《2005.01》


『湯楽里館』の前に大きな雪だるまがあった

 軽井沢で買い物を済ませているうちに雪もどうやら落ち着いたみたいです。
 小諸ユースホステル(YH)に着いたら、顔なじみの仲間たちが何人もいました。父ちゃんも母ちゃんも、独身時代にはここで大晦日を過ごし、それこそ一晩中みんなで歌ったり語ったりしていたものです。時が経ち、今は次の(またはそのまた次の)世代のホステラーが中心になって騒いでいるだろうから、そんなところに昔の常連が子供を連れて泊まりに行くのはお互いにぎごちないだろうからと、これまで遠慮していた面もあったのですが、そんなことは杞憂でした。

「まつおサンとこ、子供は何年生? 3年と5年…あ、これで1年から6年まで揃ったわ」

 さすがにみんな大人になったので、「赤白歌合戦」などという大騒ぎするようなイベントは行わず(15年くらい前にやめたんじゃなかったっけ)、静かにしゃべったりお茶を飲んだりして過ごしています。感覚的には田舎の実家に帰ってきた雰囲気に近いものがありますね。これが家族だけでどこかのホテルなんかに泊まっていると、結局は部屋でテレビを見るかゲームコーナーでお金を使って遊ぶしかなく、だったら気兼ねなく家で寝転がっている方が楽ということにもなりかねないのですが、こうやって仲間たちと気楽に屈託なくしゃべっていると、他所に出かけた気分と家でくつろぐ気分がバランスよく両立しているんですね。リゾートホテルなんかで上手に過ごせる人ってのは、きっとこういう感覚で泊まっているのでしょうかね。自分の世界に浸りつつ、ホテルのスタッフや泊まり合わせた他のお客ともフレンドリーに接して過ごすのでしょう。


懐かしの「赤白歌合戦」(1988年)

 日付が、いや、年が替わる時刻が近づいてきました。お蕎麦を食べて除夜の鐘つき、二年参りに出発です。かつては宿泊者ほぼ全員で歩いていったもののですが、最近は希望者だけで行っているらしいです。で、今年の参加者を募ったところ、何とかYHのクルマに乗り切れそうな人数なので途中までクルマを使うことになりました。もちろん父ちゃんも参加するのですが、正直言ってクルマが出るのにほっとしました。往きは張り切っているのでそれほどでも無いのですが、帰り道が長く感じられるからねぇ。特に厳寒の年は辛かった。1時間以上も上り坂を歩いてくるんだからねぇ。
 途中でクルマをデポしたのは目的地の真楽寺の駐車場が満杯になっているかもという危惧があったからだそうですが、本堂脇の駐車場からひょいと境内に入るよりも、たとえ15分ほどでも寒い道を歩いて行き、参道の長い石段を登りつめて行くほうが厳粛さが違います(実際には駐車場はすいていた)。そうやって真楽寺に近づいていったのですが、妙に静かなのです。鐘の音が聞こえない。日にちを間違えたかなぁ…そんなはずはない。
 なんと、まだ始まっていなかったのです。父ちゃんも10数年前くらいは毎年のように来ておりましたが、YHから歩いてくることや、その前の「赤白歌合戦」が盛り上がってしまったこともあってか、手前で始まっていたわけですよ。ペアレントさえも始まりの挨拶を聞くのは初めてだと言っておりました。
 最初は寺側で「捨て鐘」を3度つき、その後に参詣者が一人ずつついてゆきます。除夜の鐘ですから108人です。ここで一旦終った後、つき放題フリータイムに入って、まぁ行った人は必ず鐘をつけるのですが、最初の108人までは記念品がもらえるわけです(お札とエンピツ…今回はボールペンだった)。先ほども書きましたが、父ちゃんが参加し始めた頃はフリータイムになってからつくことが多く、何度か行くうちに108人にどうにかもぐりこめるようになってきた(それで記念品がもらえることが判った)わけですが、今年は余裕綽々ですね。初めは列に並ばずに写真を撮っていても充分平気でした。
 庫裏でお茶をいただいて、再びクルマまで歩いて戻り、後はスイ〜…いやぁ、久しぶりの二年参りは真に楽でした。



穏やかで清々しい新年を迎えられた

 夜のうちにまた雪が降ったようです。
 朝起きたら玄関先の足跡が白いじゅうたんで覆われていて、我が家のクルマも車高が20センチほど高くなっています。ボディのシルエットも少し変わって、なんだかデリバリーバンみたい。こういうデザインも悪くないなぁ…と、感心している場合ではないですね。このままじゃ表に出られない。いや、歩いて外に出てみたら表の道路も雪が積もっていて、除雪車が来るまでは外出不能みたいです。
 それに加えて今日は元日。前の晩徹夜で騒いだわけでもないけれど、皆さんなかなか起きてこなくって、朝食が始まったのが10時近くでした。
 この日の我が家の予定は、軽井沢に行って旧道をぶらついたりスケートをして過ごそうというものでした。いちおう出発が遅くなってしまうことは織り込み済みなので、近場で遊ぶという予定にしていたのすね。でも、この分ですと、それでも間に合いそうもありません。
 しかし、これもまた家で考えた計画だからなんですね。自分たち家族で行動することしか頭にないんです。ここでこうやって仲間と出会って話し込んだりしていれば、ケース・バイ・ケースで予定なんかドンドン変わっていかざるを得ないんですよ。ましてこの雪ですからね。
 とはいうものの、このままじゃ出かけたくなっても出かけられない。なんとなくみんなでぞろぞろと表に出て雪かきと言いますか、クルマが出せるように雪どかしをやり始めました。外の道路も除雪が入ったらしくラッセルされています。
 もうすっかり日が高くなり、我が家のクルマも日の当たる側の雪が溶けていました。それなら向きを変えれば反対側も溶けるだろうとラッセルしながら外に出て、YHの前に戻ろうとすると…クルマが進まない。YHの前の道は坂道になっているのですが、下側にクルマを出したところ、スリップしてYHに戻れないのです。100mほど下ったところに、地下に排水マスがあるのでしょうか、そこだけ雪が溶けてアスファルトが出ているところがあったのでバックで下って行き、そこからスタートして登り始めたのですが、やっぱりYHの手前でスリップしてたどり着けないのです。参ったなぁ。交通量が少ないのを幸いに(それでも1台下から登ってきたクルマがあった)しばらく道路の端に放置。1時間ほど経って再チャレンジしてなんとかYHの前庭まで戻ってこれたのでした。
 子供たち(および一部の大人たち)は「かまくらを作るんだ」とはしゃぎだして隣の別荘の入り口付近に雪の山を作り始めます。「おいおい、別荘の人が来たら入れないだろ」…さすがにかまくらを作るのは無理みたいでしたが、滑り台みたいなものを作って喜んでいます。

 それやこれやで我が家ももう軽井沢へ行くのは完璧に中止。でも、なにか腹に入れておかなくては夕食まで持たない。それに昔は泊まり合わせた仲間たちがクルマに乗り合わせてどこかの温泉に行くのが元日恒例の行事でありました。
 この時間からでは行ける温泉も限られてきます。近さから言うと『あぐりの湯』でしょうが、坂道の登り下りを考えると『湯楽里館』が一番簡単に行けそうです(最近はこういう日帰り入浴施設が充実してきたので、温泉旅館に「入浴のみ」で行くことがなくなってきましたね)。『湯楽里館』なら浅間サンラインを使って行くので、途中の道の駅『雷電くるみの里』で腹ごしらえもできます。
 伝統の元日温泉ツアーに参加したのは、あざらし一家、みえた一家、そして我が家の3世帯13人です。クルマ2台で出発。父ちゃんとしては今朝の一件があるので日没前には帰って来たいなと内心思っての出発です。この気温では路面凍結の恐れあり、ですからね。


『くるみおはぎ定食』と『正月セット』

 道の駅に着き、ゾロゾロと食堂へ。「いやぁ、昨日もこれを食べたんだぁ」と、あざらしが注文したのは「くるみおはぎ定食」。くるみおはぎは判るけど、定食だってぇ? おはぎをおかずにしてご飯と味噌汁を食べるのかとビックリしたら、蕎麦をメインにしたものでした。父ちゃんは正月限定というセット。ニシン(なのかなぁ)の煮付けに雑煮と蕎麦がついて郷土料理風であります。なにせ小諸YHの雑煮はペアレントの出身地に合わせて京都風の味噌仕立てなので、信州で新年を迎えても地元の雑煮というものは食べたことがなかったのですね。
 食後、情報コーナーでめいめいがパンフレットを一枚ずつ取って『湯楽里館』へ向かいます。実は、このパンフレットというのは地元の観光施設の案内なのだけど、『湯楽里館』のタオル・バスタオルが無料で借りられるクーポンも刷り込まれているのを、YHであざらしが持っているのを見て知っていたのです。しかし、温泉好きのあざらしが『湯楽里館』に最近まで入ったことが無かったというのは意外でしたね。ウチはオープン(1994年)間もない頃から来ていたような気がするなぁ。まだ隣接する地ビール工場や農産物直売所も無く、途中の足下にある上信越道の建設中ということもあってか殺風景なところだったけど、露天風呂から眺める御牧ケ原台地や八ヶ岳方面の景色が素晴らしいところなんです。


久しぶりだから
ちっとも読めない

 5時をちょっと回ってしまったけど、心配した路面凍結も無くYHに戻ってきました。元日夜の恒例イベントは『カルタとり』。去年、いや、もう一昨年になってしまいましたが元日に泊まったときには誰もやりたがらず中止になってしまいましたが、今年はあざらし、みえた、そして通行止めが解除になった高速道路を飛ばしてりもこんが駆けつけ、往時の熱戦が再現できそうです。え? 父ちゃん? いやぁ百人一首は苦手でねぇ、特にしばらくブランクがあったから最初は全然札が読めないのです。初めて参加した颯に先に一枚取られてしまいました。


 早いもので2泊3日の正月旅行も最終日、この日は例によって上田の飯島商店に買い物です。詩織を乗せて行くのは一昨年と同じですね。


くるみおはぎ
これで130円とは良心的だ

 途中、『雷電くるみの里』に寄っておやつタイム。食堂のメニューに「くるみおはぎ」単独であったのを昨日見ていたのでそれを食べて行くことにします。2個入り260円というのを母ちゃんを半分ずつ分けようかと思ってお品書きをもう一度よく見たら1個入り130円というのもあるんですね。わざわざそれだけのために器を汚してしまって申し訳ないと思いながらも1個ずつ頼んでしまいました。「くるみおはぎ」といえば別所の前山寺が有名なのですが、今は予約が必要だったりしてなかなか気軽に食べられないので、ここで食べられるのは嬉しいことです。そのあと物販コーナーを冷やかしていたらパック入りのもあったので、これも買い求めて行くことにしました。帰宅して夜のお茶請けになるか、渋滞に巻き込まれたときの非常食になるか…お昼を待たずに子供たちは「腹へった」と食べてしまいました。

この日の海野宿は
静かでいい雰囲気だった

 飯島商店でゼリーを買い、詩織と別れて今度は18号で引き返します。母ちゃんにとっては久しぶりだろうからと海野宿を通り抜け、駐車場にクルマを停めて少し歩いてみることにしました(子供たちはクルマで待っていると言い、この時おはぎを食べてしまった)。観光客もほとんどおらず、うっすらと雪をかぶった家並みのたたずまいがいい感じです。そういえばクルマを置いた駐車場から川沿いに広い道ができていますね。これってどこに繋がっているのかなと試しに走らせてみたら、あっという間に国道18号に出られるではないですか。去年の9月に父ちゃん一人で海野宿を走ったときは、田中の商店街やら線路沿いの細い道など(対向車が来るとちょっと面倒)以前走ったとおりに来たのですが、いまはこんなに便利になってたんだ。
 その9月に、道の駅には立ち寄ったものの温泉には入って行かなかった『御牧乃湯』が今日の立ち寄り湯です。いやホント、大晦日の草津に始まって毎日違う立ち寄り湯に入るというのが今回の旅のテーマでもあったわけです。


歩道にベンチと雪だるま
外国風に雪だるまは3段式

 さて、昨日遊びに行かなかった軽井沢によって帰ることにします。と言っても今日はもうスケートやってく時間は無いですけどね。せめてフレスガッセでお昼を食べて行かなくては…そういえば、父ちゃんとうとう去年は一度も来なかったんじゃないかなぁ(母ちゃんと颯はソーセージを買いに立ち寄ったらしい)。
 『森へようこそ』でカレンダーを買い求め、旧道をぶらつきます。珍しく『浅野屋』でパンを買って帰ったので、明日の朝食まで旅気分に浸れそうですね。
 さすがに夕方4時ともなるとまた冷え込んできました。そろそろ家に帰ることにしますか。まだ雪の残る18号はさすがにガラガラ(というより、ほとんど峠を下りきるまで対向車に遇わなかった)でしたが、横川でバイパスと合流するとそれなり、かな。高速道路もテールランプの赤い光の帯が見えたので、そのまま18号で帰ってきました。はは、今回高速道路・有料道路は全然使わずに往復しちゃった。なんかこう、我が家らしい年末年始の旅でしたね。この次もこのパターンかな。