シジンのすき焼き

しばらく前の日曜日に、地元の図書館に行ったら
雑誌のコーナーに『月刊みすず』があるのに気づきました

『月刊みすず』というのは
たとえば小学館の『本の窓』や、集英社の『青春と読書』のような
みすず書房のPR誌みたいなもので、書店の棚では見かけない本です
定価はあるけど、第三種郵便物の認可を受けるため無理につけたような気がします
  以前、書店のカウンターで読みたかった記事の載っている号の『本の窓』を見つけて
  「これください」と言ったら「お金はいりません」と言われました
  でも、出版社に定期購読を申し込むとお金取られるんだよね…送料の代わりかな

この雑誌は、9月の終わりに読んで面白かった雨過ぎて雲破れるところの初出誌で
今もまだ連載中の、つまり単行本未収録の新しい分が読めるのです
図書館には連載第1回目の号からのバックナンバーが揃っていましたが
もちろんそんなには要らないので、6月号以降の分を借りてきました

例によって前置きが長くなりましたが
8月号に載っていた「すき焼き」の作り方が紹介されているエピソードに
「なるほど!」と思わず膝を叩いたのでした


シジンこと佐々木幹郎さんの作るすき焼きは関西風なのですが
ワタクシが感心したポイントの第一点は

…安い肉を買っても、牛脂だけは肉屋さんで上等の肉の脂をもらって来るのがポイント。そうすると、焼いた肉の味は上等の肉と同じになるのだ。

なんと嬉しい知恵ではありませんか
安い肉しか買えない我が家にとって素晴らしい話です…が、ちょっと待てよ
馴染みの肉屋があれば「松坂牛の牛脂くれ」とも言えるかもしれませんが
我が家はスーパーでパック入りの肉を買い、ショーケースの上の籠に入った
「ご自由にどうぞ」という牛脂を貰ってくるわけですから
ちょっと真似できそうにはありません
そう思いながら、昨日はたまたま普段あまり行かないスーパーに行ったところ
「ご自由にどうぞ」の牛脂がこうなっていました

和牛の脂? 和牛を焼くときの脂?

上等そうじゃありませんか(笑)
「よし、この店、贔屓にするぞ」

というわけで、昨夜はすき焼きでした
我が家も基本的には関西風なんですよ
ワタクシの両親は新潟出身ですが、結婚して大阪で暮らし
おそらくその頃見よう見まねで覚えたすき焼きを
今度はワタクシが見よう見まねで作っているからなのですが
かねがね不満というか疑問に思っていることがありました

つまり、手順として最初に肉を焼き、そのあと調味料を入れて煮込むのですが
家族で鍋を囲んで食べると、あとから肉や野菜を追加するわけですね
すると、最初の肉は「すき焼き」だけど、追加分は「牛鍋」になってしまうのです
この矛盾を解決したのが幹郎さんのポイント第二点なのです

 一度に食べる人数分の肉をすべてこのようにして最初に鍋で焼き、大量の肉がやわらかく焼く上がったとき、鍋から肉をすべて取り出して大皿に移す…鍋の底には肉汁だけが残る。その肉汁の中に、タマネギ、白ネギ、白菜を入れ、シラタキや豆腐、麩、椎茸、タケノコなどを入れる…シラタキや豆腐が煮立って、肉汁の味がしみ通ったときを見計らって、先に大皿に取り出しておいた肉を、煮えた野菜類の上に載せる。肉から濃い肉汁がたれる…その後、野菜や他の具材を追加して鍋の味が薄くなりだしても、大皿から肉を追加して野菜の上に載せると、濃い味が上からたれてしみ通り、鍋の味は常に一定になる。

なるほど、最初にたっぷり肉汁が出るのもいいですね
いつもだったら水を足すのですが、好みで多めに入れる白菜の水分だけで充分です
今回は初めてということもあり、幹郎さんに倣って砂糖をたくさん入れてみたところ
家族からは甘すぎるとの感想でした
この辺の味加減は熟練と、それぞれの家庭に合わせての調整が必要でしょうね
今回はまだ「最初にすべての肉を焼く」点は真似したものの
どうもせっかくの肉汁の旨みを活かしきれていないような感じです

白菜はもっと煮たほうがよかったかな?

しばらくこのやり方を試してゆきたいと思っていますが
正直なところ、いったん焼いた肉を皿に戻すのは…少々美しくない (^^ゝ
家庭や気の置けない仲間が集まっての席ではいいけど
ちょっと緊張気味のお座敷ではやらない方が無難かもしれません


ちなみに、このエピソードが単行本に収録されるとしても
おそらく発売は再来年になると思います
ワタクシはしっかりコピーをとりました

標準的な関西風・関東風すき焼きのレシピは
このサイトで紹介されています