水の城

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この前の記事で『のぼうの城』という映画は同名の小説を原作にしている
というような書き方をしましたが、小説のさらに原作があります
というか、もともとこれは『忍ぶの城』という
城戸賞を受賞したオリジナル脚本だったそうです
それをプロデューサーたちが映画化したかったのですが
城戸賞受賞作とはいえ、当時まだアマチュアだった人が書いた脚本で
しかも壮大なスケールの(つまり制作費がかかりそうな)内容ではスポンサーがつきにくい
というわけで「原作となる小説を作ってしまえ」とノベライズした作品
すなわち『のぼうの城』を作ってしまったらしいのです
幸運なことにこれがベストセラー、さらには直木賞候補にまでなって話題となり
晴れて映画化ということになったということらしいのですね

そういう生い立ちもあってか、小説自体も一気に読めてダイナミックだったのですが
登場人物たちのキャラクターがずいぶん誇張されていると感じるし
それになにより、水攻めって怒涛の水流で敵を溺れさせることだっけ?
石田三成の「決壊させよ!」の声が
忍城から20kmも離れた深谷市江原の取水口まで届くとも思えないし
そこから一気にあれだけの水が押し寄せてくるというのもちょっと不自然に思うのです
水攻めって、一種の兵糧攻めじゃぁないのかなぁ
補給路が断たれ食料がなくなる、湿気が元で病気が蔓延する、籠城が長引いて士気が下がる
...というのが本来の狙いではないかと思うのですね

武士のみならず城下の町人百姓も一緒に籠城すれば、ますます不利になるはずですが
もともと湖沼に囲まれていた忍城は普段から鯉や蓮根を育てていて
新鮮で滋養豊富な食料があったのだ、と書いた小説があります...『水の城』です

数年前に図書館で『のぼうの城』の順番待ちをしているときに借りて読んだのですが
史実として同じ三成の忍城攻めを描いていて、納得のゆくといいますか
これならありそうだという、合理的な書き方をしていました
城外の百姓が崩した石田堤も、初めから崩しやすく作ってあったとかね

いかにも映画的な『のぼうの城』も面白いけど
こちらも読み物としてなかなか楽しめるなと、先日『のぼうの城』を再読したあと
この本も図書館でもう一回借りてきて読んだのでありました

ちなみに、図書館の住所は埼玉県行田市佐間
...まさにこの話の舞台となった激戦の場なのです。三成が本陣を構えた丸墓山も近くです