意味が無いのには意味がある

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もう25年も前に読んだ本なのだけど
井上陽水さんのところに子供が生まれることになり
先輩のフォークシンガーのところに電話をかけたそうです

「あのね、困ってんのよ、もうすぐ生まれるでしょ
 名前を今のうちから考えとかないと間に合わないって
 まわりうがうるさくって、何かいいサジェスチョンないですか?」

知ってる人は知ってるだろうけど、あの「陽水」ってのは本名なのですね
まぁ読み方は「あきみ」というらしいんだけど
お父さんが「若水」で、かの「幸徳秋水」が遠縁らしいから
そのへんのつながりというのも気にしたのでしょうね

で、電話を受けたシンガーは少し頼りなげに

「名前の問題ねえ、困るんだよね
 どんな理由もどこか説得力に欠けるでしょ
 俺んところのことでいえば、響きの良さだけで付けたんだけどさぁ...
 あのね陽水、男の考えって頼りないからさ、ちょっと女房とかわるわ」
「モシモシ陽水さん!?
 名前ってさぁ、意味持たせちゃうと今はいいと思っていても
 明日は変わっちゃうことだって容易にありうるじゃない
 だからなるべく意味が無い方が長持ちすると思うの
 それから年取ってからいきてくるってのもいいんじゃない」

当時はまだ独身でしたけど
このエピソードが強く心に残っていて
自分に娘が生まれたとき、真似しようと思ったんですよ
...でも実際はなんだかんだと意味をこじつけちゃいましたけど


昨年、この先輩シンガーさんとお話をする機会があり
このエピソードのことを話したんですよ
そしたら、ぼそっと

「いやぁ、子供が小さいときに
 自分の名前の意味を訊いてきて、答えに困ったんだ...」


書き終えて、前に似た話を書いたような気がしたけど
岸田今日子さんのエピソードと雰囲気が似てるんですね

 
 
 
ちょっと素敵な本『なまえ星』
なまえ星