自衛隊に入ろう |
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我が家から10分ほど行ったところに航空自衛隊の基地がありまして、毎年4月上旬の日曜日に「さくら祭」というのが催されます。よく自衛隊基地や駐屯地では「基地祭」などと称して一般公開したりしますが、この基地では花見シーズンに合わせて開催するのでこう呼ぶのでしょうね。開催の目的については「国防意識の高揚」などと偉そうな理屈をつけていますが、要は「日頃なにかに付け迷惑を掛けている近隣住民対策、ご機嫌伺い」的なものだと思うんですよ。ま、近隣住民側としても「われわれの税金がどのように使われるか監視する必要がある」というよりも単なる物見遊山で出かける、という構図なんでしょう。
これまで毎年開かれていたにもかかわらず、我が家は一度も行ったことがなく、頭の上をブルーインパルスや輸送機が飛んで行く(飛行展示と呼ぶらしい)のを庭で見ていただけだったのですが、今年はどういう風の吹き回しか、ちょっと出かけてみようかと思ったのでした。昼飯前に1、2時間軽くぶらつく程度に。
今年はブルーインパルスジュニア隊の演技
(時間が合わずに見られなかった)我が家から行くと基地の脇に出るのですが、正門方向からクルマの列がずら〜っと裏手の駐車場に向かって続いています。何とか切れ目を見つけて割り込ませてもらい、後に続いて行くと、クルマの列は基地に隣接する民間企業の駐車場に。自衛隊基地だけでは収容できず、隣接する企業の駐車場を接収、いや、借用したらしい。そうか、今まで来たことなかったから知らなかったけど、これは地域では有名なイベントだったらしい。で、駐車場にクルマを置いた人たちは皆、大きなな荷物を抱えてゾロゾロ歩いている。誘導しているのが紺の制服姿の航空自衛官だからあれだけど、戦闘服姿の陸自だったら「ゴジラの襲来に備えて避難中」の図だね。
皆なんでまた大きな荷物を抱えているかというと、基地の中に入ったら約800本といわれる桜の花が満開で、その木の下でシートを広げ、弁当を広げ、そこかしこで花見の宴が繰り広げられているのですね。こちらは散歩気分で来てしまったけど、ここまでやっても良かったのね。でも、自衛隊基地の庭でお酒飲むってのはマズいんじゃないかなぁと思ったのもまったく杞憂で、地元町内会や近隣企業の名前が入ったテント(自衛隊なら自前のを持っていそうなものだが、これまた徴用、いや、協力を呼びかけたのかな)の下で缶ビールを売っているではありませんか。缶ビールだけではなく、焼きソバや串焼き肉、みやげ物などの模擬店が並び、町のイベントと変わらない。父ちゃんは散歩気分の予定を変更して腰を据えようかと思ったけど、あえなく却下されて缶ビール購入作戦は失敗、それでも串焼き肉はゲットしたのでした。
自衛隊のこの手の催しには、父ちゃんかつて陸上自衛隊の真駒内駐屯地のイベントに行ったことがありますが、それは『札幌雪まつり・真駒内会場』として前庭を一般開放した「ついで」に建物内で隊員が描いた絵や写した写真などを展示した美術展といった趣の、地味でひっそりとした印象でしかなかったのですね。
あれから20年経って時代も変わり、派手で陽気な催しになっていたのでした。基地の一角に退役した、というよりスクラップ化を免れた旧式の戦闘機や偵察機が展示してあったのですが、飛行服姿の隊員が並んで記念写真のモデルになってくれるというサービスが大人気・・・子供用の飛行服を用意していて、コスプレ写真が撮れるのですね。見たところ大人用の衣装はなかったようだけど、マニアックな人たちはやってみたがると思うな。
ウチの子供たちはコスプレを嫌がった
これは顔の部分に穴のあいた、よくあるタイプのもの
桜の木の下で花見の宴を楽しむ人たちはお昼が近づくにつれますます増え、しかしそれでもカラオケまでは始まるまいと思っていたら、スピーカーから歌声が。前庭に用意したトラックの荷台をステージに一人の女性がギターで弾き語りをやっている。おそらく女性隊員でしょうが、普通の服を着て歌っている姿と歌声が30年くらい前の青春ドラマっぽいですね。あのころはピクニックなどにギターやアコーディオン抱えて行ってみんなで歌ったもんだ・・・って、いかに父ちゃんでも実体験ではなく映像での記憶ですけど。しかしまぁ純情フォークとか青春歌謡だからそう感じるのであって、これが同じフォークソングでも「死んだ男の残したものは」とか「友よ」なんて反戦フォークだったらアブナイ雰囲気になるかな。でも、「友よ」なんて自衛隊で歌ったら逆の意味でも通用してしまいそうだな。かくいう父ちゃんはここに来たときから頭の中で高田渡サンの「自衛隊に入ろう」のリフレインが響き渡りっぱなしで、思わず口に出して歌いそうになるのを何度もこらえていたのですね。(著作権の関係で歌詞は表示しないので、知っている人にしか判らんだろうなぁ・・・と書いたあと参考になりそうなウェブサイトを探していたら、ものすごいサイトを見つけてしまった! おかげで「死んだ男の残したものは」と「友よ」は、このサイトでどんな歌かが判ります。そして「自衛隊に入ろう」はここで、リフレイン部分を聞くことができます)
ところで、話は前後するけど、基地内に入ったときに真っ先に探した建物があって、それは司令室・・・ではなく売店。厚生センターと書かれた建物を見つけて中に入ったのですが、ここには自衛隊のオリジナルグッズが売られているのですね。キーホルダーやバッジやワッペン、ブルーインパルスの刺繍が施された帽子などがあってちょっとしたお土産というか記念品になるのですよ。中には「去年ここで買って具合が良かったからまた欲しい」と作業服を買っている人もいたけど、よく見ると子供サイズの飛行服までもある。でもどうして「U.S. ARMY」とかかれた戦闘服もあるんだろう?
でも父ちゃんが欲しがっていたものはここにはなかったのですが(実は、この日父ちゃんがかぶっていたのは輸送ヘリコプターCH-47の名前が刺繍された帽子で、これも売店では見かけないグッズです・・・どこで手に入れたかは内緒)、そのあと例の野外売店のテント群の中で見つけたのです。
それは何かというと、防衛庁のマスコットキャラクターである「ピクルス王子」と「パセリちゃん」の関連商品で、前にテレビで「最近、防衛庁見学が大人気でお土産にキャラクターグッズなどがよく売れている」と紹介されたのをみて可愛いなと思っていたのですね。それがこのテントで売られていて、陸海空すべて揃っている。まぁここは航空自衛隊の基地だから空自バージョン(内心陸自のも「いかにも」って感じでいいなと思ったけど)の携帯ストラップとマウスパッドでも買って帰ろうかと思ったときに背後でジャーンという大きな音。
さっきから隊舎の裏手に集合して音合わせや銃弾の装着(たった一発の弾を込めるのに前後の人間が大声で確認しあって大騒ぎなのだ。安全確認もいいけれど、あれじゃ相手に先に攻め込まれるよ)をしていたものの、なかなか出発しなかった鼓笛隊、いやファンシードリルって呼ぶらしいのがようやく始まったようだ。
賑やかなラッパの音につられて、あたりにいた人たちも一緒に歩き出す。もちろん我が家もだ。なにせさっき銃に弾を込めていたのを見ているので、派手なことをやるのだろうという期待がある。基地の裏側にあるメイン会場までゾロゾロと大勢の人が鼓笛隊にくっついて歩いてゆく様子はハメルーンの笛吹き(だっけ?)の話を思い出させるね。
で、メイン会場ではドリル実演ということで、丸や四角、風車の形などさまざまな隊形の変化を披露して、あるとき変わりざまに一発バーンッ! ありゃりゃ、てっきり整列した状態で「捧げ銃」から撃つのかと思っていたので、この奇襲攻撃にはやられてしまった。
このドリル演技を見ているとき、我が家の前に缶ビールを手に持った数名の初老の男性がいたのだけど、聞こえてくる彼らの会話が「今年は上手いなぁ」「全国大会でもいけるんじゃないか」「○○基地は・・・」というような話題で、どうも自衛隊OBがこの機会に集まって旧交を温めているという感じなのですね。
他にも若い隊員が故郷から呼び寄せたような両親と一緒にいる姿も見受けられて、なるほど、地元住民の花見の宴というだけではなく、結構いろんな要素を含んだ催しでもあるんだなと感じた次第です。
そうそう、午後になると「飛行展示」と称する自衛隊機の上空通過(ここは航空自衛隊の「基地」だというのに滑走路がないのでヘリコプター以外は着陸できない)があるのですが、その頃になると首から大口径超望遠のレンズを着けたカメラを下げ、おそらく無線を傍受するためであろう受信機を手に持った航空マニア・軍事オタクみたいな人も姿を現すようになり、ああ、この人たちにとっても今日は大切な日なんだなと納得したのでした。
これは救難ヘリUH-60
実物も展示されていた
ところで、自衛隊の基地の中に入ってみて父ちゃんと母ちゃんは奇しくも同じことに感心したのでした。それは何かというと、婦人自衛官のマタニティー制服。官民含めて制服着用の職場は星の数ほどあるだろうけど、マタニティーを用意しているところとなると相当少ないんじゃないか。いやはや、自衛隊は進んでおるぞ。
ともあれ、結構面白いイベントだったので、来年もこの日とくに他の予定がなかったら、今度はちゃんと弁当を持って遊びに来ようと思ったのでした。今回は散歩気分できてしまったので子供たちの使いきりカメラしかなく、ほとんど写真を取れませんでした。ゴメン。
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というお約束があるので、本当はカットとしてのみ使いたかったのですが、関係サイトへのリンクのアンカーとしての機能も持っています。で、たまたま見つけた陸自の中部方面総監部のサイトってのが「なに、これ!?」なんですな。