健さん
数日前、雀屋さんのブログ記事でのコメントのやり取りで
『幸福の黄色いハンカチ』という映画の題名が出てきました
これ、ワタクシが大好きな映画のひとつです…学生時代に封切られて3回見ました
もともと山田洋次監督作品が好きなところに、海援隊の武田さんが出てるんですもんね
劇中、武田さんが何かにつまづいたりぶつかったりするたびに
「あ痛、あ痛~す」と最後に「す」をつける博多訛りが耳に懐かしく響いたものです
で、この映画、いちおう主演男優は高倉健さんということになっております
冒頭に近い部分で、網走刑務所を出所した健さんが郵便局でハガキを買い求めます
「いくらですか?」
ああ、今のハガキの値段が判らない(自信がない)くらい長いお勤めだったんだ
と観客は窺い知るのですが、実を言うとこれはちょっとおかしい
刑務所では出所が近い受刑者に対し、スムースに社会復帰ができるように
世間の情勢を教えたり、街に買い物に連れて行ったりしていると
何かの本で読んだことがあるからです
だからこれは演出上の嘘、というよりも
ワタクシが勝手にそう読んでいるだけで
たいして意味の無い会話なのかもしれません
健さんの演技が凄いなぁと思ったのは、そのあと駅前の食堂でのシーンです
ラーメンを注文した後、ハッと気がついた彼はビールを頼むのです
そうだ、シャバに出たんだ、酒を飲んでもいいんだ
ビールはすぐにテーブルに届き、食堂のおばさんが淡々と一杯目をコップに注ぎます
そのコップを両手で持ち、口元まで持っていって見つめ、そして飲み干す
…この一連の動作がたまりません!
やがて運ばれてきたラーメンに対しても、健さんの全身からあふれる喜びは感動的です
野球のピッチャーが肩を回して威勢をつける(?)仕草をしますが
健さんも肩を「ぐゎん」と回すようにしてラーメンを箸ですくって食べ始めるのです
わしわしとラーメンを食べる健さんの背中がすべてを語っているようです
「刑務所を出所した」…これがどれほど素晴らしいことかを
健さんは駅前の食堂のシーンで表現したのですね
東映の『網走番外地』シリーズが大人気だった頃
映画館から出てきた客が健さんになりきって肩をいからせて歩いたものだ...
そんなエピソードを聞いたことがありますが
ワタクシの場合、ラーメンを食べるときに、今でも時々健さんになりきってしまい
肩を「ぐゎん」と回して食べ始めるのです
…という文章を書いたのですが
昨日、実家の本棚から台本を持ってきて読み返してみたら
シーンの順序や、その他の細部がワタクシの記憶とは異なっていました
もちろん、撮影現場や編集の際に監督が変える場合もありますから
この台本どおりで無い可能性は充分にあります
最終的に上映されたのはこのビデオの中にある映像なのですが
ベータのビデオデッキは壊れて廃棄してしまったので
観ることができないのです…