《2004.03》 ■ 未乗区間を縮めたのは? 

通過する新幹線を間近で見ると
凄い迫力
 我が家は上越新幹線の線路から1.2kmくらいの場所にありまして、まぁさすがに部屋の窓からは向かいの家などに遮られるけど、数分も歩けば畑の向こうに新幹線の走る姿が見えるのです。で、父ちゃんの勤め先もまた線路から400mしか離れておらず、間が田圃で遮るものがないから良く見えるわけです。というわけで新幹線を眺めるだけだったら珍しくも何ともないという環境なのですが、乗る機会というと、これが殆〜んどないのですね。1982年11月の開業以来まだ6回しか乗ったことがないのです。一番最近乗ったのが今の家に引越ししてきた1997年で、あのときはご招待で送られてきた切符を使って熊谷から東京まで乗って、1991年に開業した上野−東京区間を乗りつぶしたのですが、未だに熊谷−高崎間は乗ったことがないのですね。
 かたや我が家の子供たち(と母ちゃん)はこれまで割りと頻繁に、といっても年に一度くらいだけど新幹線に乗っていたのです。というのも横浜のおじいちゃんの家に行くのに「乳幼児を連れて混雑した在来線を乗り継ぐのは大変」と言う理由で一家揃って遊びに行けないときなど父ちゃんが熊谷駅まで送って行っていたわけなんですね。まぁ、子供たちもだんだん大きくなってきたので「人ごみの中で公共マナーを身につけさせる」ためにも、これからは在来線に乗ってもらう機会が増えるのでしょうが(深谷から横浜まで一本で行ける鈍行列車が運行されるようになり、却って便利になった。それに子供たちにも運賃がかかるようになったという経済的な理由も・・・)。

当落通知に悲喜こもごも
 さて、前置きが長くなりました。2004年3月13日に本庄早稲田駅というのが新しく上越新幹線の駅として開業することになったのですが、一週間前の3月6日に新駅内覧会というお披露目のイベントがあって、その際に試乗会を催すという記事が新聞の片隅に載ったのですね。募集人数は400名、応募資格は小学生以上とのこと。早速往復ハガキを4枚買ってきて家族全員の名前で応募したのです。父ちゃんにしてみれば7年ぶりの新幹線で、未乗区間が少し短くなるチャンスなのです。当たれ!!!
 やがて送られてきた抽選結果の通知によると・・・我が家で当たったのは颯だけでした。まぁ、4,120人の応募があったそうですから競争率10.3倍、4人家族の我が家から颯だけでも当たったのは運が良かった方なのでしょうね。颯も、親がそれほど鉄道に乗せてやらないのに、鉄道好きの傾向があるので心から嬉しそうに喜んでいました・・・とても権利を譲れと言葉をかける余地がなさそう(^^ゞ

丘を越えたら駅だった
通常の人が使わないルートを通ってきたかな?
 と父ちゃんが冗談とも本気ともつかないことを考えているうちに当日がやってきました。前の日は暖かかったのに、朝起きたら今年に入って初めての雪。といってもちらついている程度なのですが、それでも少しずつ激しくなってきて「雪で新幹線が止まったら困るわねぇ」と母ちゃんが脅かしたりしたのですが、いつの間にか雪はやんで空は青空。少し早めに昼食を食べて出発です。
「ところで、本庄早稲田駅って、どこにあるんだぁ?」
 線路沿いに行けば駅に出るだろうと、風が強く砂塵で景色がかすんで見える畑地帯を本庄方面へ、新幹線の側道を走って行きます。最後に小さな丘を越えたら、いきなり広大な駐車場の景色が目に飛び込んできました。
 ここで説明しておきますと、本庄早稲田駅っていうのは、JR高崎線の本庄駅から2kmほど離れた場所にある新幹線専用駅でありまして、在来線でやってきて乗り換える人はいないのです。13日の開業以後は路線バスが走ることになっているらしいけど(駅で訊いたら国土交通省の認可待ちとのこと)、まぁたいていの人はマイカーでやって来ることになると思われるわけで、収容能力1,000台の無料駐車場が必要になるわけなんでしょうね。ここにクルマを置いて数日間の旅行に出かけても構わないそうなのですが、車上荒らしが心配だなぁ。
 開業後この駐車場がどれほど埋まるかは判りませんが、とりあえず内覧会のこの日は駐車場からあふれたクルマが付近の路上にも停まっていて(いちおう「満車」ということにはなっていたけど、試乗会参加者のために余裕を確保してあった)、また、駅前広場では模擬店やフリーマーケット、それに郷土芸能披露の催しなんかで賑わっていて、新幹線高架をも見下ろす丘の上から見た景色としては圧倒的な迫力があったわけです。

こちらは南口。早稲田大学はすぐ目の前
 それに引きかえ駅舎は地味ですね。当初JR東日本が「熊谷や高崎に近すぎて、途中に駅を作ったらブレーキかけてばっかり、新幹線の高速を生かせない」と建設を渋ったのを県や地元の費用負担で作ったそうで、なかなか寄付も集まらなかったのでしょう。新幹線専用駅ということで乗降客が駅や周辺に留まる時間が短いというのも、ショッピングセンターを備えた立派な駅舎が不要な理由かもしれません。市街地まで2kmと中途半端に近いのも、ここで列車を待って買い物や食事をする必要がなくなる理由になります。新幹線というと父ちゃんはつい「高い特急料金払って遠くへ旅行に行くときに乗る列車」という気持ちを持ってしまいますが、売店が一つあるだけの私鉄の郊外電車の駅、みたいなもんです。(将来的には都市化が進み、JR東日本も「そうなれば採算も取れる」と考えているようです)
ホームからは赤城山がよく見える
 そんな駅でしたから、内覧会といっても「へぇ、こうなんだ」と珍しく見て回るようなところは少ないです。せいぜいホームに上がって時おり通過してゆく列車を見るくらい。でもね、これが結構面白いんです。まず、スピードが凄い。あ、やってきたなと思ったらドドドドドッと勢いを増すかのように目の前を通過して反対側に去って行く・・・会社の窓から見ているのとは全然違う迫力。でも面白いというか不満に思ったのは配置されていたガードマンの対応です。列車がやってくると「危ないですから黄色い線の内側に入ってください」って言うんですけどね、通過する列車はホームに面した線路を通らないのですよ。駅の構造は、本線の外側に壁で仕切られた副本線というのがあって、ホームはさらにその外側なんです。まぁ本当は落下防止のために言ってるんでしょうけど、列車が来るたびに「下がって下がって」って言われると、接触防止のために聞こえますよね。それにしても長野新幹線(もはや誰も「長野行き北陸新幹線」と呼ばなくなったなぁ)も走るとはいえ、意外に多くの本数が走っていることに驚きました。もっと「忘れた頃にやって来る」程度かと思ってたんです。
上越新幹線というと、この車両をイメージする
(熊谷駅にて・颯)
 それと、車両の種類がずいぶんいろいろあるなぁということに感心しました。会社勤めをするようになってからは鉄道旅行は殆んどしなくなったところに、国鉄がJR各社になって車両も新車や改造車がどんどん増え、全然覚えられなくなっているというか覚える気持ちもなくなっているというか・・・

 代わりに颯が元気です。試乗会参加者の受付を済ませ、目印のリボンを胸につけ、まだかまだかと待っていますが、なかなか指定の時刻がやってこない。我が家が駅にやって来たのが12時20分頃です。で、13時30分に上りホームに入って列車の入線が41分、発車が45分、ずいぶん長い長い待ち時間です。そうそう、試乗列車の行き先なんですが、お隣の熊谷駅まで。10分で行って、12分の停車の後(ドアは開かない)再び10分で戻ってきて14時17分本庄早稲田着。
試乗列車、出発!
 試乗に使った車両はE4系MAXという2階建て車両の16両編成で、座席数だけで言えば国内最大級の輸送能力があるんじゃないかと思うのですが、それでどうして400人しか募集しないんだ・・・きっと、議会関係者やら町内会関係者など、募集外の試乗客というのもあるんでしょうね。見送った車内は結構座席が埋まっていましたから。それでもって決められた時刻までに集まって乗った時と違い、降りる時は皆一斉にホームから改札に向かってくるわけで、乗車時間よりも駅から出るまでの時間の方が長かったかもしれません。まぁ、これだけの人間が一度に降りてくるなんてのは今後おそらく二度とないでしょうなぁ。

 颯には我が家の代表ということでデジカメを持たせたのですが、車窓風景よりも熊谷駅で見た他の車両や駅名標識の写真が多かった・・・乗っている時間が短かったこともあるでしょうが、え? 父ちゃんと同じ趣味だって?
 颯が新幹線に乗っている間も、父ちゃんは携帯電話に内蔵されたカメラでホームの端に行って写真を撮ってたりして、すっかりレールマニア、カメラ小僧になっていました。「鉄っちゃん」ではないはず、なんだったけどなぁ。
 母ちゃんと結衣はフリーマーケットや模擬店などを冷やかしていたようです。

あ、パティオが見えた!(ウチん家の裏手なんだよ:颯)
 この新駅誘致には地元本庄市はもちろん、周辺の自治体も地域の活性化や利便性の向上を求めて運動を進めたのでありますが、それに気遣ったのか、駅構内にあった周辺案内図はかなり広範囲にわたって描かれていて、地図の一番端っこは我が家がある場所でした。そうか、ウチも駅周辺に含まれるのか・・・でも、仮に新潟や長野方面に列車で出かけるとしたらどうするかな。JR深谷駅から乗って高崎で乗り換えちゃうかな。それともここまでクルマで来ちゃうかな。

 新駅誘致活動をした周辺の自治体の一つに、群馬県伊勢崎市があります。本庄市とは利根川を挟んだ対岸にあるのですが、その利根川に架かる坂東大橋というのが今までの橋の下流側に新しく架けられました。その開通日がやっぱり3月6日で供用開始が午後3時、新駅内覧会が終わる時刻です・・・だったら渡ってみようじゃないか。
旧橋を見ながら新しい橋を渡る
斜張橋はデザインが美しく、大好きだ
 さっそく本庄早稲田駅から近くの国道462号線に出て(駅前から国道に接続する道が、側道と平行して作られた)伊勢崎方面へ。この国道にもショートカットが作られていて一直線に坂東大橋に向かえるようになっていました。伊勢崎からは新幹線の駅と関越道(本庄児玉IC)が一本道になったわけで利便性が良くなったなぁと思うのですが、少なくともこの日は結構な渋滞で、これなら東武伊勢崎線や北関東自動車道の伊勢崎ICを使った方が便利じゃないかとも思ったのでした。
 ともあれ供用開始後40分という、決して開通マニアではない我が家としては極めて異例な新道体験をして帰ってきたのでした。
 さすがに午前中からお昼にかけておこなわれた橋の開通イベントは見に行かなかったけれど、しっかり開業と開通の両方を体験してきたわけで、今年はXCスキーにも出かけず休日には図書館通いにハマっている我が家ですが、やっぱり物見遊山が好きだったんだよなぁ。