雲を翔びこせ

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深谷駅前の渋沢栄一像

昨日行った飛鳥山公園に史料館のある渋沢栄一という人は
ワタクシが住む埼玉県深谷市血洗島の出身で
資本主義の父とも称された人ですから、つまり「郷土の偉人」なわけです
ワタクシは深谷で生まれ育ったわけではありませんが
やっぱり渋沢栄一のことはよく見聞きしますし
また、近年ではことさら彼を顕彰しようという機運が高まっているように思います

で、渋沢翁の話題に接するたびに以前見たテレビドラマを思い出してしまうのですね
それは渋沢栄一の半生を描いたスペシャルドラマで演じたのは西田敏行
従兄弟役が武田鉄矢で、そのほか大物俳優が大勢出ていた記憶があります

建築史研究者、藤森照信氏の著作で渋沢栄一と建築について興味深く楽しんだのは
おそらくドラマを見た後ですから
あのころは渋沢栄一について予備知識があまりなかったと思うのです
もちろん、予備知識がなくても楽しめるドラマだったのですが
今ふたたび見たらもっと楽しめるだろうな
...そんなことをずっと思っていたわけです。おそらく10年以上も

一か月ほど前になって、そのドラマについて調べてみました
どうも「また観たいな」と思い続けることを楽しんでいて
むしろちゃんと調べることを避けていたような気もするのですが
いざ調べたら簡単に詳細が分かりました
...「渋沢栄一」「西田敏行」のキーワードで検索したら答一発

東京放送(TBS)が東京商工会議所創立100周年を記念して
標記のタイトルで昭和53年(1978)に放映したものなんだそうですが
このサイトによると出演者が凄い...そして若い!
主演の西田敏行が31歳、妻を演じた池上季実子が19歳
脇を固める、今や大御所と呼ばれる役者さんたちも30代40代の若さです

  それにしてもこの『大河ドラマ+時代劇 登場人物配役事典』というサイトは
  大変な時代劇のデータベースです。感心しました

残念なことにDVDは出ていないのですがVHSのビデオが発売されており
どこか中古で手に入らないものかと調べていたら
なんのことはない、地元の図書館にありました
ただし、深谷図書館ではなく、旧川本町の図書館というのがご愛嬌です
  深谷図書館にもあったけど、みんなが借りてボロボロになり
  やむなく廃棄した...のかもしれません

さいわい我が家のビデオデッキがまだ動いたので、図書館から借りてきたのです


コマーシャルなしで一気に見ました。いやぁ、面白かった
最近はテレビをほとんど見なくなって
たまに映画を見ても往時の俳優さんが見分けられなくなってしまっているのですが
  『三丁目の夕日』の三浦友和、『県庁の星』の石坂浩二は
  エンドクレジットを見るまで出演していることが判らなかった (^^ゞ

このドラマでは、ワタクシが結構ドラマを見ていた頃の姿そのままに
俳優さんが元気に演技をしています...当時の作品ですから当たり前なんですけど

金田龍之介演じる西郷隆盛がなかなか個性的で
たぶん彼は徳川幕府が薩長に取って代わっただけの明治維新にはまだ不服で
もっと革命的な体制の変革が必要と考えていて
それが「戦(いくさ)が足りない」という言葉になったんでしょうね
渋沢の「俺たちの幕府を作るんだ」という思いと相通じるところがあるのでしょう
この二人が語り合うシーンは丁寧に作られていますが
見ていて余計なことを考えてしまいました
のちに西田敏行はNHKの大河ドラマ『翔ぶがごとく』で西郷隆盛を演じているのですが
このドラマの経験が役作りに影響したのかなぁ、なんてね

ちょっと不思議なのが中村敦夫が演じた阪田彌左衛門という実業家
実在の歴史的人物が次々と登場する中で、これは架空の人物なのですが
どう見てもモデルは岩崎弥太郎です
今月の『広報ふかや』の連載でもまさにドラマ通りのことが書かれています
どうしてここだけ架空の人物にしてしまったんでしょうね?
これはワタクシの想像ですが
ドラマのスポンサーに三菱系の企業があったのではないでしょうか
別に悪者として描かれているわけではないのですが
主人公に対立する役どころですから名前を変えたのではないかと...

大物俳優がガッチリと脇を固めたドラマですが
なぜかイラストレーターの横尾忠則氏も出ています(ほんの一瞬)
薩摩守ではなく、渋沢の恩人である平岡円四郎を暗殺した水戸藩士として
それから、太政大臣・三条実美を演じた人も変っていましたねぇ...小室等
当時フォーライフレコードの社長だった人は、ドラマで明治政府のトップを演じたのです
まぁメガネもセリフもなく、ヒゲも目立たなかったからクレジットが出ないと判らない(笑)
  余談ですが、昨日訪ねた飛鳥山公園は明治6年の太政官布達によって
  上野・芝・浅草・深川とともに日本最初の「公園」に指定されたのだそうです

もう一回観たいと思い続けていたドラマでしたが、意外に記憶に残っているシーンはなく
唯一強烈に覚えていたのが、攘夷の決起行動に失敗した際に
従兄弟役の武田鉄矢が「帰ろう、血洗島へ」と言うシーンでした
でもね、ワタクシの記憶では、このシーンは武田鉄矢が絶叫してるんですが
ビデオを見たら、静かにつぶやくように語りかけているんですね
35年間の記憶はいったいなんだったんだろう?

とまぁなかなか楽しめるビデオでした
公共図書館の所蔵品ですから
深谷市内および熊谷市、寄居町、児玉広域地区の在住・在学・在勤者でしたら
無料で借りてくることができます
それ以外の地域にお住まいで、興味を持った人は
有料にはなりますが『TBSオンデマンド』で視聴可能だそうです

(失礼ながら文中の敬称を略させていただきました)