戦争を知らない子供たち'83

ジャケットには坂庭賢享さんと進藤さとひこさんのサインがあり、レコード本体には「非売品」と印刷されています

さとうきび畑』のつづきです

小室さんがこの歌を歌う背景を話しているとき頭の中に浮かんだのは
坂庭賢享(省悟)さんが歌ったこの歌でした

 私たちは被害者の子供で
 加害者の子供なんだね
 私たちも殺されたけど
 私たちも殺したのですね

題名にもあるとおり、といっても皆忘れてしまっているのですが
1983年に起きた教科書問題をきっかけに きたやまおさむ さんが作った詞です
最初は南京占領後に行われた生々しい行為の単語が含まれていたそうですが
二転三転してわりあいおとなしい歌詞になっています

同じ北山修さん作詞の『戦争を知らない子供たち』は
ジローズが歌って大ヒットしましたが
こちらはヒットどころかレコードのプレスさえできませんでした
大手メーカーで録音まで済ませながら、以後の工程は打ち切られているのです
その後、自主制作という形でプレスされ
ワタクシの手元にあるのは友人がコンサートのお土産に買ってきてくれたものです

いくぶん婉曲になったとはいえ
「満州への侵略」「朝鮮独立のための集会やデモ」などという言葉が並ぶ歌は
放送できるはずがありません
ところが、ワタクシ
一度だけテレビで聞いたことがあるのです

もちろん歌謡番組で坂庭さんやフォークスが歌っていたのではありません
それは8月15日の夜のニュースでした
アナウンサーが各地で終戦記念日にちなんだ催しが行われたと報じ
靖国神社やら慰霊祭やらの映像を少しずつ流した中で
どこかの平和集会の様子が流れ
そこで、この歌が高らかに歌われていたのでした

さすが天下のNHK

民間放送ではスポンサーの意向が怖くてとても流せません


この歌の題名は、レコードジャケットでは「子供たち」ですが
フォークスのソングブックでは「子どもたち」となっています

この歌は最初
きたやまおさむさんが詞(元の過激な)を作り
何人かの人に曲の委託をしたそうです
そして採用になったのが坂庭さんのもの
…作ったのは彼だけだったそうです

2002年だったかな
『イムジン河』のレコード発売が34年を経て解禁になり
大阪で記念のコンサートがあったとき
きたやまおさむさんはゲスト出演者たちに向かって事前に
「新しい歌詞をつけて欲しい」と呼びかけたそうです
…用意していったのは小室等さんだけだったという話を聞いたことがあります