昭和遺産

 


昔の写真ではありません
つい昨日、『SPACE 結』へOWLのライブを聴きに行く途中
我が町の中心部、今はちょっと寂れてしまった市街地の脇道で撮ったものです

実は先月だったか、『SPACE 結』から帰ってくるときに見つけたんですよ
  時々通る道なのに、どうして今まで気づかなかったんだろう
思わず心の中で、「うわぁ、こんなのがまだ残ってたんだ」とビックリしたのですが
隣に乗っていたツレアイが「今の何だったんだろう?」と呟いたのにも驚きました
「えっ? 知らないの?」「うん、何?」「ゴミ箱だよ、ゴミ箱」

ウチの夫婦はやや年齢が離れているのですが
時々こういった形で世代の違いが露呈するのです


昭和40年代の初め、ワタクシは福岡市内に住んでおりました
30年代最後の年に東京オリンピックが開催されたわけですが
その頃にこのゴミ箱を使っていた記憶があります
我が家だけではなく、各家庭の玄関先にはこれが置いてあったものです

家庭から出るゴミをここに入れておくと
市の収集車が持って行くというシステムだったはずですが
今考えるとちょっと疑問が湧いてきます
とゆーことは共同の集積場というものが無く、一軒一軒停まって回収したわけ?
たいていの家庭は公道部分にはみ出して置いたと思うのだけど、許されたの?
あの頃はポリ袋なんかそれほど出回っていなかったから
よく水を切って新聞紙で包んだり紙袋に入れてたんでしょうか?

どうもそういう細かな実施状況になると
「ナニブン子供ダッタノデ、詳シクハ存知アゲヌ」
ということになってしまうのです
これでは物件そのものを知らなかったツレアイとあまり違いがありませんね


『昭和遺産な人びと』という本があります
消えゆく昭和物件をテーマにして、それに関わった人を訪ねる話ですが
物件そのものはオンタイムで知っていても、実情はこの本で初めて知った
そんな話がいくつも登場します
  ゴミ箱の話も出ていて
  東京の場合、オリンピックに伴う「町の美観上」の問題で
  開催前にはほぼ一掃されていたそうですが
  福岡ではもう少し寿命が長かったと思います

新聞記者が取材現場から原稿や写真フィルムを伝書鳩で送ったという話は
知ってはいたけど、何羽も持って行くというのまでは知りませんでした
ですから「懐かしい」と同時に「目新しい」感じのする本でした

って、実はね...

おとといの土曜日に東京に行った最初の目的ってのが
毎度おなじみの『小室等の聞きたい聴かせたい』でありまして
今回のゲストがこの本の著者である泉麻人さんだったのですね
これまで泉さんのお顔は新聞や雑誌の紹介写真で見て知っていたのですが
お書きになったものは読んだことがなかったのです
テレビ番組のことを書いているという先入観があって
ワタクシが興味を持つジャンルではないと勝手に思い込んでいました (^^ゞ
ところが、たまたまタイトルに惹かれてこの本を読んでみたら
この路上観察的な性向が自分に似ているぞと思ったのですね
とことん追究するというのではなく物件との出会いを素直に楽しんでいらっしゃる
  ワタクシの場合は探究心が足りずに、ただウケているだけかもしれません
  コレクションの管理が悪いので、自分はマニアではないとおっしゃってましたが
  これにもうなづけました(笑)

それやこれやでトークショーは非常に楽しく、興味深く聞かせていただきました

そうそう、小室さんは家屋と一体化しているような立派なゴミ箱を見つけたそうです
「だからこそ撤去できず残ったんじゃないかなぁ?
 それとね、家の中から直接ゴミが入れられように後ろにも穴が開いて
 屋内に繋がっていた形跡があるんですよ...今はもう埋めてあったけど」
へえ、小室さんもけっこう観察してますね

トークショーが終わって帰りのエレベーターでお二人と一緒になったので
小室さんにワタクシが見つけたゴミ箱のことを話すと
脇から泉さんが「都の中防庁舎に古いゴミ箱が展示されていますよ」
と教えてくださいました...やっぱ同類だわ(笑)

『昭和遺産な人びと』
泉麻人:著/新潮社:刊