無情ベル

以前住んでいたアパートは 
道路を隔てて公園に面していました 

  クルマが12台置ける駐車場があり 
  来客を迎えるのに便利だったなぁ (^^ゞ 

当時としてはよく整備された公園で 
トイレには身障者用の個室も備えられていたのですが... 

ある日の夕方、家で過ごしていると
外でベルの音が響いています
最初は子供でも遊んでいるのだろうぐらいに思っていたのですが
あんまり長いので音がよく聞こえるキッチンの方へ行ってみました
すると、キッチンの窓の向こうが何やら赤く点滅しているではありませんか
覗かれないような波ガラスですので大きくボンヤリと光って詳しくは判らないけど
音と連動して光っているようです

ドアを開けて見たら、その光が何であるかが判りました
公園のトイレの非常ベルです
つまり身障者用の個室の中にある「助けを呼ぶ」ためのアレですね

正直に告白しますと、駆けつけるまで少し躊躇しました
だって鳴り始めてからしばらく時間が経っているんですよ
かれこれ30分以上は経っているんじゃないでしょうか
それでもまだ解決できない状況とは、と考えつくのは厭な例ばかりです
誰か先に様子を見に行ってくれませんか…ねぇ、誰もいないの?
しかしまぁ誰かが行かなければならないだろうからと
意を決して公園に行ってみたのです

トイレの建物の前まで行くと、間違いありません
さっきからの音と光の主はこれでした
ドアのノブに手をかけます…中からロックはされていないようです
ゴクリと息を呑み、思い切ってスライドドアを開けて覗き込むと
…無人でした

まぁ大方そんなことだろうとは思ったんですけどね
きっと子供の悪戯か何かでしょう
でも、もし誰かが倒れていたらと思うと躊躇しますよ
スイッチを見つけて鳴動を止め
静けさが戻った公園を後にしながら思いましたねぇ

非常ベルを押したら誰かがすぐに駆けつけてくれるなんて大間違いだぞって


数日前の日曜日に、たまたまアパートと公園の前の道を通り
そういえばこんな出来事があったなぁと思い出したのですが
雀屋さんの記事を見たら、ちょっと紹介してみたくなりました