました。レジにいた店員さんは、先日の人とは違ったので本当は「これね、前から欲しかったんですよ」と言いたかったのを何故かこらえて無言でお金を払ってきましたが、内心「やったやった」とウキウキした気分でした。

 新旧2個を並べてみると、以前のものはグラス自体のデザインも柔らか味のあるものですが、斑もシンプルで、新しいものがすぐに「あ、牛だ」と気づくのに比べると、見る人使う人の洒落心に任せている部分が強いような気がします。父ちゃんはこういうセンスが好きなんですけどね。
 とはいえ牛柄グラスの復活は喜ばしいことで、早速父ちゃんは毎朝これでミルクを飲んでいます。

 註)店名の『BEAUX-ARTS』は「ボザール」と読みます。今回これをアップするのに調べたら、独立した店ではなく、イオングループの会社なんですね。