響け除夜の鐘

 


今日は大晦日
きっと夜にはあちこちで除夜の鐘が響き渡ることと思うのですが...

秩父札所二番・真福寺の納経所となっている光明寺を訪ねたときのこと
境内に入ってすぐ左手になにやら普請中の現場がありました

「あ、鐘楼堂だな」
すぐにそうだと気がついたのは、中央に四角い穴があったから
梵鐘の直下に穴を掘っておくことで音の響きというか伝わり方が良くなると
なぜかそんな知識が頭のどこかにあったのですね

碁盤の裏にも同様な穴がありますね
「血溜まり」とも呼ばれ
対局中に横から口を挟む人間は首を刎ねられ
このへこみに乗せられる事になるそうですが
  碁盤の脚は「クチナシ」の花を形どっています
実際には木材の乾燥による歪みや割れの防止と
石を打った時の音の響きを良くする効果を狙っての細工です

音の響きといえば、梵鐘は「うなり」が素敵です
独特の余韻が遠くまで響くのが日本の仏教寺院の特徴ではないかと思うのですが
あの「うなり」を出すために梵鐘の厚さは均一にはなっておらず
さらに断面は真円ではなく微妙に歪んでいるそうです
そうすることで音波の波形に変化をもたせ、「うなり」を生じさせているとか

なるほどなぁ...
しかし感心するのは昔の人はどうやってこれを知ったかということです
理想的な「音」や「うなり」を得るための方程式なんてあるのでしょうか?
いや、突き詰めれば吊るされる場所の地形や、気温や湿度も影響するのですから
絶対的な黄金率というものは存在しないでしょう
試行錯誤の中から身につけた職人の技なのでしょうか
でもね、試行錯誤って言っても、そんなに試せるほど梵鐘の需要ってあったのかなぁ


梵鐘について、もうひとつ変な知識がありました
「鐘の内部は音波が打ち消しあって、意外に静か」だということ
科学的に言うと、逆位相の音が発生しているということでしょうか
  救急車では車内で逆位相のサイレン音を鳴らしていると聞いたことがありますが
  未だ乗ったことがありませんので確認していません

信州の真楽寺に行った時だったと思うのですが
そういえば、そんな話を聞いたことがあるねと言う仲間たちと実験したことがあります
普段あそこの鐘は「ご自由にお撞きください」ですからね
みんなで順番に梵鐘の中に入って交代で鐘を撞いたのでした
...え? 結果ですか?

完全に無音ってワケではなかったですね


という記事を載せようと思っていたら
偶然にもこんなニュースを見つけました

光明寺:釣り鐘、66年ぶりに復活 響け除夜の鐘--秩父/埼玉

秩父市山田の光明寺(中井隆吾住職)に、釣り鐘が66年ぶりにお目見えした。第二次大戦で国に供出して以降なかったが、横瀬町にアトリエを持つ東京芸大の西大由名誉教授(83)=専攻・彫金=の設計、監修で「鐘楼堂」と共に設置された。31日から1日にかけて、完成を待ちわびた檀家(だんか)約600人が、不況風を吹き払い夢多い新年を迎えようと、交代で除夜の鐘を突き鳴らす。
釣り鐘は高さ1.48メートル、口径約85センチ、重さ800キロ。中井住職の友人である西名誉教授が、「山寺に鐘がないのはおかしい」と建立を提唱し、今春に設計などの協力を約束。中井住職は檀家とも相談し、夏に三重県桑名市の鋳造所に製造を発注した。
「鐘楼堂」の建設は地元の業者に依頼。戦前に堂のあった場所から約50メートル移して建設中で、屋根を残し8割ほどできている。今月14日には鐘が堂につるされ、檀家から「堂が未完成でも除夜の鐘を突こう」との声があがった。中井住職も「良い年を迎える鐘の音を、66年ぶりに地元に響かせたい」と初突きを約束している。

12月30日朝刊 毎日新聞