あの日の続きの続き
で、お昼を食べに行ったレストランの話です
なにせ34年6ヵ月振りに会う人です
その間電話で話したこともない
髪を切り、髭を生やし、そして何より...太った
たまに古い写真を見て自分でも別人だと思うくらいだから
おそらく彼女はワタクシだと判らないだろうなぁ
...そう、いつかの回帰月食の晩、浜中仲間が集まった時みたいに
そういえば、あの時
仲間の一人が居酒屋からここに電話をして
旦那さんの方とは少し話したことがあったんですよ
でも、彼は4年前に亡くなっていました
どういう風に切り出したものでしょう
最初から実はワタクシと言うべきか
それとも普通に注文して食べ終わってから名乗ろうか
いっそ黙って出てこようか
なぁんていろいろ考えたりしたんですけどね
ドアを開けて店内に入ると、あ、いたいた
昔の雰囲気がそのまま残っていますよ
まぁこちらは判ってて訪ねたんですからそう思うんですけど
あちらはそんなこと知りませんからね
ところが、彼女はワタクシの顔をじっと見て
「...まつおクン?」
「よっく判ったねぇ」
まぁこちらも話ができるようにと考えて
他のお客さんが途絶えるであろう午後2時に訪ねたのですが
彼女にしてみれば「こんな時間にレンタカーで来る人って?」だったそうです
それでちょっと念入りに見ちゃったってわけか
外に停めたクルマのナンバーは「釧路」ではなく「札幌」で
もちろんひらがなは「れ」
地元の人間でないことは一目で判ります
でも、国道沿いに飲食店やコンビニが
平気で10km、20kmと無いようなところだから
昼メシを食べそこなった観光客が...ってこともあるでしょうに
きっとワタクシが何か言いたそうな
タダナラヌ気配を醸し出していたのでしょう
亡くなったご主人の写真に、34年のご無沙汰を詫び
シェフを引き継いだ息子さんの作ったポークソテーに舌鼓を打ち
肉が...ぶ、分厚い!
珈琲をいただきながら、いろいろとおしゃべりをして過ごしてきました
前にもこんなことがあったけど、昔の仲間が再会して
あの時はあぁだった、こぉだったなどと
過去のエピソードを再確認しあうのではなく
お互いの近況報告や世間話をしている感じが
ことさらに改まることなく、あの日がそのまま続いているみたいで
穏やかないい気分です
「夕方戻るとき、シカの飛び出しに気をつけてね」
「それ、レンタカー借りる時にも念を押された」
「最近多いのよ。おとーさんも前にぶつかったことがあってね」
「今年は湿原のワタスゲがとっても奇麗だったのよ」
「そう、見てみたいな」
北海道には来ようとしなかったのに
いつのまにか再訪したいという気持ちになっています
今度は、釧路か中標津に直接飛行機で来て...
息子さんが作る、別のメニューも食べてみたいしな
あと、ね
子どもを持つ女性の、配偶者の呼び方として
それは日本では普通に使われるもので
だから彼女が使ってもごく自然に、違和感なく聞こえ...
るんだけど、あとになって思い出すと
やっぱり34年の時が流れたなぁと思わざるを得ないのが
「おとーさん」と呼んでいたこと
この前会った時までは「ヒエーザン」だったのに、ね