トラベラーズ


本番中は撮影・録音禁止なので開演前にパチり、です

行って来ました、パディ・キーナンコンサートin大泉

今回の初来日公演の様子については
すでにネット上のあちこちでいろんな人に語られているので
今さらワタクシが屋上屋を重ねるような
いや、ともすればせっかくの屋根を壊してしまうかもしれない
ド素人的な感想を書くまでも無いと思うのですが
ふだんBGM的にしかアイリッシュを聴かない人間としての感想というのも
それなりに意味があるのかなと居直って、思いつくまま書いてみます
  きっと、支離滅裂な、ワケの判らん文章になると思います

今、BGM的にと書いたけど
これまで何気なく聴いていたアイリッシュ音楽の中で
「滑らかにメロディを奏でるところはアコーディオンっぽいけど
 どうも音色がちょっと違う」
意識と無意識の境界線でそう思っていた音を出す楽器が
じつはこのアイリッシュパイプ(イーリアンパイプ)っだったのですね
やっと判った(笑)

しかし、このハンディタイプのガトリングガンみたいな外見を持つ楽器は
演奏するのがやたらと大変そうなのですね
まず右肘にくくりつけたフイゴで左脇のバッグに空気を送り
左肘のあたりでバッグを押さえて笛の部分を鳴らすのですが
その笛も、メロディ担当の「チャンター」と和音担当の「ドローン」があるのですね
でもって両手の指でめまぐるしくチャンターの穴を押さえたり開いたりする傍ら
時々右手指はチャンターを離れてドローンについたレギュレーターのボタンを押し
いろんな和音を切り替えているわけです
さらによく見ると、右手の指がメロディを弾いているあいだも
手のひらの手首に近い部分でレギュレーターを押さえているようなのです
これを超高速で、という技術だけではなく
聴き手を感動させる芸術でやっているのですね。聴いていてうっとりします

  アイリッシュパイプの構造などについては
  『Pipers Caffe』のブログ記事を参考にさせていただきました
  ありがとうございます

まぁ具体的に名前を知っているパイプ奏者が他にいるわけでも無いので
誰それと較べてどうのこうのとは言えないのですが
凄い人を目の当たりにしてるんだなという思いです

アイリッシュパイプだけではなく
ロウホイッスルを使ったスローな曲も良かったですね
風景が見える...行ったことは無いけど、風吹く広野を連想したのです

それにしても不思議ですね
ワタクシの場合、アメリカのフォークソングを聴いているうちに
アイリッシュに行き着いて
それはきっとアメリカに移民して来た人のルーツを辿ったことなのでしょうが
アイリッシュ音楽は日本人の心情に合っているような気がします
わざわざアメリカを経由しなくとも、日本から直行できたのでした


で、突然ですが断言します
パディ・キーナンはアイリッシュ界の高橋竹山です

テクニックだけでは語り尽くせない、彼の音楽の奥深さは
「トラベラーズスタイル」にあるのだろうということです
トラベラーズというのは、アイルランドにおける社会的マイノリティー集団で
ヨーロッパ全般で言われるジプシーと呼ばれる人たちに通じるものがあり
旅暮らしの人生であの町この町を流れて歩き
多くの人々の悲しみや喜びを見ながら生きてきた
その最後の世代なのかもしれないということでした

  実は、コンサート当日は「トラベラーズ」の意味がよく判らなかったのですが
  今日になって、前出の『Pipers Caffe』にある
  東京でのレポート記事を読み、ようやく納得した次第です
  ...もっと英語をよく勉強してればなぁ (^^ゞ

トレードマークの帽子のつばに隠れ、演奏中のパディの表情はよく判りませんが
彼が見てきた、そして彼の血に流れる
さまざまな風景や人生を、彼の音に乗せているのでしょう
そしてそれは、少なからず若い共演者を感化し
一体となって素晴らしい音楽空間を作り上げてくれたのでした


さて、大泉の会場は、その前2日間の東京のライブハウスとは違い
音楽ホールでのコンサートでした
正直言って、始まるまでは、かしこまって聴くよりも
タバコの煙がたなびくパブで、ウィスキーグラスを片手に聴くような
もっとフランクな態度でもいいと思ったんですよ、手拍子足拍子でね
でも、駄目でした。気おされてしまいました

こんな素敵な場所で音楽を聴いている自分に
そして、ここの足を運ばせるに至るまでのさまざまな出会いやつながりに
ふと思いをはせると、ここでもまた不思議な気分になります
旅先で知り合った人、趣味の仲間、地域の関係など
人にはそれぞれの場面において関係する人がいるのですが
ここ数年、それらの人同士がつながりを持ち始め
ひとつに集約しつつあるように思えるんですよ

だれか、トラベラーが紡いでくれているような気がするんです
 
 


パディ・キーナンって、誰なん?
明日はアイリッシュの日