おかえり

 
おととい、川越少年刑務所というところの体育祭を見に行ってきました
見学? 見物? ...観覧と言えばいいのかな

場所が場所だけに「ご近所お誘い併せの上」と気軽に行けるところではなく
いちおう地元自治会の役員らしい人もいましたが
そういう人も含めて支援団体など、あらかじめ招待状を貰った団体で
だれそれが行きますと名前や所属など申し出ておいて行くわけですね
ワタクシの場合も保護司の団体に関係して、その末席に連なって行ったわけです

受付で手続きを済ませ、刑務官に連れられて二重扉を抜けると、そこは「塀の中」
控え室になっていた講堂に招待客が揃ったところで
携帯電話やタバコをその場に置いてグラウンドに行きます
  ああそうか、受刑者に渡らないようにってことなんですね

こういうところに来たのは初めてなのでちょいと緊張したのですが
そのあと目の前で繰り広げられた光景は、いたって普通の情景です
少年刑務所というのは、原則として26歳までの受刑者が収容されているそうで
一般の刑務所みたいに中高年がいないのですね。年齢層が低く、揃ってるんです
そうなると、どこかの学校の体育祭を見に行ったのと同じなんですよ
半袖やランニング姿になると腕や肩に倶梨伽羅紋々の一端が見える人もいるけど
みんなまだ子供っぽい顔をしてるんですね
だから全寮制の職業訓練校があって、そこの体育祭ですよって言われても不思議じゃない

プログラムが進むにつれ、参加している彼らはもちろん
見ている我々も熱中して熱くなってくるんです
騎馬戦が無いのは妙に納得したのですが、割とリレー競技が多く
最後の4000mリレーなんか長丁場ですから途中で順位がころころ替わって
見ている方の興奮も最高潮です
そして気持ちがいいのが、この競技が終わったあとです
最後の種目ですから、応援席は閉会式のために皆立ち上がって隊列を組み始めています
そこに走り終えた選手がグランドのはずれを歩いて戻ってくるのですが
一位のチームもビリのチームも、拍手で自分たちの選手を迎えるんですよ

まぁ、見ているこちらも来賓席を離れて自由に動き回れる状況ではないので
最初から最期までちゃんと見ていたのでありますが
これって自分の子供の運動会でも、ここまで熱心に見なかったな (^^ゞ

帰るとき、楽器を片付けているブラスバンドのメンバーと通路で一緒になったのですが
「今日はありがとうございました!」と彼らから明るく声を掛けてくれて
むしろ彼らから励まされたような思いもしたのですよ


もちろん、この見聞だけが彼らのすべてではないとは思います
こんなに夢中になって体育祭に取り組み、素敵な笑顔を見せていても
日常の食事や入浴・用便・私語の制限にはストレスが溜まる思いをしているだろうし
別の一面では受刑者同士、あるいは刑務官との関係で
言っちゃぁ悪いけど陰湿なものもあるだろうし
なかには懲罰や矯正の程度を逸脱するような処遇もあるんじゃないかと思います
そして出所後の世間の偏見と無視...ワタクシにもそういう気持ちが無いとは言えません
実際かなりの数の人間が再犯し、二度三度と罪を繰り返すという現実も知っていますが
あの笑顔を信じたいという気持ちは大事にしたいと思ったのでした


また、別の一面もあります。被害者感情というものです
犯罪被害者の中には、仕事を失い、家族を失い、心の傷だけではなく
生活に困窮している人がいます
被害者がそんな苦しみを味わっているのに
加害者は衣食住が保障され、職業訓練が受けられるうえに
慰問という名でプロ芸人のショーを見る機会だってあるのです
逆なんじゃぁないの?

そう言われると返す言葉がありません
「それはそれ、これはこれ、どちらも手厚く」
ワタクシには、良い子の模範回答で理想論を言うしかありません
 
 
罪を憎んで人を憎まず...と口で言うのは簡単ですが
心からそう思えるようになるのは大変です

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