《2001.11》
耳をすましてごらん

 このタイトルを見て本田路津子さんの名前を思い出した人は、父ちゃんと同じ40代かそれ以上に人生を送った人に違いありません。

 ある日、我が家の居間に『本田路津子コンサート』とかかれたチラシが落ちていました、新聞の折込かと思っていたのだけど、ひょっとすると郵便受けへの投げ込みだったかも知れません。11月25日(日)の午後1時半と3時半の2回公演で入場無料、場所が市内のキリスト教会・・・彼女の「るつこ」という名前は、クリスチャンのご両親によって聖書の「ルツ伝」にちなんで付けられたということは前から知っていたから、教会で行われるということに違和感は感じなかったのだけど、彼女自身が信仰に目覚めたのは、歌手生活に一区切りをつけてアメリカに渡ったときなのだそうです。それで帰国後は教会のコンサートやコミュニティの招きなどによって地道な歌手活動を続けているらしい、ということは今回コンサートに行って知ったのでした。

裏通りの家並みの中の教会
 さて、そのコンサートです。会場の教会は町の家並みに溶け込んだ普通の民家風、町内会の寄り合い所みたいな建物で、それでもぎゅうぎゅう詰め込めば40〜50人くらいは入るのかなぁ。最前列に座ったらステージ(演壇)はすぐ目の前で、小室さんのライブにたとえるなら「手を伸ばせば髭をむしれそうな」近さです。
 で、ステージ後ろの壁には『第15回 埼玉地区 賛美の集い』・・・ううむ、チラシでは『本田路津子コンサート』と大書きしてあったから70年フォーク世代の父ちゃんはホイホイ来てしまったのだが、敵は本能寺にありだったか。
 というわけでプログラムは牧師様の挨拶とお祈りから始まって、みんなで賛美歌を歌う羽目になってしまった。結婚式やクリスマスミサならまだ聞き覚えのある歌も出てくるのだけど、この120番というのは初めてだったので口パクするしかありませんでした。

 そのあとようやく本田路津子さんの登場となるわけなのですが、プログラム上では「賛美と証し」という演目になっていて、「コンサート」や「ライブ」ではないらしいです。だから本田路津子さんもキチンとしたワンピースに身を包んで・・・って往時のジーパン履いてギター抱えた痩せた娘を連想するほうが間違っているわけで、やはり「年相応」の肉体的変化と、それに合わせた服装ってことでしょ。ふとNHKの『歌はともだち』に出演していた頃のペギー葉山さんを連想してしまった。
 しかし、年はとっても声はかつての美声のままですなぁ。目を閉じて聴いていると「あのころ」の戻ってしまいそうです。
 それで思ったのだけど、父ちゃんの女性歌手の好みって「美声」が好きみたいですね。元トワ・エ・モア(あ、再結成したから「今も」か)の白鳥英美子さんとか森山良子さんとか、CD持ったりするし。チェリッシュの悦っちゃんなんかもいいな。でもって荒井由美(父ちゃんは松任谷由美よりもこちらのほうがすぐ口に出る)が今一つ好きになりきれないのは、あの鼻にかかった声が気になってしまって歌に浸りきれないからだろうと思う。『卒業写真』『中央フリーウェイ』はどうしてもハイファイセットの山本潤子さんの声を思い出してしまうもんなぁ・・・じゃぁ、シュリークス時代のCDまで持っているイルカはどうなのだ、あの声は美声かと問い詰められると、美声だけが好きな歌手の条件ではないと答えるしかないでしょうなぁ。(^^ゞ

ベスト集のCDジャケットに
サインしてもらった
 さて、本田路津子さんの歌は続きます。「賛美の集い」だから教会ソングが多いのは仕方ないし、それによく考えたら、失礼ながらオリジナルの歌はどれくらいあったっけ。というところであの有名な『耳をすましてごらん』です。しかし、今改めて聴くと、これって結構重たい歌だねぇ。NHKの朝の連続テレビ小説の主題歌だったわけだけど、朝からこんな歌聞きたくないな。そんな時代だったのかなぁ。朝はやっぱり能天気に「春よ〜」って歌ってるほうが明るくっていいけどなぁ。
 残念ながら大好きな『風がはこぶもの』は1時半の公演で歌ったらしい(本当は両方聴くつもりだったけど、買い物に行ってたから3時半の公演だけにしたんです)。というのが判るのも、入口で貰ったプログラムに曲目がきっちり書かれていたからで、今回はカラオケをバックにして曲順に忠実に歌っておられました。
 そうなると気になるのがステージの片隅に置かれたギター。いつ使うのかなぁと思っていたら『ひとりの小さな手』だけは弾き語りで会場と一緒に歌ったのでした。本田路津子さんというとギターを抱えているイメージが強かったのだけど、あまり得意ではないようです。

 とまぁ小さくアットホームなコンサートが終わり、父ちゃんは楽しかった思い出に持っていたCDにサインをしてもらってきました。
 教会や、最近ではお寺でも小さなコンサートを開くところがあるようですが、あまり「主の教え」や抹香臭さを押し付けずに歌や集いを愉しむならば、結構素敵なものですね。