番匠家

 
札所巡りの日
「秩父に行ったら蕎麦を食べよう」と意気込んでいたのですが
適当な店を見つけられないまま電車に乗って市街地まで戻ってきました
かれこれ午後の3時です


慈眼寺から少林寺に向かって小さな店が並ぶ商店街を歩いていたら
「手打ちそば」と書かれた小さな看板を見つけました
いわゆる旗竿地とういうやつで、間口一間ほどの細い通路の奥に店があるようですが
覗き込んでみたらまるで民家...「どうしよう?」

ツレアイと顔を見合わせたのですが
もう時間も時間で、ここで何か食べなければ昼食は抜きになってしまうことを
優柔不断のワタクシと独身時代を含めて20年近く付き合っている彼女は承知しています
ワタクシもあまりこういうタイプの店で食べることを想定してはいなかったのですが
  地元の人が気軽に入るような店で食べたかった
これもまた旅先での面白い冒険だろうと入ってみることにしました


一日40食限定だってさ

まず頭に浮かんだのは
蕎麦好き、いや、蕎麦打ち好きが高じたオヤジが脱サラして、あるいは休日限定で
自宅の一室で蕎麦屋を営んでいるのではないだろうかということでした

と、家の前で決心を固めたワタクシ達の様子を見ていたかのように
ガラッと縁側の戸が開いて「いらっしゃい、今日はまだ残っていますから」
むむむ、いつもなら昼だけで商売を終えているのだろうか...やっぱり趣味の蕎麦屋?


上がったらどんどん奥へ行ってください
と言われたように玄関から入って奥へと入って行き
引き戸を開けると板の間に小さな卓が二つあり
それとは別にカウンター向かって腰掛けられるようになっていまして
なんか蕎麦屋というよりは赤提灯の雰囲気でもあります

メニューは2種類、「健康そばセット」と「金平そばセット」
「健康そばセット」というのは、「せいろそば」に「そば豆腐」「黒はんぺん」がつき
「金平そばセット」は「そば豆腐」が「キンピラ」に変わるだけ
蕎麦と金平の組み合わせは珍しいと思ったら
「え? 深谷じゃそうやって食べないの? この辺はそうだよ」

カウンターの向こうには小さな流しやコンロがあり
それに焼き鳥を焼くガスのロースターみたいなのも置いてあって
やっぱり蕎麦屋というよりは赤提灯だよな、と思えて仕方なかったのですが
案の定、別にちゃんとした厨房があるようで
オヤジさんはそちらに引っ込んでは「豆腐」「はんぺん」「蕎麦」を
メニュー写真のようにいっぺんにではなく一品ずつ出してくれました




よく喋るオヤジさんでねぇ
ま、夫婦二人っきりでカウンターに向かっているのに黙りこくられても空気が重いけど
あんまりべらべら話しかけられるのも...もうちょっと蕎麦を味わわせてくれぃ

で、その蕎麦の食感は、妙にモチモチっとした弾力があって
「蒟蒻系食感」と評したブログ記事を見つけたけど、なるほど、言いえて妙ですな
これがこの店の特徴なのか、それとも入店前に聞いた「まだ残ってます」のせいなのか
そのあたりが判別しがたいのでありました

  ちなみに、そのブログ記事によると
  この建物は築80年だかの元「待合」なのだそうです

とまぁ不思議な店で変わった蕎麦を食べたわけでして
決して「不味い」とは思いませんでしたが
今回は気軽な田舎蕎麦を食べたいと思っていたので
そういう意味ではワタクシが期待した方向とはズレがありました
夏の暑い日にサラッと食べると良かったろうなぁ


お上品に食べたので、量的には物足りず
結局そのあと道の駅で立ち食いの月見蕎麦を食べてしまった (^^ゞ
香りを楽しむには「もり」系だけど
こんな肌寒い日に、しかも空腹を満たすには、やっぱ「かけ」系ですな
 

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