希望の国

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先月、『のぼうの城』という映画を見に行ったとき
予告編で夏八木勲さんが素敵だったので
本日封切られたこの映画を見に行ってきました

舞台は東日本大震災から数年後の日本、長島県
再び襲った大地震で津波と原発事故が起こります
原発から半径20kmが避難区域に指定され
主人公の家の庭の真ん中に黄色いテープが張られ
これより向こう、お向かいさんは強制退避だけど
あんたはここに留まって構いません

園子温監督が取材で福島を訪ねて出会ったボーダーラインぎりぎりの家
庭の花壇の真ん中に線が引かれ
枯れていく花と世話をしてもしていい花に分かれてしまう
こんな理不尽というかシュールな情景から生まれた映画だそうです

東日本大震災から数年後に、まったく同じような事態が起こり
そしてところどころ「福島のときはこうだった」というセリフがあるものの
福島の経験をプラスに活かしたところが見受けられません
ということはつまり、これは福島の現実を映し出した映画といえるでしょう

今日の福島原発事故から数年後に起きる二度目の事故という設定に変えて、そこで福島で本当に起きた全てのこと-色々な場所で、色々な経験をした人々の声を、一つの家族の物語、一つの町の物語に出来るだけ、集約してゆく
『希望の国』園子温・著より)

監督は出来るだけ早く映画にすることに価値があると考えたそうですが
そう思わない人たちもいるようです
この映画は日本・イギリス・台湾の合作映画になっていますが
けっして各国のスターが出ているわけではありません
日本国内だけでは制作費が調達できなかったのです
そのことだけでも「原発」を題材にすることの重さを感じました


とまぁ、原発・放射能、あるいは津波被災ということを題材にしているわけですが
見ているとそれだけではなく、自分が家族と一緒に
この先どういうふうに生きてゆくかを考えさせられる映画でした
厄災は事故や自然災害だけではなく、病気や老齢ということもあるでしょう
子供たちが無事に独り立ちできるように育てることも親の務めでしょう
そういったことを含めて何やかや、いろんなことを考えてしまったのでした

  主人公のセリフを借りれば
    人は生きる時、何度も杭を打たれる
    杭は恐ろしい敵だ。逃れることが出来ないかもしれない
    それでも逃げ通せる杭もある
    逃げろ、逃げることは強さだ。強い人間だからこそ逃げるんだ



ところで、舞台となった長島県は架空の地名です(長崎・広島・福島)
映画は、物語の中心となった主人公の家を含めて大部分を深谷市内で撮影したそうで
いつもサスケと散歩する我が家の周辺もロケに使われています
ネギ畑の遠く遥かに見える山並みに安堵感を覚えるのはそのためでしょう
  本日、映画上映中は猛烈な砂嵐で
  ネギ畑どころか市街地の中でさえも霞んでいたほどでした

そんなゆかりの地で、しかも3.11の前日に封切られたということもあってか
助演の村上淳さんと清水優さんが舞台挨拶に駆けつけてトークをしてくれました
お二人の話によると、数日前に発売されたDVDの特典画像(メーキング)が
本編とはまた別の良さがあって、これも一つの作品として鑑賞して欲しいとか
機会があれば見たいものだと思いながら、砂嵐が収まりかけた中を帰ってきたのでした