27/03/03

 


1983年の夏、初めてビデオデッキを購入しました
SONYのSL-HF77。30万円…当時の月給およそ3ヶ月分です
当然いっぺんには払えないので2年のローンを組みましたが
そのとき併せて買ったビデオソフトが『宵々山コンサート81』です
ビデオデッキを買った店の棚に並んでいて「おや?」と思ったのでした

ナターシャーセブンを軸に毎年こんな催しがあることは知っていたのですが
当時はまだレコードさえ持っていませんでした
だから、このビデオがワタクシにとって宵々山の初体験

この年の目玉ゲストは、カーター・ファミリー
現代フォークの原点であるオリジナル・カーター・ファミリーの子供たちで
オートハープを奏でながらきれいな声で歌う小母さんもさることながら
太った小父さんが汗びっしょりになってギターを弾いている姿が印象的でした


最近ね、高田渡さんの歌を聴いていると、この小父さんのことを思い出すんですよ

高田渡さんといえば、演歌師や現代詩人の作品をメロディーに乗せたり
飄々とした言動が有名ですが
実は素晴らしいフォークギターの演奏家でもあるんですよね
いわゆる、カーター・ファミリー・ピッキング奏法など
フィンガー・ピッキングの名奏者なのです

  それに、ここではギターだけですが
  高田さんってオートハープやマンドリンなど
  持ち替えもできるんですよね

高田さんのごっつい指から正確で小気味よいギターの音色が生まれるのを聴くと
あのときのカーター・ファミリーの小父さんを思い出してしまうのです


昨夜、寝床で例のCDラジカセとヘッドホンを使って
ということはつまりボリュームを上げて
今年発売されたライブCDを聴いていました
『27/03/03  高田渡/高田漣』
もちろん、高田さんは昨年お亡くなりになっていますから
録音されたのは2003年…CDのタイトルがそのまま録音日ですね

NHKラジオの公開録音なのですが
おそらく他のミュージシャンを目当てに来ていた多くの観客が
高田さんの魅力にぐいぐい引き込まれてゆくのが判ります
歌も演奏もおしゃべりも…そして高田渡ならではのハプニングも

  本番中に寝てしまうというアレではありません

この録音の時期は、映画『タカダワタル的』の制作期間に重なります
実際、NHKのスタジオに来る前日におこなった京都・拾得でのライブは
映画やサントラ盤で雰囲気を知ることができます
そういえば映画の中で共演の中川イサトさんが
「今日はギターが力強いよ。こんなの久しぶりに聴いた」と言ってましたが
このNHKのライブも素晴らしいものです
もちろん演奏だけではなく、さっきも書いたように総てにおいて、ね
もうひとつの『タカダワタル的』と言ってもいいな

  余談ですが、イサト師匠の言葉に高田渡さんは
  「これも点滴のおかげです」とやりかえし
  これまた横で聞いていた共演の省悟さんがのけぞって笑う
  というのが映画の予告編のワンシーンでありましたね

正直、ワタクシは高田渡さんをずっと聴いていたわけではありません
20年位前にURCやベルウッド時代のものを聴き直していたくらいで
その後の新曲に詳しいわけでもなく
『タカダワタル的』が話題になりかけた頃に
そうそう、こんな人がいたねぇと再認識した程度です。でも
これからは認識を改めなければなりません…こんな凄い人がいたんだと



…しっかし、ギター演奏に意識を集中して聴いていると
いや、もちろん歌も聴いているのですが、そうするとなおさら
なぎら健壱さんが歌っているかのように聞こえてくるんですね

高田さんが(ステージで)酔いつぶれたり、入院したときなどに
彼が代役で歌ったという話を聴いていますが
納得できるものがありますね


映画『タカダワタル的』を見に行ったときの話は⇒こちら