目撃者

オリジナル発売日1981年9月5日

小室等さんがかつてニューヨークで録音して制作したアルバム『目撃者』が
来年1月にCDとなって発売されるそうです(情報元はこちら

このアルバムには『もう一度』という歌が
『Once More』という英訳された歌詞で併せて収録されており
おそらくその録音の際のエピソードだと思うのですが
『人生を肯定するもの、それが音楽』という本に、こんな話が紹介されています

…日本語で歌っていた同じ歌を英語にしたものを演奏したわけです。そうしたら、ガラスの向こうで操作していたエンジニアがふっと身を乗り出した。それまで彼らは、きちっと仕事をしてくれていたし、ぼくらとしては納得のいくかたちで進行していたのですが、彼らは日本語がわかりませんから、ぼくらが途中打ち合わせなどで時間を費やしているときなどは、われ関せずという感じでペーパーバックを読んだりしてたんです。ところがいっぺんに態度が変わった。
 「お前はそういう歌を歌おうとしているのか? だったら、マイクが違う!」
 それから、あっけにとられるくらいの勢いでした。「おまえの音楽をとるにはこのマイクじゃなくて、これこれのメーカーのこれこれという番号のマイクロフォンだ」と言い、「だけど、残念ながらこのスタジオにはいまそのマイクロフォンがない」。そう言うやいなや、今度はアシスタントがすぐ、「いや、そのマイクだったら、ツー・ブロック先のどこどこのスタジオにあったはずだ」。言うが早いか、もう脱兎のごとく、飛び出してゆくんです。

弦楽器奏者、田代耕一郎さんのブログを読んでいても
彼がマイクにこだわっている様子がうかがえるのですが
オーディオ機器・媒体を通して音楽を届けるという前提の元では
なるほど、マイクも個性を持った一要素なのですね

ということを思い出したのは9月の小諸でのライブで、でした
あの日は小室さんではなく、ゆいちゃんが『もう一度』を歌ったのですが
実は、その前のリハーサルのときに
ある曲がどうしてもうまくゆかなかったのです
小室さんもゆいちゃんもマイクから離れて歌うスタイルなのですが
そのせいもあってか、身体を動かした際に音のバランスが崩れる瞬間があったのです
ゆいちゃんが大きく身体を揺らしたときに音を拾いきれなくなるという感じです
客席にいるとそれほど感じられなかったのですが
隣で演奏している小室さんには顕著に思えたようです
ステージ上では音の聞こえ方が違いますからね。自分の声が聞こえないことだってある

ギターや二人のボーカル用のマイクの出力バランスをいろいろ調整してみた挙句
上田マネージャーが「二人のマイクを取り替えてみよう」と提案しました
二人の前に用意されているマイクは型番が違っていたのです

結果は鮮やかでした
鈍感なワタクシの耳でもハッキリ判るほど良くなったのです

そんなリハーサルの様子を目撃しちゃったから
本番でゆいちゃんが『もう一度』を歌ったときに
先ほどの本に書かれていたエピソードを思い出してしまったのでした


ワタクシ『目撃者』のLPレコードを持っています
ということは、自分用にCD化してすでにPCやカーステレオでも聴いているので
いまさら市販CDが発売されたからといってあわてることはないのですが
…でも、買っちゃうだろうなぁ。『東京』や『デッドヒート』みたいに

まだ市販CD化されていない小室作品…『ザ・ベスト』はまずCD化されないだろうと思う