完本・建築探偵日記

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完本・建築探偵日記

前に
「アマゾンが目指しているのは町の小さな本屋さんだ」
と書いたことがあります
つまり常連客の好みを覚えていて
「あんたが好きそうな本が入ったよ」
と声をかけるフレンドリーなサービスです

最近、アマゾンのサイトにアクセスすると
トップページの「おすすめ商品」にこの本が表示されます

これが不思議で仕方ありません
古くからの友人は知っていると思うのですが
確かにワタクシ、藤森照信さんの建築探偵モノが好きで
彼の本を読んでは実際の建物を見に行ったりした時期があるのですが
それももう20年以上も前の話です

「路上観察」とか「トマソン」なんてジャンルの本も
アマゾンからは一冊も買ったことはないはずです
なのに、新刊でもないこの本が
「ほら、あんた、こういう本が好きなんだろ」
と目の前に提示されるのですよ

アマゾン恐るべし!


というわけで読んでみました...図書館で借りてきて (^^ゞ

この本自体1999年の刊行なのですが
もともと1993年に出た本の増補新版ということだそうで
各章の末尾に「その後、取り壊されました」という但し書きが痛々しいです

まぁ、形あるものはいつか壊れる壊される運命にあるし
狭い国土に残しておく場所もないのかもしれませんが
それにしても...日本では建物は消耗品なのでしょうか
木と紙で作られ、火事で簡単に焼失する日本建築の伝統そのままです

いくつかの建物は移築保存され、藤森さん自身もそういう運動に関わっていますが
あくまで氏は観察者、探偵でありますから、多くはすべてを見つめるだけです
でも、この記録によって政治経済の大立者から庶民に至るまで
明治から昭和にかけて生きた人たちの様子が「建築」という側面から伺えます
なぁんて偉そうに書いたけど
けっこう専門的なことを書いてあるにもかかわらず
平易な文章でぐいぐい読ませてくれるから夢中になってしまいます

久しぶりに藤森さんの著作をどんどん読みたくなりました
近年は建築史だけではなく自然素材の提言や
屋上緑化のはしりとも言える「タンポポ・ハウス」など
実作も手がけていらっしゃると伺っておりますので
そのあたりの本なども読んでみたいものです


完本・建築探偵日記
藤森照信・著/王国社・刊