《2001.05》
お母さんは山へ洗濯に行きました

 さぁ、21世紀最初のゴールデンウィークはどう過ごそうか・・・なんて大袈裟に考えることはなかった。「どうせキャンプよね」「やっぱりあそこでしょ」と、考えるまでもなく『長者の森』に行くことになってしまった。ま、せいぜい「よし、今年は3泊4日でやろう!」というのが昨年までよりも豪華(?)になったことかな。ま、1泊3,500円だから可能なんだけど。
 今年のゴールデンウィークは、前半3連休で、中2日仕事や学校に行って後半が4連休。その後半を全部使って長者の森に滞在しようという算段。過去2回「せっかく信州にきているんだから」と帰り道で小諸YHに顔を出したり軽井沢のスーパーでジャムやドレッシング(オリジナル品なのだが安くて美味い)を買って帰ろうとして渋滞にハマッたという苦い経験があるので、今年は往復とも上野村からぶどう峠を越えるという最短かつ渋滞の心配のないルートを取ることにして、それじゃあ信州に行った気がしない(県境を越えて最初に現れる人工の施設が『長者の森』。そこだけで往復したのが去年の夏だった)という不満をなだめるため、滞在中の一日を清里か野辺山で過ごそうと考えたのだ・・・おっと、清里は山梨県だから厳密には信州ではないか。「2泊のつもりで食料を用意して、遊びに行ったときに最後の晩と朝の買い物をすればいい」と1泊分の食料を積むのもあぶなっかしいクルマの荷物の心配をして、「3日も泊まるんだったらサイトはどこがいいかなぁ」なんて呑気に考えるが、まだキャンプ場そのものの予約もしていなかった。でも、一週間前でもちゃんと空きがあるんだよね。
 予約がとりやすいのは多分この時期まだ寒いからということもあるんだろうけど、ここは電源が使えるので、電気カーペットを持って行けば・・・あ、もはやクルマには積むスペースが残ってなかった。トホホ。

 なぁんてはしゃぎながら出発の日が来るのを心待ちにしていたわけだが、前半の3連休が終わったところで結衣が風邪をひいて熱を出してしまった。むむむ、これはマイッたなぁ、仕方ないので取りあえず5月3日の分だけをキャンセルする。一日猶予を持たせた間に回復してくれればいいが、直らなかったらどうしよう。いつも「家族は一緒に行動しよう!」と言っている父ちゃんとしては、そうなったら残りも全部キャンセルしようかとも考えるが、母ちゃんは楽しみにしている颯が可哀想だから2人で行ってくればと言う(父ちゃんの本心はキャンプで料理を作りたくないと思っているのかも)。
 医者に見せたら「単なる風邪だから、熱が下がったなら大丈夫だよ」とのことだったが、はたして出発を一日延ばして、結衣の熱は下がってくれるだろうか。
 5月3日。本当なら今ごろ荷物を積んで出かけている頃、天気は雨。反対に結衣の風邪は快方に向かい始めた。なんだか結衣の風邪のおかげで雨キャンプを免れたみたいだ。明日には天気も回復するそうだし、もちろん結衣も回復するだろう。結果オーライで出発できそうだ。
石にペイントするイベントのコーナーで
形からして鯉ソックリ

 というわけで、晴れ上がった空の下を出発。昨年同様に万場町の鯉のぼり祭りに寄ってゆく。というより今年はここで昼食と決め込んで、あらかじめコンビニで弁当を買っておき、ついでに会場の模擬店でタラの芽の天ぷらを買い、クーラーボックスの中の缶ビールも消費してしまった。
 つい最近できたという道の駅は神流川沿いの崖っぷちの、よくぞこんな場所にと思えるようなところにあったが、立ち寄るのは帰りにすることにして上野村へと進む。この神流川沿いの道は、上野村やここに来る手前の鬼石町にも道の駅があるばかりではなく、公衆トイレが非常に数多く設置されているのに感心する。鬼石の道の駅では小さなトイレが一箇所しかなく、トイレだけを利用する人は道路を渡ったところに公衆トイレがあるのでそちらを利用するようにという張り紙があったが、道路を渡らなくても1分ほどクルマを走らせたところに別の公衆トイレがあった。これは極端な例だが、それでも平均して7、8分走っていると公衆トイレに出っくわすという感じだ。しかも400メートルほど手前に案内標識が立っているうえ、どのトイレも掃除が行き届いている。きっと近所の人が綺麗にしてくれているのだろうけど、ドライバーにとってはありがたい限りだ。その上ゴールデンウィークの真っ最中だというのに交通量はガラガラで、実に気持ち良く走れる。ぶどう峠の麓までは。
 でも、その峠道も昨年ところどころ痛んでいた舗装が改修されて、相変わらず道幅は狭いが、路面が荒れて困ったという個所はなくなっていた。そして、もう峠が近くなったのではないかなぁと思われる頃、道路脇の斜面の中に白いものが。
「雪だ!」
 高い山の谷筋沢筋に雪が残ってればこれは北アルプスの雪形(ゆきがた)で、冬の名残かとも思うが、この程度の山の斜面に雪があって、それがさらに進むと道路脇にも雪の塊が転がっているということは・・・昨日の雨は、このあたりじゃ雪だったんだ。峠を越えて下り道の脇に満開の桜が見事だったが、その桜の木の下にも雪の塊がごろごろしているのを見て、結衣は実に良いタイミングで風邪をひいてくれたものだと思った。

 受付で サイトを選ぶときに考えた。連休後半の初日をキャンセルして、今日も受付開始時間から少し遅れてきたせいもあって、あらかじめ頭の中で考えていためぼしいサイトは先に埋まっている。残った中でどこを選ぼうか、子供が夜トイレに行くことを考えたらサニタリー棟から離れたくないし・・・結局18番を選んだわけだが、これは実際に行ってみると大正解だった。
左側が我が家のサイト
手前が19番サイト
 このキャンプ場は各サイトの間に緩衝地帯があってじかに隣り合わせにならないようになっているのだけど、この緩衝地帯に対してサイトが土俵のように盛り上がっているサイトもあったりするわけ。逆に言えば緩衝地帯が斜面ってわけだ。我が家のテントは構造上フライシートで構成される後室が付いているおかげで結構細長い敷地を要求する。ま、この後室はせいぜい濡らしたくない荷物置き場にしか使わないのでサイトからはみ出して設営するのだけど、こんなときだって斜面だと張りにくいし使いにくい。この18番サイトは緩衝地帯がかなり広くて平らなので、申し訳ないけどここもサイトの一部として、もちろん常時立ち入るというわけではなく物干しというような使い方などに利用させてもらえるのだ。
 余談になるけど、隣の19番サイトは丘を掘って作ったような形になっているので三方が壁、サイトからの眺めが非常に狭められてしまっていて、樹木に囲まれているのならまだしも、キャンプにきてまでこんなに窮屈な思いはしたくないと思ってしまうレイアウトになっていた。
 そうそう、電源だ。このキャンプ場には電源が設置されたサイトが6個所あるが、それはそこだけが「電源サイト」というわけではなく、共用という形で周りの皆さんで仲良く使えということらしい。今回の場合、向かい側の16番サイトの電源がそれに当たるのだろうけど、こちらから見てサイトの奥に当たるところからはるばる道路を横切ってコードを伸ばすより、後ろの20番から電源を引いてきたほうがコードを足で引っ掛けたりクルマで轢いたりする心配が無い。もちろん今回は電源を利用しないのだけど、夏に扇風機を持って来たくなるかも知れないので、これは頭に入れておこう。ちなみに母ちゃんによると、電源サイトで使いたいものはタイマー予約のできる炊飯器だそうだ。

 スクリーンテントと寝室用テントを縦に連結するいつものスタイル。今年は忘れずに用意した小さなこいのぼりをテント脇に立てて設営完了。サイトの隅に3個ほど転がっていた子供の胴体くらいの雪の塊の一つを拾ってきて持参のワインを突き立てたら「そのアイデア頂きます!」と声がかかって近くのキャンパーたちが残りの雪塊を持っていってくれた。炊事棟の日陰側の軒下に少し残っている他は雪が見当たらない。もちろん転がしてできたのだろうけど、あれだけの塊ができるくらいには降ったようだが、今日になってみるみる融けてしまったのだろうか。翌日の話になるが、受付のおばちゃんとその話をしたら「一時はどうなるかと思った」そうだからそれなりに結構降ってきたらしい。だが、一日遅らせた我が家にしてみればおいしいトコだけを取ったみたいで、夜寝ていても例年ほど
寒くは感じなかった。滞在中ずっと外に温度計をぶら下げていたのだが、最低気温は1度、最高気温は17.5度だった。
 長者の森も4回目ともなると、子供たちもすっかり要領が判って、焼きマシュマロ(我が家のキャンプでは定番のおやつ)を食べた後は早々に管理棟裏の遊具に遊びに行く。後から様子を見に行ったら泥だらけになっていた。母ちゃんは「また明日、朝から洗濯だな」とボヤく。来る途中の下久保ダム付近で気分を悪くした颯がもどすというアクシデントがあったのだが、そのとき汚した衣類はすでに洗ってあった。サニタリー棟には洗濯室があり電気洗濯機が無料で使えるのだが、他に利用するキャンパーも無く、我が家も今まで使ったことは無かったのだけど、今年はどういうわけかせっせと使う結果になってしまった。
「今回のキャンプレポートにタイトルをつけるとすれば『母ちゃんは山へ洗濯に行きました』かな」

はやく固まれ
 今回のキャンプで颯は料理を作ると張り切っていた。家の狭い台所で背の低い子供が動き回るよりも、キャンプ場のほうが楽なのである。で、子供向けのテレビ番組で紹介していた牛乳ゼリーを作るんだと胃って、何日も前から母ちゃんに材料を揃えるようにうるさいのなんの。それに子供にしてみればテレビで紹介したものが絶対だから、材料や手順もすっかり同じでなければ気が済まない。母ちゃんが「ゼラチンより寒天が使いやすいよ」と言っても聞く耳を持たない。それでも母ちゃんの説得に渋々納得して粉末の寒天を使っていたようだが、脇で見ているとただお湯で溶いて牛乳を混ぜているだけではないか。この程度で料理なんて騒ぐなよ。缶詰の果物を入れるとか、もう少し工夫ってものはないのかよ・・・例の雪の塊の上に載せれば少しは早く固まるかなと鍋を置いたら、さっさと管理棟まで遊びに行ってしまった。

 昨年まで200円だったローラー滑り台は、今年は100円になっていた。父ちゃんはリフトをつけてくれれば1,000円でもよいと思っているのだが、そういう方向には走らずに制限時間を短くして値下げしたらしい。たしかに子供たちは「疲れた〜」と言って今年は過去最低の3回滑っただけでやめてしまったので、これで100円なら惜しくはないな。でも、よけいな心配かもしれないけど、ますます投下資本の回収というのは遠のいただろう。そもそも「モトを取る」という発想が無いのかも知れない。
 結衣がアスレチックの滑り台で遊んでいる間に、颯が一人でミステリー迷路に入って来た。例の斜面に設置されていて平衡感覚がおかしくなってしまうやつだ。父ちゃんは行かずに済んでよかったと思っていたら、結衣が私もやりたいと言い出して結局二人で入る羽目に。昨年同様あっという間に出口まで来ることができたが、それではスタンプが6個揃わないので、目が回ったり壁に身体が叩きつけられるのを我慢しながら奥の方まであちこち歩き回ったが、それでも4個しか見つけられなかった。

 管理棟付近とオートキャンプ場は、子供を連れて歩くと10分ぐらい離れている。長者の森一帯はcdmaOneの携帯電話が通じることになっているが、オートキャンプ場にあるピンク電話は発信規制がかかっていて携帯電話にはかけられない、という間抜けな状態にあることは去年実証済みだ。ところが今年、父ちゃんにもう一台の携帯電話が当たったものだから(C309Hダイドーキャンペーンモデル、つまりジョン・レノン携帯ってやつだ。奇しくも2月の誕生日に届いた)、2台の携帯電話をトランシーバー代わりに使ってテントサイトと連絡が取れる。便利と言うか、面白がって無理やり使っている面もあったりするのだけど、昼食の支度ができたよと連絡が入ってテントサイトに戻る。
 戻ってきたらオートキャンプ場がずいぶん静かになっている。大半のキャンパーが撤収してしまっていたのだ。2組ほど賑やかにバーベキューをやっているグループがあったが、昼間からあれだけ盛り上がっているのは恐らくデイキャンプだろう。案の定、3時くらいまでにはタープを畳んでいなくなってしまった。
 広いキャンプ場に残っているのは我が家と、25番サイトの2組だけになってしまった。

 今日は5月5日で土曜日だから、まだ明日は休日のはずだ。そりゃあ渋滞を避けたりキャンプ道具の後片付け、休養を取りたいなどの理由で連休の最終日を自宅で過ごしたいという人もいるだろう。でも、ここまで徹底的に皆んな帰ってしまうことはないと思うんだけどね。去年も連休の最終日までいたけど、キャンプ場は8割くらいの入りだったように思う。
 それでも泊まり歩きのキャラバンをやっている人がやって来るかと思ったが、夕方になってくると、もうそれもなさそうだ。今夜は、ちょっとくらいの声だと届きそうもないくらい離れたサイトにいるあちらのキャンパーと2家族貸切りということになってしまった。あちらの家族と言ったものの、昼間からずっと不在で、そうだ、我が家も当初の予定ではキャンプ場を離れて清里あたりに遊びに行くつもりだったんだな。
静まり返ったキャンプ場に現れたのは
 そんなことを考えながら、16番サイトのコンセントにノートパソコンを繋いで「みんないなくなっちゃったよ〜」というパソコン通信向けの文章を作っていると、林の中から一匹の獣が出てきた。
「あれ、なんだろう?」
 全身が茶色だが、キツネにしては少し小さいし顔が丸っこい。イタチってこともなさそうだし・・・テンという名前が浮かんだが、テンってどんな顔をしているのかてんで判らない。
 その獣は空いたサイトの地面に鼻を押し付け、どうも食べ物の屑を探しているらしい。そのうち、目下留守中の例のサイトに向かって行った。荒らされてはやがて戻ってくるキャンパーに気の毒だし、こちらにあらぬ疑いがかけられても困る。様子を見に行ってみることにした。もちろんハッキリ判る写真を撮りたいのでカメラを持って、全員でそぉ〜っと、だ。
 途中、木々や土手に隠れる形になって、その間に別のところに行ったかと思ったが、やつはまだいた。が、我が家の面々の姿を見つけると慌ててサイトから離れ、側溝の蓋の下に隠れてしまった。片方の端から覗き込もうとすると反対側の端に寄って逃げるが、それでも側溝の下から出てこようとはしない。反対側に回ると、やつもまた反対に寄って逃げる。これじゃいつまでたっても側溝の下で進退きわまったままだ。これ以上ストレスをかけるのも可哀想なので、父ちゃんは一歩下がってカメラを構え、颯に反対側から追い立てるように合図をした。そうすればこちらから飛び出してくるだろう、その一瞬のチャンスを狙って・・・と考えたのだけど、写真はうまく撮れず、やつは森の中に帰っていった。顔が白かったので母ちゃんはハクビシンかもと言ったが、はたして何だったのだろう?( これを見ると、どうもテンだったようだ)

 静かな夜を過ごて迎えた最終日の朝は好天。ただし谷間のサイトにはまだ日は差し込んでこない。
「気分がいいから朝食は外で食べよう」
 母ちゃんがスクリーンテントからテーブルを引っ張り出して、16番サイトまで運んでゆく。これは確かに広々として気分がいい。撤収の際も日が当たり始めた空きサイトに夜露や結露でびしょびしょになったフライを持っていって広げるなど、周りに他のキャンパーがいないのを幸いにキャンプ場を存分に使わせてもらった。
 荷物を積み込んでチェックアウトをしに管理棟まで行くと、遊具やテニスコート、駐車場はいっぱいで、やっぱり休みは今日までで間違いなかったんだと安心した(^^;)

 2日前の雪はもうどこにも見当たらず、満開の桜さえ季節はずれに思えるようなすっかり初夏の暑い日差しの中を、ぶどう峠を越えて群馬県に。たしかに同じように峠のすぐ先にあっても軽井沢なら雰囲気や賑わいで「信州に行った」と思えるけど、こちらは「信州」とか「北相木村」という感想は全然なく、「長者の森に行ってきた」としか感じようがない。でも、それでも気に入っているから、こうやって毎年行くんだろうな。

 ところが、峠を下って行く途中で颯が気分が悪いと言い出した。来るときも下久保ダムの付近で気分が悪くなったし、去年の夏も長者の森に来るときにこの峠を越えたところで気分を悪くしたっけ。どうもこのところ峠道が苦手になったようだ。つられて母ちゃんもなんだか気分がおかしくなってきて、途中でクルマを停める。少し休んでは坂道を下り、また停まる。しかし、こんな山の中で時間を食っていても仕方ない。もう少しだから何とか頑張れと言いながら峠道を下りきって『全国郷土玩具館』・・・に隣接する『上野村体験学習館(こちらは入館だけなら無料)』へ。ここならトイレもあるし、建物の中にベンチもある(土産を買ってとせがまれるが)。
 休んでいるうちにだいぶ楽になったらしい。ちょうど昼になったが、食事はもう少し後にしようと再び出発、道の駅によってみやげ物を物色し、さらにお目当ての場所へとクルマを進める。
 今回は温泉に入って帰ろうという趣向なのだ。村営ホテルの『ヴィラせせらぎ』という施設がいわゆる「立ち寄り湯」にもなるという情報を得ていたので、キャンプの汗や汚れを落としてさっぱりしたところで昼食にしようと考えていたのだ。あいにく峠道と『上野村体験学習館』でのロスタイムで遅くなってしまったが、それでも温泉を先にしたいものだと考えて駐車場にクルマを停め、とりあえず父ちゃんだけが確認のためにフロントへ行ったのだが・・・
 な、な、なんと温泉タイムは午後3時からで、いまは浴槽の湯を抜いて清掃中との事。よく夕方からは泊り客専用になって立ち寄り湯は駄目という旅館があるが、ここは真昼間が駄目なのであった。
「うちは、温泉と言っても鉱泉で温度が低いからねぇ。沸かさなきゃ入れないんだ。『すりばち荘』はどうだか、電話してみたら」
 フロントにいた老人は、ここからさらに奥に入った民宿の名を挙げたが、きっと同じような状況だろう。泊り客の予約がなければ風呂の用意さえしていないかも知れない。
 クルマに戻って温泉は入れないと告げると、一同落胆。いつも温泉温泉とはしゃぐ颯がガッカリするのはもちろんだが、結衣までもが「温泉に入りたかった・・・」と泣き出したのにはびっくりした。考えてみれば、我が家が遊びに行くと、キャンプにしろXCスキーにしろ、必ずと言っていいほど帰りには立ち寄り湯に入って来た。去年小諸YHに泊まった時だって颯は「温泉に入って帰るんだ」とペーさんウバさんに言いふらしてこちらが恥ずかしくなったほどだ。ひょっとしたら我が家は温泉に入るのが本来の目的で、キャンプはついでなのかも知れない。
 ここで温泉にこだわるなら、このまま国道299号を走って秩父方面に行き、皆野の満願の湯(民営公営が並んで建っている)に向かうという手があったが、あと1時間以上はかかるし、道路も温泉も混んでいるだろう(特に入浴後の長瀞−寄居間で渋滞しそうだ)。
「仕方ない、今回はあきらめよう」

 何とか子供たちに温泉を諦めさせて昼食を食べるために引き返す。道の駅の前にあった洒落た造りの蕎麦屋に入ることする。さっきの温泉リゾートもそうだったが、この蕎麦屋の作りも、15年位前にこのあたりに遊びに来た頃からは想像もつかない発展ぶりだ(実際は過疎が進んでいるのだろうが、有名なアイデア村長が村おこしをしているのだ)。あいにく時分時で混んでいたが、ほどなく席が空いて座ることができた。温泉が駄目で、食事も散々待たされることになったら、父ちゃんの権威はズタズタだもんな。
「コーラ飲んでいい?」
 外の自販機なら半額なんだが、今の状況では駄目とは言えない・・・でも、蕎麦が美味しかったのはめっけものだった。少々高かったが、これならまた食べに来たいと思う。
お疲れ様でした

 蕎麦屋でコーラを飲ませたからもういいかと思ったが、万場の道の駅でしっかりソフトクリームをねだられてしまった。やっぱり寄るんじゃなかった。逆に、往きに寄っておいて良かったなぁと思ったのが例のこいのぼり祭りで、この日が最終日のはずだったが、お昼には片付けてしまったのか、会場付近はすっかり静かになっていた。いや、キャンプの計画を立てたとき、往きに軽井沢経由で食糧の調達なんかをして、帰りに万場を通ってこようかという案もあったのだ。これを実行していたら、ここでもまた父ちゃんは非難を浴びることになっただろうな。

 そんなこんなで相変わらずドタバタのゴールデンウィーク・キャンプは終わった。5月の連休を長者の森で過ごすのはこれで3回目で、いずれもすべて2泊3日だったが、今回が一番何もしなかったようだ。母ちゃんは旅先の公園や山の上や岬の先端でぼぉ〜っとして過ごすのが好きなので、そういう意味では年々母ちゃん好みの方向になってきているのかも知れない。でも、今年は母ちゃん、ずいぶん洗濯してたんだよね。ご苦労様。