言葉のインフレ

毎朝家を出る時分に、テレビの生活情報番組で占いをやっているのですが
時々「今日はこれを食べるといいことがあるよ」って
いわゆるラッキーフーズも併せて紹介してくれます
で、これがラーメンとかコーヒー、紅茶といったものなのですが
アナウンサーは大仰に「今日の占い、グルメ編!」と叫ぶのです

「グルメ=美食家」と認識しているワタクシにしてみれば
なにもラーメンごときに「グルメ」なんて言葉を使うことないだろうに
そう思ってしまうのですが、いかがなものでしょう
いや、けっしてラーメンを蔑んでいるわけではないですし
美味しいラーメンを求めて食べ歩くのはワタクシも好きです
でも、「グルメ」ってのはもっと特別の人のために使いたい言葉なんですよね

今日のラッキーフーズが紅茶だからといって
ティーバッグの紅茶を飲むような人はまだグルメではありません
三菱コンツェルンの創始者、岩崎弥太郎のエピソードだったと思うけど
若い頃のイギリス滞在中にある貴族を訪問し、お茶の時間になりました
彼は召使に「砂糖はどれになさいますか?」と訊かれたそうです
お茶っ葉の種類じゃないよ。砂糖だよ
尋ねたら、砂糖も産地や生産年度によって微妙に味が違うのだそうです
で、ワインセラーじゃないけど、いろいろ揃えておいて使い分けるのが
貴族のたしなみなんだそうですよ

ちなみに、
このような貴族や大富豪が住む屋敷を英語では「マンション」と呼びます
ある外国人が来日して日本人に「俺はマンションに住んでいる」と言われ
たいそうビックリしたそうです
そしてその日本人を訪問したところ
それが英語でいうところの「アパートメント」だったので
もう一回ビックリしたそうです

「デラックス」という言葉が「デリシャス」になり、今では「ゴージャス」です
そしてその「ゴージャス」でさえ
安っぽいイメージを持って聞こえるようになってきました

階級社会がない国、日本
庶民が使うべきではない言葉を取り込んで
言葉のインフレが続きます