おぞい紙
先日来の報道を見ていますと
つい、この話を思い出してしまいます
1979年7月10日、東芝EMIのスタジオで行われた
「107 SONG BOOKシリーズ完成記念発表会」での
笠木透さんが語る制作秘話であります
ぼくらはなるべく悪い紙で、印刷もあんまり良くなくて。で、写真も自分たちが撮って全部入れるから、ビカッと出たら却ってアラが目立って困るからですね、こうちょっと印刷も落ち目でやって欲しいという注文を出したわけですね。
で、紙もですね、四国のこれは…徳山製紙かどっかの紙なんですけども、その紙がちょっと何といいますか大昭和製紙といいますか、名前を出しちゃうと悪いんですけども、いわゆる日本の一流企業の一流の紙よりは、ちょっと落ちると。そこんとこが気に入って特注したわけです。
頼んでやっと出来上がってですね、その紙がきたもんですから、やれやれ悪い紙が…、ぼくらの言葉で言いますとね、ローカルな言葉で言いますと「おぞい紙」と言う。「おぞい紙が来て良かったなぁ。これ、なかなかおぞいじゃないか」…と、パッと開けてみたらですね、良くなっているわけですね。いい紙が来ちゃった。
これは困るじゃないかという話をしたら、そこのメーカーの方が「ま、それだけ買ってもらえるんだったら、一生懸命私たちは勉強させていただいた」…で、どういうふうに勉強させていただいたかというと、その金で少し良くしたちゅうわけですね、紙質を。
日本という国はそういう見事な何といいますか、こう前向きな気持ちをみんな持ち合わせている国だのうということをしみじみ思ってですね、「いや、ぼくらは悪くしたかったんや。悪くしたいという考え方でやってたんだ」と言ってもですね、メーカーの方は「いやぁ、一生懸命これでいい紙を漉いてきたんですから受け取ってください」ということであの紙になっちゃったんです。
今日、久しぶりに聴き返しました
附記)
ふとしたことからこの記事を3ヵ月後に読み返してみたら
「先日来の報道」というのが何のことだっけ? 状態
いやはや、最近は次から次に事件が起こるので
あっという間に忘却の彼方に行ってしまいます
...それとも単にワタクシの記憶力が衰えているだけかな
製紙メーカー各社で出しているリサイクルペーパーの
古紙配合率が表示以下だったのが相次いで露見したという事件でした
前年から、食品などいろんな製品で表示内容と異った材料で作られていたという
「偽装」が話題になっていたのですよ、この当時は
と、後から見る人のために書き加えておきます