佐野、幻のラーメン

小室さん・八木さんを聴きに佐野に行った日のことですが
コンサートが終わるのは9時過ぎだろうから
その前に軽く何か腹に入れておこうと思ったわけですね

佐野といえばラーメンで有名です

ところがワタクシ、どうも佐野ラーメンが好みに合わないのです
10数年前は買い物に行ったり那須の帰りなどに食べてたんですけどね
しばらく間があいて、数年前に地元の「青竹手打ち」がウリの店に行ったら
「…?」
一ヶ月ほど前にも「佐野ラーメン」の看板を掲げた店に入ったのですが
最近のワタクシの好みとは程遠いのです
どうも「お湯の中でふやけた麺が泳いでいる」だけに感じてしまうのですね

そんな気持ちの中、『ラーメンデータベース』を見ていたら
『幻のラーメン』という、なんとも凄い店名が目に入りました
独自のウェブサイトもあるようで、そこには
  ブームを作るための偽者佐野ラーメンではなく
  むかし、中国人の品(ペン)さんが作った本物の佐野ラーメンを復活させた
というようなことが書かれています

手振れでゴメン。夕方で、コンパクトカメラで、ノーフラッシュなのだ…それに歳で手が震える?

ハッキリ言って、かなり怪しい雰囲気のお店です
右も左もケトバして、唯我独尊ならぬ唯我独善的なムードも漂っています
先のデータベースやラーメン好きの人たちのブログなどを見ても
ラーメン自体の評価は高いのですが、店舗や店主の話題となると言葉を濁しているのです
怖いもの見たさ、というわけではありませんが行ってみたくなってきました
場所は幸か不幸(?)か『風の庵』のすぐ近く、徒歩圏内と言ってもいいところでした

金は取っても命は取らない」と読み替えてしまった(^^ゝ

駐車場にクルマを停め、店内に入って行きます
あちこちのサイトで見聞きした「汚い」という感じはありません
町角の昔ながらの小さな食堂や、トラック野郎が集まってくる店のなかには
もっと雑然としたところがありますよ
テーブルだってしっかりした木のテーブルを使って
ワタクシには「こざっぱりとした」印象を受けました

  ただし、カウンター脇の、店の4分の1を占める空間は別です
  そこだけは、まるで資源回収の寄せ場のようになっていて
  およそ客が足を踏み込める状態ではありません
  その異様な空間の中央にPCが置かれ、店主がキーボードに向かっていました

怪しいメニュー。どこまでマジだか

メニューを見ると、右端に後から付け足したように
「並みのよそさまラーメン 500円」と書かれています
何が言いたいかの予想はついたのですが、ワザととぼけて訊いてみました

「ちゃんと晩メシ食べるまえに何か腹に入れておきたいんだけど
 この『幻のラーメン』ってのは麺や具が多めって書いてあるけど
 500円のだと量が少ないわけ?」
「それはね、よそさまで出してるラーメンと同じ味に作ってるの
 ウチのは全然違うよ。(この店は)初めて?」

文章だと、怖そうなウンチクおやじが怒ったような口ぶりで言ったようにも思えるけど
実際には間延びした声でとぼけた調子で話しかけてくるのですよ
強いて言えば「可愛い」…初老のオヤジが可愛い子ぶるのもある意味不気味ですが
ウェブサイトから感じられた戦闘的な感じが全然ないヒトなのです

ともあれオヤジの自信作、『幻のラーメン』を注文して出来上がりを待ちます
どこかでテレビかラジオが点いているのか、店内にはニュースの声が流れ
どこにでもある、ごく普通の町の食堂にいる気分です
誰かが「『禁じられた遊び』がトラウマになる…」と書いていた文章を見たのですが
別段その曲がエンドレスのBGMで流れているわけではありませんでした
  ただし、壁には『禁じられた遊び』のレコードが2枚貼ってありました
  かつて店主はギタリストだったそうです…つまり彼のレコード

いろいろビックリすることがあるかと思って来たのですが、なんだか拍子抜けだなぁ

幅1cm以上のきしめんみたいなのもあったが、それは手打ちのご愛嬌か

やがて運ばれてきたラーメンは…お、なかなか綺麗に盛ってあるじゃないですか
普通に刻んだネギに加えて白髪ネギもあしらうなんか、なかなかのセンスですよ
ちょっと期待しながら口に運んだ…のですが、やっぱり佐野ラーメンでした
冒頭にも書いたように、最近のワタクシの好みではないですね

ただし、たしかに「お湯に沈んだふやけ麺」ではありませんでした
ちゃんと一見薄いようだけど深みのあるスープに
柔らかくはありますが、それなりにむらなくモチモチ感のある麺です
これがヘンな佐野ラーメンだと柔らかいくせに麺がブチブチ切れたり
妙にプヨプヨだったりして、舌や唇への触感が好きになれないのです
よそで食べた佐野ラーメンが「こんな風にできちゃいました」という結果論なら
ここのは「こういうラーメンを作りたい」という目的意識がハッキリしているようです
だから自分の好みではないけど「これはこれで認める。こういうラーメンもあるのだ」
別にワタクシが威張ることではないけど、そんな感じでした

夕方の、まだ腹ごしらえをするには早い時間だったのか
店内の客は最後までワタクシ独りで、店主は調理をしているとき以外はPCに向かい
ニュースの声だけが流れる静かな店内でラーメンを食べ終え
「ごちそうさま」とポケットから600円を出して店を出てきたのでした

まぁ、別に各地の有名店を選んで回っているわけではなく
まして評論しようなんて気もさらさら無く
せめて自分が入った店では気に入ったものを食べられればいいなと思っているだけで
そういう意味では、佐野でラーメン食べるんだったら次もここかな
…ここで食べたいがために佐野に来ることはないでしょうけど


しかし、こういう怪体な店というのもたまには面白いですね
今度信州に行って時間があったら、東御の『かるかや』も行ってみたいと思ってます
やっぱりラーメン屋さんなんですけどね
取材拒否はもちろん、店の入り口に「小学生以下はお断り」「騒がしい人お断り」など
様々な注意書きの貼紙があるんだそうです
で、注文してから店内に流れるクラシック音楽を聴きながら最低でも30分は待つとか...

でも、30分なんて近くの『ゆいや』で開店ダッシュに出遅れると
店の外でそれくらい待つかもしれないのですから
なぁんて考えております