ぶらんこ

 


前回紹介した「じゃあね」...もともとの谷川俊太郎さんの詩は
『空に小鳥がいなくなった日』という詩集に収められていますが
水内喜久雄という人が編纂した『いまぼくに』という詩集にも入っています

昨日、図書館で『いまぼくに』を借りてきたのですが
「死んだ男の残したものは」「朝のリレー」など、お馴染みの詩も入っていて
ぱらぱらとページをめくっていたら、「夫が妻へ」という一遍が目に留まりました

  おまえをみつめていると
  私は男らしさをとりもどす
  おまえの手はひびがきれ
  おまえのくちびるのわきには
  小さなしわがきざまれている

   ・・・

  おまえをみつめていると
  おまえを守らずにいられない
  あらゆる暴力から
  あらゆる不幸からおまえを守り
  こんなにも女らしいおまえを
  こんなにもゆたかなおまえを
  私は愛さずにはいられない

これって、小室等さんが歌った「守らずにいられない」ですよね

『私は月には行かないだろう(1971)』と『時間のパスポート(1996)』に収録されていて
小室さんが年をとった分だけ後者の方が歌に深みが感じられるのですが
そうかそうか、谷川さんの詩とは題名を変えていたのか...って
これは谷川ファンには周知の事実だったのでしょうか

もうひとつ「あれっ?」と思ったのが「生きる」と題された詩でした

  生きているということ
  いま生きているということ
  それはのどがかわくこと
  木もれ陽がまぶしいということ
  ふっと或るメロディを思い出すということ
  くしゃみをすること
  あなたと手をつなぐこと

これは小室さんの「いま 生きていること」なのですが
後半がかなり違っているんですね
というより、小室さんの歌の方は行を入れ替えているだけではなく
かなり付け足しているんですね
つまり、谷川さんの「詩」が「詞」になるときに
作り直した部分があったんだなぁと今にして知った次第です
で、今回改めて「いま 生きていること」の歌詞カードを見たのです
すると、アドリブのように繰り返している部分は別としても

  ぶらんこはぼくが作ったぶらんこ
  ぶらんこには娘がのっている

という言葉が載っていないんですよ...これもアドリブ?

実はこの歌は小室さんの歌の中でも大好きな歌のひとつで
特にこのブランコのくだりがとても印象的で
30年もの間、心に強く焼き付けられているのですが
それが歌詞として載っていないというのにビックリしました
 

ぼくが作るのを「手伝った」ぶらんこに娘がのっている