機転

踏切の遮断機を降ろし忘れ、特急電車が進入…名鉄

 名古屋鉄道は22日、名古屋市熱田区の神宮前駅に隣接する手動式踏切で、係員が遮断機を降ろし忘れて半開きの状態になったまま、特急電車が踏切内に進入して非常停止したと、発表した。

 通行人はおらず、特急の乗客約200人にもけがはなかった。名鉄運転保安部は「一つ間違えたら重大な事故につながった」として、計8人の踏切係員の再教育を行うとしている。

 名鉄によると、20日午後10時ごろ、同駅を出発した中部国際空港発名鉄名古屋行き特急電車(6両編成)の運転士が、駅に隣接する踏切の遮断機が完全に降りていないのに気づいて非常ブレーキをかけ、同特急は踏切を約10メートル過ぎた位置で非常停止した。

2月22日17時39分配信 読売新聞

このニュースを見て
「そういえば、アレもやっぱり名鉄の踏切だったよなぁ」
と思い出したことがありました

アレとは、東名夜行バス『ドリーム号』で名古屋に行き
友人にピックアップしてもらって名古屋名物のモーニングサービスを食べ
八坂神社の裏手で野宿をするために京都へ向かう途中の出来事でした


 場所は愛知県木曽川町、名鉄黒田駅の脇の踏切。そこで我々は渋滞に巻き込まれてしまったのだった。こんな田舎町で渋滞とは珍しいらしく、当時この町に住んでいた友人は
「年に何度もないぜ、ここが混むなんて」
 やがて踏切に近づくにつれて原因が判った。故障でもしたのか遮断機が降りっぱなし、いわゆる「開かずの踏切」になっていたのだった…え? どうして開かずの踏み切りなのに近づけたかって? それはつまり踏切の脇に空き地があって、見切りをつけたドライバー諸氏がそこを利用してUターンしていたわけだ。
 黒田駅から駅員が事態に気づいて駆けつけて来た。遮断機を素手で弄り回していたが、その程度のことで直るはずがない。これは遮断機そのものの故障ではなく、おそらくは、線路内に設置されたセンサーの故障ではないだろうか? 我々の車内からの観察はそう見ていた。

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「問題は、あの駅員にどの程度のことができるか、だね」
 確かにこの駅員にできる程度の処置と言うのは大雑把で、乱暴で、だからこそと言うべきかも知れないが、画期的で素晴らしいものだった。
 彼は相変わらず遮断機のバー、と言えば聞こえはいいけど要するに竹竿の根元をなにやらゴソゴソやっていたが、次の瞬間ヨイショとばかりに竹竿を引き抜いてしまったのだ。続いてもう一本。
 それを見た向こう側にいたクルマがさっそく動き出して踏切を渡り、こちら側にやってきた。駅員はさらにもう一本の竹竿を抜き、通り抜けられる部分が広くなった…ダンプが続いて渡ろうとしたとき、それを静止した。本物の電車がやってきたのだ。

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「いやぁ、やってくれますねぁ」
「あのオジさん、一人で全責任を負う覚悟だろうか」
「これでもし事故があったら大騒ぎだぜ」
「だから立派な覚悟なんだよ」
「それにしても、竹竿を外すのに、よくスパナを持ち合わせていたなぁ」

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 前のクルマが行き、我々も踏切を渡りながら4本目の竹竿を外そうとしている駅員を見ると、取り付けボルトを緩めようとゴンゴン叩いている彼の掌にあったのは、スパナではなく路盤の砕石に違いなかった。


あの勇敢な駅員さんは、まだいらっしゃるのでしょうか
もう退職なさっているかもしれませんね
なにせ1985年7月のことですから