オートハープって、こんな楽器

 

 『五つの赤い風船2000』のCDジャケットです

『五つの赤い風船2000』のCDジャケットです

おことわり
 オートハープ(AUTOHARP)という名称は
 現在オスカーシュミット社の登録商標だそうです
 実際、ワタクシが持っている東海楽器製のものは
 クロマハープという名称で売られていましたし
 ARIA社のものはコードハープという名称です
 ただ、一般名としてオートハープ(AUTO HARP)があり
 その方が通りがよいようなので
 ここでも「オートハープ」と書いてゆきます

 それから、これが何より重要なのですが
 ワタクシはここでオートハープについて
 正しい歴史や奏法などを解説する気はありません
 あくまでも自分が感じ、思ったことを
 時には憤慨したり、時には面白おかしく
 書いてゆくつもりです

 万が一にも真面目に興味を持ってしまったら
 他のちゃんとしたサイトで裏を取るように

 おねがいします


オートハープをケースから取り出すと、ギャラリーはまず弦の多さに圧倒されます
「ハープ」として見ればそうでもないのですが
「ギター」や「バイオリン」と比べると間違いなく多すぎます

ギターなどはフレットを押さえることによって弦の有効長を変化させ
それに伴って音程を作っているから1本の弦でいくつもの音が出せるわけです
「弦の長さが半分になれば周波数は2倍になり、音程は1オクターブ上がる」とは
音楽と言うより物理学のおさらいです

ところがオートハープは「わしゃ、この音しか出さんもんね」と
1本の弦が1つの音しか担当しません
鍵盤楽器で言えば白鍵黒鍵の数だけ弦が必要になるのです
ワタクシのオートハープで36本。これで3オクターブ半の音域があります

  36本ですと3オクターブにしかなりませんが
  低音域で黒鍵を省略してあるので
  「半」オクターブ低い音まで設定できるのです

1本の弦がそれぞれ決まった仕事しかしないわけで
無駄な人員配置をしているどこかの役所みたいであります
オートハープはズボラな楽器でもあるわけです


オートハープを抱えてジャンと弦を払うと美しい和音が響きわたり
ギャラリーはそのハーモニーにビックリします

普通、弦楽器と言うのは音を出したい弦を弾いたり叩いたり擦ったりします
ドミソの音を出そうと思ったらドミソの弦を弾かなければなりません
ところがオートハープはどれがどの弦かはお構いなく弾いても
ちゃんとドミソの音が出てくるのです

これこそが「オート」なハープのいわれなのでしょうね
左手で操作する「コードバー」に仕掛けがあります
このコードバーの裏にはフェルトが張ってあり
よく見ると、ところどころに切り欠きがあります
この切り欠き、たとえば「C」のバーならドミソ、「F」ならドファラと
和音の構成音の部分に対応しています
…もうお分かりですね
和音に必要な音をよけてフェルトを弦に押し当てて消音しているのです

つまり、普通の弦楽器が「必要な音を出す」のに対し
オートハープは「不要な音を消している」のです
逆転の発想、と言えば聞こえはいいのですが
ある意味では横着な楽器とも言えそうです


和音を出すことにかけて言えば
これほど便利な楽器は無いのですが
制約があります…出せる和音がコードバーの数に限定されてしまうのです
ワタクシが持っている機種で15本、今は21本の機種が主流なのかな?
いずれにしてもこの中でまかなわなくてはなりません

コードバーを交換することもできますが
押さえてあるパーツを外すために小さなネジを取らねばならず
こういうのは本番前にゆっくりやりたい作業です

  ワタクシの師匠は、ワンタッチバックルみたいな金具を使って
  工具を使わず簡単に交換できるように改造していますが
  それでも演奏中にやるのは無理でしょう
  せいぜい曲間で司会者がしゃべっている時くらいです


ワタクシは作曲のお作法、というかコード体系については
トンと無知なものですから
2つのコードバーを使って別のコードを生み出すとか
キーを変えて移調してしまうなんてことができません

ですから、使えるコードだけでできている曲を選んで
初めて聞く相手がビックリしている間に演奏を終えてしまうのが
一番ウケる方法になるのです

ううむ、むなしい


人間の耳というのは不思議なもので
和音を次々と変えて演奏していると
その中に含まれる単音を繋いでメロディが聞こえてくるのです

さらに不思議なことに、「あ、あの歌だな」と思ったら
メロディに含まれても和音には含まれていない音までも
ひとつや二つくらいは頭の中で補ってくれるのです(一種の錯覚)

もちろん細かくコードを変えて、一音一音キチンとその音が含まれるコードで鳴らし
36本全体でなく、その音近くの弦を集中的に鳴らすことにより
「弾く」ということになってゆくのですが
多少は省略しても何とかなるというのがオートハープの偉いところです

先ほど「一種の錯覚」と書きましたが
これを効果的に利用するためには
 ・メロディに和音の構成音が多く含まれて
 ・聴衆が良く知っている曲を
 ・演奏前に曲名を告げて演奏する

これで、かなり「曲を弾いているように」聞こえます

ただ、この錯覚に一番陥りやすいのは演奏者自身です
だって自分はその曲を弾くつもりになっているのですからね
頭の中でその曲が鳴りっぱなしです
ですから、彼自身にはちゃんとした曲が聞こえていても
聴衆には全然そのように聞こえない、ということが起こるのです


部屋の引っ越しでアルバムを引っ張り出したら
友人の結婚祝いで演奏したときの写真が出てきました
あのとき、周りにはどういう風に聞こえたか
今思うと顔から火が出そうです