日本鍛冶紀行

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というわけで、読みたい本がすぐ手元になかったものですから
図書館でこんな本を借りてきました
...つまり図書館にもなかったってワケだ

全国136軒の鍛冶屋を訪ね歩いた集大成、なのだそうです
もちろんこれが現存する鍛冶屋のすべてではありませんが
かつては集落には1軒あったという職業が、今こうなっています

もちろん「鉄工所」として企業化して大きくなったところもあるでしょうが
多くは消費や流通形態の変化からはずれ、後継者がいなくなって
今後20年のうちには、さらに激減すると思われています


鍛冶屋さんに限った話じゃないのですが
最近、道を歩いていて仕事場が覗き込める店って、減ってません?
ウチの近所にも竹細工の職人さんがいるのですが
家を改築したら、外から仕事場が見えなくなりました

建具屋さんは大きな機械を買ったら別の場所に作業場を建てちゃうし
近所の建築現場は、通行人に物が落ちて当たらないようにシートで覆われています

企業化され、工程が分業になると大きな工場が必要になるし
情報漏えいの防止や衛生管理上の問題から部外者は気軽に覗けません

学校帰りの子どもが、立ち止まったり窓から覗き込んだりして
職人さんの手仕事を、魔法を見るような目で見つめている
そんな情景が失われつつあるように感じます
子どもだって早く家に帰ってゲームしたいし、塾にも行かなくちゃ、だからね

職人の技術が失われることを憂える人がいますが
ワタクシはあまり心配していないんですよ
それは、正しい技術であれば数値化データ化できるはずだし
そうなればコンピューターやロボットで再現できると思うのですよ
今はまだ完璧に記録再生できないにしても、きっとできるようになる

しかしそれは一部の専門家のための技術になってしまいます
ワタクシが心配になってきたのは「在野の知識」とでも言えばいいのかな
一般の人が「見よう見まね」でやってみるための知識が失われてゆくことです

「あれはこうやって作るんだ」

街角でふだんから目にしている職人の仕事があればこそ
雑学と言ってもいいかもしれませんが、いろんな知識が身について
暮らしに豊かな工夫ができるようになると思うのです

『日本鍛冶紀行-鉄の匠を訪ね歩く』
かくまつとむ・文 大橋弘・写真/ワールドフォトプレス・刊